1998年12月から2000年6月までに当院を受診した
Haemophilus influenzaeによる小児急性中耳炎症例の細菌学的, 疫学的, 臨床的検討を行い。現在生じている問題点について検計した。今回の検討期問中,
H.influenzaeは282例から309株検出され, 内訳はアンピシリン感受性インフルエンザ菌が179株 (57.9%), β-ラクタマーゼ産生インフルエンザ菌が46株 (14.9%), β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌 (β-lactamase-negative ampicillin-resistant
H.influenzae, 以下BLNAR) が84株 (27.2%) であった。年齢は生後3か月から180か月まで (平均45.3か月) であり, 性別は男児138例, 女児144例であった。検出月別では8, 9月の夏期には少なく, 冬期には多いという分布を示していた。各年齢ごとの検討では, β-ラクタマーゼ産生株は, 1歳代と7歳代にピークをもつ2峰性の分布を, BLNARは, 1歳代と4歳代にピークをもつ2峰性の分布を, ABPC感受性株は, 1歳代と5歳代にピークをもつ2峰性の分布を示していたが, その間の年齢にも, かなりの頻度で分布していた。
H.influenzaeの治療において, 第一選択とすべき経口抗菌薬はcefditoren pivoxilと考えられた。また, cefpodoxime proxetilも比較的良好な感受性を示したが, MICが4.0μg/mL以上の株もあり, 必ずMIC測定後に使用すべきであると考えられた。経口抗菌薬, 鼓膜切開術などの治療で良好な結果の得られた症例は88.0%で, 12.0%の症例では耳漏の持続が認められたり, 反復性中耳炎に移行した。特に初回細菌検査でアンピシリン感受性インフルエンザ菌が検出された症例でも, その後β-ラクタマーゼ産生インフルエンザ菌やBLNARが検出され, 難治性中耳炎に移行した症例もあり, 初回治療の重要性が再認識された。
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