日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
44 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 多羅尾 史明, 三浦 敏明, 齋藤 玲, 佐藤 清
    1996 年 44 巻 10 号 p. 769-775
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規カルバペネム系抗生物質biapenem (BIPM) の体内動態を, 既存同系薬剤であるimipenem/cilastatin (IPM/CS) を対照薬としたcross-over法で比較検討した。健常成人男子6名にBIPM 300 mgまたはIPM/CS 500 mg/500 mgを30分間点滴静注にて投与し, 経時的に採取した血液および尿中の各薬剤濃度をHPLC法およびbioassay法により測定し比較検討した。また, 同様の方法で既に実施したカルバペネム系薬剤 (IPM/CS, panipenem/betamipron (PAPMZBP), meropenem (MEPM)) の結果と比較検討も行った。BIPMおよびIPMの両測定法による相関係数は血漿においてそれぞれ0.986, 0.979であり, 同様に尿においては0.992, 0.995であった。HPLC法とBioassay法における血漿および尿中薬剤濃度の測定値は, BIPM, IPM共に低濃度から高濃度までの広い範囲にわたって良好な相関が認められた。BIPMの最高血漿中濃度およびAUCは, BIPMの投与量が300 mg, 既存のカルバペネム3薬剤が500mgであることより, BIPMにおいて若干低い傾向を示した。しかし, 血漿中半減期については4薬剤共に約0.9h前後であり, 血漿中における消失の度合いは同等と考えられた。BIPMの尿中排泄率は, IPM/CSに比べると若干低いものの, PAPM/BPと比べ高く, MEPMと同様にcilastatinのようなDHP-1阻害剤が存在しなくとも十分な尿中排泄が得られると考えられた。以上の結果よりBIPMはIPM/CSと類似した体内動態を示し, 安定性に優れた薬剤であることが示唆された。
  • Imipenem/cilastatin sodiumの社会経済的評価
    藤野 志朗, 和田 光一, 柳沢 振一郎, 赤澤 とし子, 小川 京子, 五十嵐 謙一, 塚田 弘樹, 伊藤 和彦, 真島 一郎, 丸山 佳 ...
    1996 年 44 巻 10 号 p. 776-785
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1993, 1994年度に呼吸器感染症で入院し, 注射薬による治療を受けた症例をretrospectiveに無作為に抽出しimipenem/cilastatin (IPM/CS) を第一選択とした群とセフェム薬を第一選択とした群に分け, 社会経済学的な観点から抗菌薬の選択方法を検討した。評価可能な106例 (IPM/CS群40例, セフェム薬群66例) につきコストエフェクティブを分析し, 感染症重症度別集計から1症例当たりの費用から得られるコスト/エフェクティブネス比 (C/E) を見ると, 「軽症+中等症」ではIPM/CS群-2.465とセフェム薬群-2.320, 「重症」ではIPM/CS群-2.424とセフェム薬群-2.305であり, いずれもIPM/CSの方がセフェム薬と比較してコストエフェクティブであることが明らかになった。同様に治療日数を1日短縮するのにどれだけコストが変化したかを表す増分分析の結果 (△C/△E) を見ると「軽症+中等症」では-1.848, 「重症」では-1.849であり, IPM/CSを代替的に用いることによって治療日数を短縮するのみならず, 「軽症+中等症」では短縮1日当たり費用がさらに18, 480円減少することを示した。また, 呼吸器系基礎疾患有無別集計から得られる△C/△Eを見ると「無し」は,-1, 051, 「有り」は,-1.848であり基礎疾患がある患者に対してのIPM/CSの使用は基礎疾患を持たない患者よりも, よりコストエフェクティプであることが明らかになった。同様にCAZ群との比較においてもIPM/CS群の方がコストエフェクティブであった。なお, 臨床効果の観点よりセフェム薬群66例中薬剤の変更が行われたのは9例で, そのうちIPM/CSへの変更は6例で, 逆にIPMICS群からセフェム薬へ変更された症例は1例のみであった。このような1次選択薬の無効例は, 現状においては結果的に治療費用の増大を招く。このことにより, 早期にIPM/CSなどのような抗菌力の強い薬剤を使用した方が治療期間の短縮に繋がり, 患者の効用も増大し, 医療費の削減にも繋がることになる。
  • 新井 武利, 濱島 肇, 笹津 備規
    1996 年 44 巻 10 号 p. 786-791
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus FDA 209Pに対するリノール酸, オレイン酸, 局方ツバキ油, 精製ツバキ油, オリーブ油, 精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンの増殖抑制作用を検討した。これらの試料を培地に加え80μg/mlにしたものを標準液としてさらに培地を加え, 二段階希釈系列を作製した。一夜培養後の菌液を1.0×107cfu/mlになるようそれぞれに加えた。光学的に菌の増殖を測定し, 試料による増殖抑制作用を測定した。その結果, リノール酸, オレイン酸および局方ツバキ油には強い増殖抑制作用が認められた。精製ツバキ油とオリーブ油には比較的弱い増殖抑制作用があった。精製ツバキ油の50%阻止率 (ID 50) を脂肪酸および他の植物油脂のID50と比較した。ID50の比較により精製ツバキ油にはオリーブ油よりも強い増殖抑制作用があることが明らかになった。精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンは測定した濃度では増殖抑制は認められなかった。精製ツバキ油とオリーブ油はアトピー性皮膚炎の皮膚病変部のスキンケアに有用であろう。
