日本化学療法学会雑誌
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54 巻, 4 号
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  • 杉山 篤
    2006 年 54 巻 4 号 p. 303-307
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    まれにしか起こらない薬物誌発性QT延長症候群を, 従来の非臨床試験や臨床試験の結果から正確に予知することは困難であった。その結果, 催不整脈作用のリスクのある薬物が臨床の現場で感受性を有する患者に処方され, 不整脈死という最悪の事態が世界中で多発した。このような薬物誘発性QT延長症候群の発生に伴う心事故を回避するため, ICHではS7BおよびE14ガイドラインを2005年5月にステップ4として調印し。非臨床試験および臨床試験の役割を明確に記載した。薬物によるQT間隔の延長を高い再現性および信頼性をもって予測できる試験が可能になり, 日本国内では, 非臨床試験と厳密なプロトコールによる臨床第1相試験の両者が陰性の場合は綿密な (thorough) QT/QTc試験 (ThQT) の代用になりうる, という解釈が生まれつつある。しかし。非臨床試験や臨床第1相試験により催不整脈リスクがいつも否定できるわけではない。また, 米国で販売を展開する場合にはこれらの試験結果にかかわらず, 米国食品医薬品局 (Food and Drug Administration; FDA) はすべての新薬に対してThQTを求めている。高品質のThQT試験を迅速にしかも適正価格で実施できる施設を充実させることが次の課題なのかもしれない。一方, 信頼性の高い催不整脈動物モデルを用いた評価を薬物開発の初期段階に実施することが開発期間の短縮のために有効と思われる。
  • 小林 寅哲, 若杉 昌宏, 池田 文昭, 長谷川 美幸, 鈴木 真言, 堀田 久範, 左海 清
    2006 年 54 巻 4 号 p. 308-314
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2003年2月から2004年11月の約2年間に全国の医療機関において各種感染症が疑われた患者より分離したCandida属6種, 410株およびAspergillus属4種, 280株, 合計690株のmicafungin (MCFG) およびその他抗真菌薬7薬剤に対する感受性を測定し, in vitro抗真菌活性を評価した。Candida属に対するMIC測定はNCCLSM27-A, Aspergillus属に対してはNCCLSM38-Pに凖拠した微量液体希釈法で実施した。抗真菌薬はMCFG, amphotericin B (AMPH-B), fluconazole (FLCZ), itraconazole (ITCZ), miconazole (MCZ), 5-fluorocytosine (5-FC), caspofungin (CAS) およびvoriconazoie (VRCZ) を用いた。FLCZ耐性を含むCandida albicans 130株およびCandida tropicalis, Candida glabrata各50株に対するMCFGのMICは0.03μg/mL以下で測定薬剤中最も低い億であった。Candida parapsilosisおよびCandida guilliermondii各50株に対してはMCFGのMICが2~8μg/mLとC. albicans, C. tropicalis, C. glabrataと比較してやや高い株が認められ。これらの株に対するVRCZのMICは0.25μg/mL以下であり, VRCZは測定薬剤中最も低いMICを示した。
    Aspergillus fumigatus 100株に対するMCFGのMIC滴は0.015μg/mLであり, ITCZおよびVRCZのMIC90の1/16, CASのMIC90の1/32であった。その他のAspergillus属180株に対しても同様な傾向で, MCFGは測定薬剤中最も低いMICを示した。
    以上の結果から, MCFGは近年分離されたCandida属およびAspergillus属に対して現在本邦で使用可能な抗真菌薬および欧米で使用されているCASと比較して最も優れたin vitro抗真菌活性を示すことが明らかになった。
  • 佐藤 淳子, 炭山 嘉伸, 長尾 二郎, 草地 信也, 有馬 陽一, 吉田 祐一, 中村 陽一, 田中 英則, 渡辺 良平
    2006 年 54 巻 4 号 p. 315-320
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    本邦において, 長年にわたり実施されてきた注射用抗菌薬投与時の皮内反応が, 平成/6年9月に原則中止とされたことから, その浸透状況について外科系診療科を対象にアンケート調査を行った。54.0% (148/274診療科) の医療機関において, 皮内反応が中止されていた。中止に踏み切った医療機関における最大の問題は, 抗菌薬投与開始後の観察に要する人員の確保であり, 当学会にて公表されている「従来の抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」に記載されているような観察を実施すべく苦慮されている様子が伺えた。一方, 現在も抗菌薬を投与する全症例に対し皮内反応を実施していると答えた医療機関は18.2% (50/274例) あり, その理由のなかには, 投与開始後の十分な観察が実施困難なためというものもあった。今回の皮内反応の原則中止については, 添付文書における使用上の注意の変更としてのみ情報伝達された医療機関もあり, 中止となった理由, すなわち, 「皮内反応は, アナフィラキシー発現の予知としての有用性に乏しい」という根拠までは浸透していない可能性が示唆された。また, 皮内反応は継続すべきという意見も挙がっていることから, 皮内反応中止後におけるアナフィラキシー反応等の発現状況についても調査を行い, 適切に評価をすることが重要と考えられた。
  • 内納 和浩, 山口 広貴, 安藤 友三, 横山 博夫
    2006 年 54 巻 4 号 p. 321-329
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    38℃以上の咽頭炎. 扁桃炎, 急性気管支炎を対象としたlevofloxacin (LVFX) の特別調査症例8,856例のうち, 感染症以外の合併症・基礎疾患を有さない7,597例について昨ステロイド性消炎鎮痛薬 (nonsteroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs) 併用時の安全性を検討した。
