ファルマシア
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53 巻, 6 号
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目次
  • 2017 年 53 巻 6 号 p. 518-519
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    表紙の説明:長井長義の墨跡(墨筆で掛軸や扁額用に名言を大書したもの)は稀であるが,長年顧問を務めた東京薬学専門学校(現東京薬科大学)に3点所蔵されていることが,このほど判明した.掲示品はその1つで,誠意を重んじた「終始一誠意」の語を大書し,「丁卯新年試筆,八十三翁朴堂」と署し,「理学博士薬学博士長井長義」「樸堂」の朱印が押してある.「丁卯」は昭和2(1927)年,最晩年の筆である.「朴堂(樸堂)」と号したことはあまり知られていない.胸像は日本薬学会長井記念館所蔵,平成3年製作.
オピニオン
Editor's Eye
挑戦者からのメッセージ
  • 日本発ブロックバスター「アリピプラゾール」
    倉橋 伸幸
    2017 年 53 巻 6 号 p. 527-529
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    1988年に薬学修士課程を修了した筆者は大塚製薬に入社。その後、研究所から開発へと部署を変え、さらに米国で大手製薬企業とアリピプラゾールのグローバル開発及び販売を経験した。帰国後、同製品の日本上市を行い、2011年から再び渡米し現在も中枢領域におけるグローバル医薬品開発と商業化を担当している。一介の研究員だった筆者の経歴を紹介するともに、今後社会へと羽ばたく薬学生に対するメッセージを述べる。
セミナー
セミナー
セミナー
セミナー
  • 檜井 栄一
    2017 年 53 巻 6 号 p. 545-549
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    「粉骨砕身」や「骨折り損のくたびれもうけ」など,古来よりことわざにも「骨」が多く使われており,骨は,私たちになじみの深い臓器である.骨は,私たちの体のいたるところにあり,私たちの体を支え内臓を守る,という大きな役割を担っている.近年,骨の持つ新たな機能が続々と明らかになっており,私たちが骨に対して持っている一般的なイメージが覆されつつある.その中でも,本稿では「骨=体を支える臓器」であるだけでなく「骨=内分泌器官(骨=内臓)」である,という内容を中心に話を進めていく.
最前線
最前線
話題
セミナー:創薬科学賞
セミナー:創薬科学賞
FYI(用語解説)
  • 村木 優一
    2017 年 53 巻 6 号 p. 575_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    ASとは,感染症専門の医師や薬剤師などが個々の患者に対して主治医が抗菌薬を使用する際,最大限の治療効果を導くと同時に有害事象をできるだけ最小限にとどめ,いち早く感染症治療が完了できる(最適化する)ように支援を行うことである.
    安易な(不適切な)抗菌薬の使用は,耐性菌を発生あるいは蔓延させる原因となるため,ASを推進することは耐性菌の出現を防ぐ,あるいは遅らせることができ,医療コストの削減にもつながることが,様々な国から報告されている.すなわち,ASは感染症診療における耐性菌抑制と予後向上を両立させるための中心的役割を担っている.
  • 吉永 智一
    2017 年 53 巻 6 号 p. 575_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    MT4というT細胞株にHIVウイルスを感染させ,ウイルス増殖による細胞の死滅の割合によって抗HIV活性を評価するin vitroのHIV感染系アッセイ.生細胞中のミトコンドリアがMTT試薬を還元することによって生じる色の変化を定量する.
  • 吉永 智一
    2017 年 53 巻 6 号 p. 575_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    主に薬物代謝酵素(シトクロムP450:CYP)で代謝を受ける薬の場合,CYPを阻害するために併用して,その薬の血中濃度を高く保つ化合物のことを言う.抗HIV治療では,もともとプロテアーゼ阻害剤で,抗CYP阻害活性の強いritonavir,または抗HIV阻害活性はないCYP阻害薬cobicistatが用いられる.PKブースターの併用は薬物濃度を維持できる利点がある反面,薬物相互作用が大きくなる欠点がある.
