日本化学療法学会雑誌
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49 巻 , 6 号
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  • モニター/臨床開発経験者の立場から考えること
    西川 隆
    2001 年 49 巻 6 号 p. 349-354
    発行日: 2001/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    医薬品の臨床試験 (治験) は, 非臨床試験を経てヒトを対象に有効性, 安全性を最終的に確認する試験であり, 倫理性, 科学性, 信頼性の確保が求められている。わが国では1997年3) 1に「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」として新GCPが制定され, 1998年4月より完全実施されている。新GCPは, 治験依頼者に多くの責務を課しているが, そのなかでもっとも重要なもののひとつとして医療機関における原資料の直接閲覧を認めるモニタリングの強化・実施を義務づけている。米国では1970年代からモニタリングは, 治験依頼者の重要な業務として取り扱われていたが, 新GCPによりわが国も米国, EU諸国なみにはじめてモニターが認定され, モニタリング業務が規定された。しかし現時点では製薬企業, 医療機関ともに新GCPに則した治験環境の整備遅れやモニターの資質問題もあって, 医療機関におけるモニタリングは効率的実施を模索している段階のように見受けられる。抗菌薬治験のモニタリングも同様な状況にある。新GCPの求めている治験の「質」と成績の「信頼性」を確保するには, モニターによる正確なモニタリングの実施が不可欠である。これを実現するには, 治験依頼者およびモニターのGCP遵守のモニタリングをめざす研鑚はもとより原資料の直接閲覧, CRCの設置などについて化学療法学会治験関係者の積極的な支援・指導が必要である。
  • 宇野 芳史
    2001 年 49 巻 6 号 p. 355-362
    発行日: 2001/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1998年12月から2000年6月までに当院を受診したHaemophilus influenzaeによる小児急性中耳炎症例の細菌学的, 疫学的, 臨床的検討を行い。現在生じている問題点について検計した。今回の検討期問中, H.influenzaeは282例から309株検出され, 内訳はアンピシリン感受性インフルエンザ菌が179株 (57.9%), β-ラクタマーゼ産生インフルエンザ菌が46株 (14.9%), β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌 (β-lactamase-negative ampicillin-resistant H.influenzae, 以下BLNAR) が84株 (27.2%) であった。年齢は生後3か月から180か月まで (平均45.3か月) であり, 性別は男児138例, 女児144例であった。検出月別では8, 9月の夏期には少なく, 冬期には多いという分布を示していた。各年齢ごとの検討では, β-ラクタマーゼ産生株は, 1歳代と7歳代にピークをもつ2峰性の分布を, BLNARは, 1歳代と4歳代にピークをもつ2峰性の分布を, ABPC感受性株は, 1歳代と5歳代にピークをもつ2峰性の分布を示していたが, その間の年齢にも, かなりの頻度で分布していた。H.influenzaeの治療において, 第一選択とすべき経口抗菌薬はcefditoren pivoxilと考えられた。また, cefpodoxime proxetilも比較的良好な感受性を示したが, MICが4.0μg/mL以上の株もあり, 必ずMIC測定後に使用すべきであると考えられた。経口抗菌薬, 鼓膜切開術などの治療で良好な結果の得られた症例は88.0%で, 12.0%の症例では耳漏の持続が認められたり, 反復性中耳炎に移行した。特に初回細菌検査でアンピシリン感受性インフルエンザ菌が検出された症例でも, その後β-ラクタマーゼ産生インフルエンザ菌やBLNARが検出され, 難治性中耳炎に移行した症例もあり, 初回治療の重要性が再認識された。
  • 坂田 宏
    2001 年 49 巻 6 号 p. 363-368
    発行日: 2001/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2000年9月から2001年3月までにazithromycin (AZM) を投与した生後6か月から9歳までの小児で, CRPが0.6mg/dL以上で, 上咽頭スワブからStreptococcus pneumoniaeないしHaemphilus influenzaeが検出された30名の細菌性下気道感染症患者とMycoplasma抗体価が急性期と回復期で有意な上昇を認めた12名のMycoplasma感染症を対象として臨床効果を検討した。原則的にAZMは10mg/kg/回1日1回食後投与した。臨床効果は42名中32名に有効であり, 有効率は762%であった。細菌性下気道感染症では30名中20名 (66.7%), Mycoplasma感染症では12名中12名 (100%) であった。菌別の有効性はH. influenzaeS. pneumoniae両者が検出した児14名中11名 (78.6%), H. influenzae単独検出8名中5名 (62.5%), PRSP単独検出8名中4名 (50.0%) であった。H. influenzaeでは22名中15名 (68.2%), S. pneumoniaeでは22名中21名 (95.5%) に投与終了後でも上咽頭に菌が残存していた。副作用は全例で認められなかった。
  • 紺野 昌俊, 生方 公子, 千葉 菜穂子, 長谷川 恵子, 柴崎 有美, 須藤 梢, 岸部 和也, 藤川 弘之, 酒井 正史, 小山 義之, ...
