日本化学療法学会雑誌
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47 巻, 11 号
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  • ペニシリン結合蛋白遺伝子の変異とマクロライド耐性遺伝子の検出について
    宇野 芳史, 生方 公子
    1999 年 47 巻 11 号 p. 701-711
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    小児急性中耳炎症例のうち, 上咽頭から肺炎球菌が検出された40例44株を用い, PCR法を用い, ペニシリン結合蛋白 (PBP) 遺伝子の変異およびマクロライド耐性遺伝子の検出を行うと同時に, 最小発育阻止濃度 (MIC) の測定を行い, 遺伝子の変異, 耐性遺伝子の検出例との比較検討を行った。NCCLSの分類では, PSSPが12株 (27.3%), PISPが13株 (29.5%), PRSPが19株 (43.2%) であった。PCR法による検討では, PBP遺伝子の変異が見られなかったのは6株 (13.6%), 1-2遺伝子の変異が見られたものは8株 (18.2%), すべての遺伝子に変異が見られたものは30株 (68.2%) であった。マクロライド耐性遺伝子であるermAM遺伝子のみ見られたものは13株 (29.5%), mefE個遺伝子のみ見られたものは19株 (432%), ermAM遺伝子とne個遺伝子の両方が見られたものは2株 (4.5%), 耐性遺伝子の見られなかったものは10株 (22.8%) であった。PBP遺伝子の変異とPCGの感受性結果との比較では, PBP遺伝子の変異の頻度が増加するにしたがって, PCGのMICも増加する傾向が見られた。マクロライド耐性遺伝子の検出と, erythromycin (EM) とrokitamycin (RKM) の感受性結果との比較では, ermAM遺伝子のみ見られたものは, EMに対しては高度耐性を, RKMに対しては良好な感受性から高度耐性まで広範な分布を示していた。mefE遺伝子のみ見られたものは, EMに対しては中等度耐性を, RKMに対しては良好な感受性を示していた。ermAM遺伝子とmefE個遺伝子の両方が見られたものは, EMに対しては高度耐性を, RKMに対しては良好な感受性から高度耐性まで広範な分布を示していた。以上より, PCR法は, 迅速かつ高感度に肺炎球菌の検出できるのみならず, 同時に薬剤感受性も遺伝子レベルでの推定も行えることから, 臨床の場で非常に有効な方法であると考えられた。
  • 斎藤 篤他
    1999 年 47 巻 11 号 p. 712-733
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    8-メトキシキノロン系抗菌薬gatifloxacin (GFLX, AM-1155) の肺炎に対する有効性, 安全性および有用性を客観的に評価する目的で, levofloxacin (LVFX) を対照薬として二重盲検比較試験を実施した。GFLXは1回200mg1日2回, LVFXは1回100mg1日3回, いずれも14日間投与とした。得られた成績は以下のとおりであった。
    1) 検討対象例数は226例 (GFLX群115例, LVFX群111例) で, 臨床効果の解析対象例は, 200例 (GFLX群100例, LVFX群100例) であった。
    2) 臨床効果は, GFLX群98.0%(98/100), LVFX群95.0%(95/100) の有効率であり, 同等性の検証の結果, 両薬剤群の臨床効果は同等であった。なお, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。
    3) 細菌学的効果は, GFLX群100%(39/39), LVFX群87.5%(21/24) の菌陰性化率であり。両薬剤群聞に有意差はみられなかった。
    4) 副作用発現寧はGFLX群10.4%(12/115). LVFX群4.5%(5/110) で, 両薬剤群聞に有意差はみられなかった。GFLX群でみられた症状はねむけ, めまい, 皮疹, 下痢などでいずれも中等度以下であった。
    5) 臨床検査値具常の発現率はGFLX群14.2%(15/106), LVFX群19.6%(21/107) で, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。主なものはトランスアミナーゼの軽度上昇であった。
    6) 概括安全度で「安全である」と評価された症例の割合はGFLX群76.4%(84/110), LVFX群76.6%(82/107) で, 両薬剤群聞に有意差はみられなかった。