    NSAIDsの併用率は64.4% (4,890/7,597) で, 「併用注意」と記載されているフェニル酢酸系・プロピオン酸系NSAIDsと併用率は37.2% (2,828/7,597) であった。
    NSAIDs併用有無別の中枢神経系副作用発現率は, NSAIDs非併用群で0.04% (1/2,707), フェニル酢酸系・プロピオン酸系NSAIDs併用群で0.07% (2/2,828), その他のNSAIDs併用群で0.10% (2/2,062) であり, NSAIDs非併用群とNSAIDs併用群との間に有意差は認められなかった。中枢神経系副作用の種類は, めまいが2例, ふらつき感不眠, 眠気が各1例報告されたが, 痙攣は認められなかった。
    LVFXの1日投与量別の中枢神経系副作用発現率は, 200mg分2/日投与群で0% (0/458), 300mg分3/日投与群で0.07% (4/5,716), 400mg分2/日投与群で0.10% (1/1.031), 600mg分3/日投与群で0% (0/65) であり, 4群間に有意差は認められず, NSAIDs併用の有無で層別した結果でも有意差は認められなかった。
    年齢別の中枢神経系副作用発現率は, 65歳未満で0.06% (4/7,088), 65~74歳で0.28% (1/358), 75歳以上で0% (0/151) であり, 有意差は認められなかった。さらにNSAIDs併用の有無で層別した結果でも有意差は認められなかった。
    以上の結果より, 基礎疾患・合併症を有さない症例においてLVFXに対するNSAIDsの影響はきわめて小さいことが示唆された。
  • 藤村 享滋, 吉田 勇, 地主 豊, 東山 伊佐夫, 杉森 義一, 山野 佳則
    2006 年 54 巻 4 号 p. 330-354
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    日本国内の15医療施設において, 2002年に種々の臨床材料から分離された好気性グラム陽性球菌 (銘菌種, 981株) および嫌気性菌 (2/菌種, 181株) について, 微量液体希釈法または寒天平板希釈法で各種抗菌薬の抗菌力を測定した。Staphylococcus aureusの58.7%がmethicillin耐性S. aureus (MRSA). Staphylococcus epidermidisの84.5%がmethicillin耐性S. epidermidis (MRSE) であり, 依然として高い分離頻度であった。MRSAおよびMRSEに対して良好な抗菌力を示したのは, arbekacin, vancomycin (VCM) とquinupristin/dalfopristin (QPR/DPR) であり, MIC90はいずれも2μg/mL以下であった。Streptococcus pneumoniaeにおけるpenicillin低感受性S. pneumoniae (PISP) とpenicillin耐性S. pneumoniae (PRSP) をPBP変異を基に分類した結果, 分離率は合わせて81.2%であった. PISPおよびPRSPに対し, セフェム系抗菌薬ではcefcapene, cefditoren, cefpiromeやceftriaxoneが1μg/mL以下のMIC90を示した。またニューキノロン系抗菌薬ではtosufloxacin, gatifioxacinやmoxifloxacinがpenicillin感性S. pneumoniae, PISP, PRSPのいずれにも1μg/mL以下のMIC90を示した。Enterococcus faecalisおよびEnterococcus faeciumに対してVCMとteicoplaninはともに2μg/mL以下で全株の増殖を阻止し, 良好な抗菌力を有しており, 耐性株は認められなかった。一方, linezolidとQPR/DPRはともにE. faeciumで低感受性または耐性株がおのおの5.8%, 15.9%存在した。嫌気性菌のBacteroides属.Prevotella属, Peptostreptococcus属に対してカルバペネム系抗菌薬は良好な抗菌力を有していたがBacteroides属で耐性株が散見され, 今後の動向に注意が必要と考えられた。
  • 吉田 勇, 藤村 享滋, 地主 豊, 東山 伊佐夫, 杉森 義一, 山野 佳則
    2006 年 54 巻 4 号 p. 355-377
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2002年に全国15施設において種々の臨床材料から分離された好気性グラム陰性菌19菌種属, 1,163株に対する各種抗菌薬のMICを主に微量液体希釈法で測定し, 抗菌力の比較検討を行った。腸内細菌科の抗菌薬感受性は, ほとんどのβ-ラクタム系抗菌薬に対して, 2000年分離株のデータに比べ耐性化傾向は認められなかったが, ニューキノロン系抗菌薬 (NQs) に対する低感受性株を含む耐性株の分離頻度は引き続き上昇していた。Escherichia coli, Klebsiella spp., Proteus spp. におけるextended spectrum β-lactamase産生株と考えられる株の分離頻度は, それぞれ1.4%, 15%, 8.1%であった。Momxella catarrhalisに対し, 多くの抗菌薬は良好な抗菌力を有していたが, Neisseria gonorrhoeaeではNQs低感受性株を含む耐性株は87%と, 2000年と同様きわめて高い分離頻度であった。Haemophilus influenzaeにおけるβ-lactamase産生株は6%であり, PCR法によるペニシリン給合蛋白質 (PBP) 3の変異から判定したβ-lactamase-negative ampicillin-resistant株の分離頻度は50%であった。Pseudomonas aeruginosaに対する各抗菌薬の抗菌力は全般的に低下しており, doripenemのみが, MIC90で8μg/mLを示した。抗P. aeruginosa薬10薬剤に対する感受性解析の結果, 7薬剤以上に耐性の株の分離率は14.4%であった。P. aeruginosa以外のブドウ糖非醗酵グラム陰性菌においても, NQsを含むほとんどの抗菌薬の抗菌力は2000年分離株のデータに比較して低下していた。
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