    2001 年 49 巻 6 号 p. 369-396
    発行日: 2001/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefditoren pivoxil (CDTR-PI, 販売名: メイアクト®錠100, メイアクト®小児用細粒) の使用実態下におけるペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) ならびにβ-lactamase非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌 (BLNAR) の病態に関する特別調査の精度の検証と, CDTR-PI投与前後における両細菌の消長や各種抗菌薬に対する感受性分布ならびに主治医の判定による「臨床的手応え」について検証した。あわせて, 上咽頭から検出される肺炎球菌とインフルエンザ菌の意義についても検討した。その結果, 本調査において分離された肺炎球菌とインフルエンザ菌は, 主として1歳未満から2~3歳前後の乳幼児の上咽頭に生息し, 急性気道感染症や急性中耳炎と関連していることが明らかにされた。CDTR-PIの投与により, これらの細菌はPRSPやBLNARにおいても, 早期には上咽頭より消失あるいは減少するが, 血中濃度のtroughを介して, 外界より容易に侵入・定着・増殖を繰り返すと考えられる現象が見られた。これらの症例のうち何例かが遷延あるいは反復する上気道感染症や中耳炎に繋がっていくものと思われた。その意味では, 諸家が指摘している乳児院・保育園などに在園する乳幼児, あるいはその兄弟がhigh riskにあることが示唆された。CDTR-PI投与前後に検出された肺炎球菌とインフルエンザ菌の各種抗菌薬に対する感受性を測定した。そのMIC分布を比較すると, 各種β-ラクタム薬はそれぞれの薬剤が有する各種細菌のPBPsに対する親和性の強弱にしたがって, 微妙に耐性の側にシフトする現象が見られた。上咽頭の細菌検査は, 小児の急性気道感染症や続発する急性中耳炎の起炎菌決定のために必要である。ことにPRSPやBLNARによる遷延・反復する感染症を考慮すれば, いかなる耐性菌かということを早急に知ることが, 適正な抗菌薬選択のためにも必要である。その意味では, 今回実施したPCR法による薬剤耐性遺伝子の検索は非常に有用な情報を提供した。加えて, 上咽頭の細菌叢が関与する感染症においては, 上咽頭の細菌の消長を少なくとも, 抗菌薬投与後2~3日目と10日前後にグラム染色による検鏡によりたしかめることが重要であることが示唆された。主治医による「臨床的手応え」は咽頭や扁桃あるいは鼓膜などの臨床所見と共に鼻汁あるいは中耳分泌物の性状が重視されていた。これらの所見と上咽頭の検鏡所見や検出菌量との関連を多変量解析により求めたが, 有意な関係にあることが示された。
  • 小橋 吉博, 米山 浩英, 沖本 二郎, 副島 林造
    2001 年 49 巻 6 号 p. 397-401
    発行日: 2001/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    MRSAおよびPseudomonas aeruginosaをはじめとするグラム陰性桿菌などとの混合感染に対するarbekacin (ABK) +imipenem/cilastatin (IPM/CS) 併用療法の有用性を検討した。過去4年9か月間で, MRSAを含む複数菌による重症感染症患者39例 (肺炎27例, 慢性1呼吸器疾患の二次感染7例, 褥瘡感染2例, 敗血症2例, 尿路感染症1例) に対して, ABK150mg×1/日+IPM/CS 0.5g×2/日を4~28日間投与した。その結果, 臨床効果は有効27例に対し, 無効は12例で有効率は69%と比較的良好であった。細菌学的検査では, MRSAが全例で検出されていたほか, P. aeruginosaが20例で検出されていた。またABK+IPM/CSによる治療で, 除菌率はMRSA 31%, P. aeruginosa 40%であった。ABKのTDM測定を39例中19例に施行し, 大部分の症例はピーク値, トラフ値ともに至適濃度がえられていた。今回の検討結果から, MRSAを含む複数菌感染症に対するABK+IPM/CS併用療法はABKの血中濃度のモニタリングを行いながら, 安全性を確認していくことにより, 重症感染症患者に対しても臨床的に有用性のある治療法と考えられた。
  • 藤原 葉一郎, 中田 好則
    2001 年 49 巻 6 号 p. 402-406
    発行日: 2001/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    京都第一赤十字病院産婦人科にて1999年1月から2000年12月の間に人工妊娠中絶術を施行した156例につき, セフェム系抗菌薬 (cefotiam hexetil (CTM-HE) 600mg/日8例, cefoteram pivoxil (CFTMPI) 600mg/日93例, cefcapene pivoxil (CFPN-PI) 300mg/日8例) を4日ないし5日間投与した群 (109例) と, フルオロキノロン系抗菌薬 (tosufloxacin (TFLX) 450mg/日) を4日ないし5日間投与した群 (47例) とに分け, 術後感染症の発症の有無を比較検討した。セフェム投与群で8名 (7.3%), フルオロキノロン投与群で2名 (4.3%) の合計10名 (6.4%) に子宮付属器の感染症発症を認め, 抗菌薬の追加, 再掻爬を必要とした。また156例中, 子宮頸管部のChlamydia traehonnatisの検索が28例に施行され, 5例 (17.8%) が陽性であり, これら5例はすべて術後の感染症を発症した10例に含まれた。さらに156例中, 既婚者は85名, 未婚者は71名であり, 既婚者の11名, 未婚者の17名に子宮頸管部のC. trachomatisの検索がなされ, 陽性者はそれぞれ0例, 5例 (29.4%) であった。これらから人工妊娠中絶術後の感染予防目的で投与する抗菌薬はセフェム系のものよりもフルオロキノロン系のものが望ましく, さらに未婚若年婦人おけるクラミジア感染症の蔓延が示唆されたことから, これら婦人において人工妊娠中絶術時にクラミジア感染症の検索を施行し適切な治療を施すことは, 将来上行感染から引き続いて発症するとされている骨盤内感染症や不妊症の予防に重要であると考えられた。
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