    7) 有用率は, GFILX群92.9%(92/99), L-VFX群89.8%(88/98) であり, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。
    以上, 肺炎に対するGFLX1回200mg1日2回投与はL, VEX1回100mg1日3回投与と臨床効果が同等であった。なお, GFLX群の菌陰性化率は100%であった。また, 副作用および臨床検査値異常の発現は両群間に差はみられなかった。これらの成績からG肌Xは市中肺炎 (細菌性肺炎, マイコプラズマ肺炎, クラミジア肺炎) の治療において高い有用性が期待される薬剤であると考えられた。
  • 斎藤 篤他
    1999 年 47 巻 11 号 p. 734-757
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    8-メトキシキノロン系抗菌薬gatifloxacin (GFILX, AM-1155) の慢性気道感染症に対する有効性, 安全性および有用性を客観的に評価する目的で, Ievofloxacin (LVFX) を対照薬として二重盲検比較試験を実施した。GFLXは1回200mg1日2回, LVFXは1回100mg1日3回, いずれも14日間連日経口投与とした。得られた成績は以下のとおりであった。
    1) 検討対象例数は227例 (GFLX群115例, LVFX群112例) で, 臨床効果の解析対象例は183例 (GFLX群93例, LVFX群90例) であった。
    2) 臨床効果は, GFLX群98.9%(92/93), LVFX群77.8%(70/90) の有効率であり, 両薬剤群聞に有意差がみられた。
    3) 細菌学的効果は, GFLX群90.9%(50/55), LVFX群85, 4%(41/48) の菌陰性化率であり, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。
    4) 副作用発現率はGFLX群8.0%(9/112), LVFX群9.3%(10/108) で, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。主な症状は消化器症状であり, 重篤なものはみられなかった。
    5) 臨床検査値異常の発現率はGFLX群14.7%(15/102), LVFX群11.7%(12/103) で, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。主なものはトランスアミナーゼの軽度上昇であった。
    6) 概括安全度で「安全である」と評価された症例はGFLX群77.1%(81/105), LVFX群79.6%(82/103) であり, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。
    7) 有用率は, GFLX群93.5%(86/92), LVFX群78.2%(68/87) であり, 両薬剤群間に有意差がみられた。
    以上, 慢性気道感染症に対するGFLX1回200mg1日2回投与はLVEX1回100mg1日3回投与と臨床効果および有用性に有意差がみられた。また, 副作用および臨床検査値異常の発現は両群間に差はみられなかった。これら成績からGFLXは慢性気道感染症の治療において高い有用性が期待される薬剤であると考えられた。
  • 由良 二郎他
    1999 年 47 巻 11 号 p. 758-771
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたフルオロキノロン系経口抗菌薬gatifloxacin (GFLX) の外科領域における第III相臨床試験を行い, 以下の成績を得た。外科領域感染症に対する臨床効果は1日200mg投与群では, 著効21例, 有効7例, やや有効1例および無効1例で, 有効率は93.3%(28/30), 一方, 1日400mg投与群では著効19例, 有効12例, やや有効1例および無効5例で, 有効率は83.8%(31/37) であり, 両群を合わせた67例の有効率は88.1%(59/67) であった。消長が確認できた起炎菌130株における菌消失率は, グラム陽性菌89.6%(43/48), グラム陰性菌100%(23/23) および嫌気性菌89.8%(53/59), 全体では915%(119/130) と高い消失率であった。MICが測定された起炎菌141株に対する本薬のMIC90は, グラム陽性菌, グラム陰性菌, 嫌気性菌, それぞれ3.13μg/ml, 0.39μg/ml, 1.56μg/mlであり, tosufloxacin (TFLX), cipmfloxacin, levonfloxacinのMIC90と比較すると, グラム陽性菌, グラム陰性菌では, TFLXとともにもっとも低いMIC値を示し, 嫌気性菌に対しては他の比較薬剤より特に優れた抗菌活性が認められた。副作用は3例に, 臨床検査値異常は2例に認められたが, いずれも重篤なものではなかった。これらの成績は, 第II相臨床試験における有効率, 副作用発現率と比べて同様の傾向を示し, 本薬の外科領域各種感染症に対する有用性が認められた。
