我々は尿路カテーテル非留置の中等度複雑性尿路感染症に対して, 新しいニューキノロン系経口抗菌薬のDU-6859aを対象に, 臨床治療前に実験的な方法で有効かつ効率的な投与法を求める検討を行った。実験には, すでに報告しているコンピューター制御により尿中抗菌薬濃度推移をシミュレートし得る中等度複雑性尿路感染症実験モデルを用いた。さらに, 実験的に求めた投与法で, 臨床的にどの程度の治療効果が得られるかを, 実際の臨床治療成績と比較し以下の結果を得た。
1) カテーテル非留置複雑性尿路感染症症例から分離された細菌に対するDU-6859aの抗菌力を検討した結果, MIC
70は0.5μg/mlであった。我々のこれまでの検討で, ある投与法におけるbreakpoint MICが治療前分離菌のMIC
70以上の場合には優れた臨床治療効果が得られる。そこで, 少なくともこの値までのMICの細菌を効果的に除菌できるような投与法を実験的に検討した。
2) その結果, DU-6859aを1回50mg, 1日2回投与時の尿中濃度推移で作用させた場合,
Pseudomonas aerugimsaでは2μg/mlまでの細菌が, また
Enterococcus faecalisでも2μg/mlまでの細菌が除菌された。したがって, この投与法における実験的breakpoint MICは2μg/mlであり, この値はMIC
70である0.5μg/mlを越えているため十分な臨床治療効果が期待された。
3) DU-6859aを1回50mg, 1日2回投与時の臨床治療成績を検討したところ, 完全除菌率85.4%(41/48), 有効率85.4%(41/48) と高く, 我々が実験的に求めた投与法で満足できる成績が得られていた。
以上より, 我々の実験モデルを用いた検討で, 中等度複雑性尿路感染症に対する有効かつ効率的な投与法を臨床治療前にほぼ推測し得ることが示唆された。
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