  • 及川 信宏, 坂本 洋, 高梨 賢二, 鈴木 弘美, 吉村 康史
    2017 年 53 巻 6 号 p. 575_4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    2007年に自治医科大学グループにより同定された非小細胞肺がんのドライバー変異.非小細胞肺がんに約4%の頻度で認められており,一部例外を除きEGFRKRAS遺伝子の変異とは相互に排他的である.EML4-ALK融合遺伝子には融合点の異なる複数のバリアントが存在するが,いずれも第2番染色体短腕上の逆位によりechinoderm microtubule-associated protein-like 4(EML4)遺伝子および受容体型チロシンキナーゼanaplastic lymphoma kinase(ALK)遺伝子が融合することにより生じる.その腫瘍形成能は3T3線維芽細胞の形質転換やトランスジェニックマウスにより確認されている.そのがん化能は,翻訳産物のEML4-ALKがEML4のcoiled-coil領域において多量化し,恒常的なキナーゼ活性を有することに由来するため,ALK阻害剤が有効な治療選択肢となる.
在宅医療推進における薬剤師のかかわり
製剤化のサイエンス
  • 山口 哲夫
    2017 年 53 巻 6 号 p. 579-581
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    ロコアテープはエスフルルビプロフェン40 mgとハッカ油36.2 mgを有効成分とし,「変形性関節症における鎮痛・消炎」を効能・効果とした経皮吸収型NSAIDsの配合剤である.有効成分と相性のよい基剤を採用したテープ剤とすることで,有効成分を効果的に炎症・疼痛部位へ移行させ,光毒性のリスクも小さい製剤を開発するに至った.また臨床における52週間の連続投与試験の結果,高い有効性と安全性を示したことから、変形性関節症の治療に期待できる.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 倉永 健史
    2017 年 53 巻 6 号 p. 586
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    新規抗生物質teixobactin(図1)は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)等の多剤耐性菌に対しても有効で,マウスにおいても有効性が実証されている. バンコマイシンやラモプラニン等より大幅に構造が単純化されたfirst-in-classの医薬品シードとして,化学合成を基盤とした詳細解明が望まれていた.最近,無保護ペプチドの連結を基盤とした効率的全合成が達成されたため,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ling L. L. et al., Nature, 517, 455–459(2015).
    2) Jin K. et al., Nat. Commun., DOI: 10.1038/ncomms12394
    3) Zhang Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 110, 6657–6662(2013).
  • 高嶋 一平
    2017 年 53 巻 6 号 p. 587
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    標的タンパク質と共有結合する「共有結合型阻害剤」は,低濃度で強力に作用する.しかし,非特異的な結合形成がしばしば問題となり,重篤な副作用も生じやすい.極めて高い標的選択性を付与できれば,優れた解析ツールや創薬候補となり得る.本稿では,標的タンパク質のみ選択的に共有結合を形成する阻害剤について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhang T. et al., Nat. Chem. biol., 12, 876–884(2016).
    2) Kwiatkowski N. et al., Nature, 511, 616–620(2014).
    3) Bösken C. A. et al., Nat. Commun., 5, 3505(2014).
    4) Greifenberg A. K. et al., Cell Rep., 14, 320–331(2016).
  • 若菜 大悟
    2017 年 53 巻 6 号 p. 588
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    真菌は有用な生物資源として知られており,様々な生物活性物質を産生するだけでなく,環境中の物質の構造を変換する能力も有する.微生物による変換は有用物質を産生する目的で用いられることが多いが,毒性の増強につながる場合もある.自然界には様々な真菌が存在するため,上記の現象は自然環境中でも発生する可能性がある.今回,毒性が強化された例として,環境より発見された真菌によるフロセミド(FRSM)の代謝と,その代謝物の毒性を評価した例を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Olvera-Vargas H. et al., Environ. SciPollut. Res., 23, 22691–22700(2016).