  • 3日間投与と7日間投与の比較検討
    津川 昌也他
    1999 年 47 巻 11 号 p. 772-785
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    急性単純性膀胱炎に対する8-メトキシキノロン系抗菌薬gatifloxacin (GFLX) の3日間投与と7日間投与による臨床効果, 治癒効果および安全性を客観的に比較検討するため二重盲検比較試験を実施した。対象はUTI薬効評価基準 (第3版) に合致する20歳以上の女子急性単純性勝胱炎症例で, GFLX1回100mg, 1日2回の投与を3日間 (3日投与群) または7日間 (7日投与群) で行い, 以下の成績を得た。
    1. UTI薬効評価基準 (第3版) による7日後判定では, 3日投与群で有効率97.1%(33/34例; 著効26例, 有効7例), 7日投与群で有効率100%(37/37例; 著効30例, 有効7例) であった。また, 担当医判定の有効率は3日投与群で97.1%(33/34例), 7日投与群で94.6%(35/37例) であった。いずれの判定においても両群間に有意差を認めなかった。
    2. 最終的な治癒率は3日投与群で94.1%(32/34例), 7日投与群で97.2%(35/36例) であり, いずれの判定においても両群間に有意差を認めなかった。
    3. 副作用は3日投与群で4.3%(2/46例), 7日投与群で8.0%(4/50例) に認められた。また, 臨床検査値異常は3日投与群の4.4%(2/45例), 7日投与群の2.0%(1/50例) に認められた。いずれの発現頻度についても両群間に有意差を認めず, 重篤な有害事象はなかった。概括安全度では, ほぼ安全である以上が3日投与群97.8%, 7日投与群98.0%で両群間に有意差を認めなかった。
    以上の成績から, GFLXは急性単純性膀胱炎の治療において安全かつ有効な薬剤である。また, 1回100mg, 1日2回, 3日間投与は7日間投与と同等の臨床効果と治癒効果を示し, 急性単純性膀胱炎に対してはGFlXの3日間投与で十分であると考えられた。
  • 河田 幸道他
    1999 年 47 巻 11 号 p. 786-793
    発行日: 1999/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    8位メトキシ基を特徴とする新しいフルオロキノロン系抗菌薬gatinoxacin (GFLX) の男子尿道炎に対する臨床的検討を行った。淋菌性尿道炎45例, 淋菌性クラミジア性尿道炎7例, クラミジア性尿道炎75例および非淋菌・非クラミジア性尿道炎44例の計171例を対象として, GFLX 1回200mgを1日2回, 淋菌性尿道炎には3~7日間, 非淋菌性尿道炎には7~14日間投薬し, UTI薬効評価基準 (第3版) 追補にしたがって臨床効果を判定し, 以下の成績を得た。
    1. 投薬前に分離された淋菌36株に対するGFIILxのMlC90は0.063μg/mLであり, ciprofloxacinおよびofloxacinの4~8倍強い抗菌力を示した。
    2. 淋菌性尿道炎に対しては3日後において100%(36/36例) の有効率であった。
    3. 非淋菌性クラミジア性尿道炎に対しては7日後9790%(32/33例), 14日後100%(35/35例), 非淋菌・非クラミジア性尿道炎に対しては7日後83.3%(25/30例), 14日後100%(20/20例) の有効率であった。
    4. 副作用は, 160例中6例 (3.8%) に7件認められた。また, 臨床検査値の異常変動は83例中5例 (6.0%) に6件認められた。いずれも重篤なものではなく臨床上特に問題となるものはなかった。
    以上の成績より, 本剤は淋菌およびクラミジアに起因する男子尿道炎の治療において安全で有効性の高い薬剤と考えられた。
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