  • 宮本 潤子, 古賀 宏延, 朝野 和典, 河野 茂, 原 耕平, 青木 明子, 西嶋 敏夫
    1996 年 44 巻 10 号 p. 792-797
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    臨床分離のStaphylococcus aureus1株, Streptococcus pyogenes 1株, Streptococcus pneumoniae 3株に対するrokitamycin (RKM) の殺菌作用とpostantibiotic effect (PAE) に関して, clarithromycin (CAM), erythromycin (EM), およびcefditoren (CDTR) を対照薬として比較検討した。RKMの抗菌力はS.aureusS.pyogenesに対してはEMとほぼ同等で, ペニシリン耐性S.pneumoniaeに対しては他の3薬剤よりも優れていた。殺菌作用の検討では, RKMは検討したすべての菌種に対してもっとも強い殺菌作用を示した。また, RKMのPAEは, S.aureusに対してはCAMやEMよりもやや短かったものの, S.pneumoniaeではほぼ同等, S.pyogenesでは長く, CDTRと比べてもすべての菌種で長いPAEを示した。以上のように, RKMはニューマクロライド薬であるにもかかわらず, ペニシリン耐性S.pneumoniaeを含むグラム陽性球菌に対する抗菌力に優れ, その作用は殺菌的で, しかも長いPAEを有することから, 臨床的にも呼吸器感染症の治療に対して有用性の高い薬剤であると思われた。
  • 桜井 磐, 吉田 正樹, 石田 裕一郎, 松本 文夫, 高橋 孝行, 森田 雅之, 上田 泰
    1996 年 44 巻 10 号 p. 798-803
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン薬による低血糖症状の報告が, 欧米はじめ本邦で散見されている。我々は, 非糖尿病性慢性腎不全患者5例を対象にenoxacin 1回200mg1日3回, 3~5日使用し, 使用前後に75g経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) を施行して, 血糖値, 血中インスリン, C-ペプチド.グルカゴン.成長ホルモンおよびコルチゾール値の推移を検討した。これら症例のOGTT空腹時血糖値はenoxacin使用により有意の変動を認めなかったが, インスリン平均値はenoxacin使用により6.4μU/mlから9.6μU/mlへと上昇傾向を認め, OGTT 30分のインスリン値はenoxacin負荷により低下傾向を示した。これらの成績はenoxacinによるインスリン分泌亢進とともに, インスリンの末梢組織あるいは肝での感受性亢進の可能性を示唆するものである。
  • 岩倉 伸次, 谷村 弘, 村上 浩一
    1996 年 44 巻 10 号 p. 804-817
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    近年のニューキノロン系抗菌薬は, 胆道感染症にも臨床応用されるようになったが, いかなる薬理学的特性を持ったキノロン系抗菌薬が胆道感染症治療に適しているのかは特定されていない。本研究では, ラットを用いて種々の黄疸状態におけるsparfloxacin (SPFX), pazufloxacin (PZFX) とDU-6859aの胆汁中移行について, 各時間帯の胆汁中濃度, 未変化体とグルクロン酸抱合体の比率, および尿中排泄を比較検討した。その結果, 閉塞性黄疸ラットでは, いずれの抗菌薬も胆汁中移行が低下し, 尿中排泄が増加したが, 3未変化体の胆汁中移行はPZFX=DU-6859a>SPFXの順に維持された。EHBRでは, いずれの抗菌薬も未変化体とグルクロン酸抱合体は胆汁中移行が低下した。しかし, 閉塞性黄疸とは異なって, グルクロン酸抱合体のみ尿中排泄が増加した。すなわち, 閉塞性黄疸ではUDP-グルクロン酸のプールが減少していることが関与していると考えられた。Gunnラットでは, 抗菌薬の種類によって胆汁移行が異なり, SPFXのような血清蛋白との親和性の高い抗菌薬は, 血中でアルブミンとの結合の競合が起こり, アルブミンが枯渇するため胆汁中移行が低下した。一方, PZFXやDU-6859aのように血清蛋白との親和性が低い抗菌薬はこの影響を受けにくいため, SPFXより多く胆汁中に移行した。また, PZFXとDU-6859aでグルクロン酸抱合体が検出できたのは, キノロン系抗菌薬を代謝するUDP-glucuronosyltransfbraseはビリルビンとはまったく別のisoenzymeであると推測された。このように, キノロン系抗菌薬による胆道感染症の治療に際しては, 黄疸の状態や肝機能によって, 肝臓における代謝と胆汁中移行が異なることに留意しなくてはならない。
  • 清水 正樹, 高田 利彦, 益吉 眞次, 吉田 隆
    1996 年 44 巻 10 号 p. 818-820
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口セフェム薬cefditoren pivoxil (CDTR-PI) をヒトに経口投与して得られたcefditoren (CDTR) の口蓋扁桃内濃度データを用いて薬物動態的解析を行った。さらに得られた口蓋扁桃内濃度推移にin vitroでシミュレートした場合のHaemophilue influenzaeに対する殺菌作用を検討し, 以下の成績を得た。
    1.ヒトにCDTR-PI, 200mg経口投与後のCDTR口蓋扁桃内濃度について薬物動態的解析すると, Cmax値は約0.2μg/mlを示した。
    2.薬物動態的解析により得た, CDTR口蓋扁桃内濃度推移にシミュレートした条件下におけるH. influenzae PRC2の増殖曲線におよぼす作用は, 殺菌的であり, 作用6時間目の生菌数は菌接種時より約2log減少した。
  • 1996 年 44 巻 10 号 p. 826
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
feedback
Top