    2) Komori K. et al., Environ. Monit. Assess., 185, 4529–4536(2013).
    3) Laurence C. et al., Chemosphere, 113, 193–199(2014).
  • 唐沢 浩二
    2017 年 53 巻 6 号 p. 589
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    内在性低分子RNAであるmicroRNA(miRNA)は,18〜25塩基長のnon-coding RNAであり,様々な生物種でその存在が確認されている.miRNAは,乳がんや膵臓がんなどのがん疾患,急性心筋梗塞などの冠動脈疾患,アルツハイマー病,うつ病,感染症(結核やHelicobacter pylori感染)など,様々な疾患の進展や悪性度と密接に関連していることから,診断や治療のためのバイオマーカーとして注目されている.miRNAの分析法としては,リアルタイムPCRやマイクロアレイが主に用いられているが,臨床現場における遺伝子分析法は,診療所やベッドサイドでの利用(point of care test:POCT)を考慮し,コンパクト,簡易性,迅速性,感度に優れていることが必要である.本稿では,将来の臨床現場で応用可能なmiRNAのPOCTシステムを開発したWenらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wen Ma et al., Biosens Bioelectron, 80, 344-351(2016).
    2) Dong H. et al., Anal. Chem., 84, 4587-4593(2012).
    3) Alsmadi O. et al., BMC Res. Notes, 2, 48(2009).
  • 池田 義人
    2017 年 53 巻 6 号 p. 590
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    近年,アテローム性動脈硬化症に対する新規治療薬のターゲットとして,核内受容体liver X receptor(LXR)の活性化が注目されている. LXRは,腸細胞や肝細胞など多くの細胞に発現しており,脂質代謝関連遺伝子群の発現制御を介してHDL粒子の形成などに関与する.そのためLXRを活性化することで,動脈硬化病巣に認められるプラークからコレステロールを排出させる治療が可能になると期待されている.しかし,合成アゴニストを用いたLXR活性化は,脂肪酸合成関連遺伝子群の転写因子sterol regulatory element-binding protein 1c(SREBP-1c)の発現を上昇させることが報告されており,肝臓への脂質沈着を促進してしまう問題を抱えていた. このことから,アテローム性動脈硬化症の治療薬としてLXRアゴニストを用いることで,非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD)を増悪させてしまうことが危惧されている. NAFLDは近年,非常に多くみられる異常所見であり,アテローム性動脈硬化症の発症とも関連する.また,NAFLDのうち,肝硬変へと進行する症例は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれ,治療の対象となるが,効果的な薬物療法は確立されておらず,治療薬の開発が熱望されている.本稿では,Hsiehらによって報告された,アテローム性動脈硬化症とNASHの両疾患に対する治療ターゲットとなることが期待されるtetratricopeptide repeat domain protein 39B(T39)の生理機能に関する研究を紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ma Z. et al., Curr. Issues Mol. Biol., 22, 41–64(2017).
    2) Repa J. J. et al., Genes Dev., 14, 2819–2830(2000).
    3) Ducheix S. et al., Biochem. Pharmacol., 86, 96–105(2013).
    4) Hsieh J. et al., Nature, 535, 303–307(2016).
    5) Teslovich T. M. et al., Nature, 466, 707–713(2010).
  • 水尾 圭祐
    2017 年 53 巻 6 号 p. 591
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    うつ病は世界中で心身の障害の原因となっており,その患者数は1億2,000万人を超えると言われている.我が国でも2000年代以降,患者数は著しく増加しているが,その原因は不明な点が多い.近年,うつ病の発症に関与が深い遺伝子の1つとしてサーチュイン1(Sirt1)が指摘された. Sirt1はclass Ⅲヒストン脱アセチル化酵素のサーチュインファミリーの1つであり,長寿遺伝子として知られている.本稿では,情動に深い関わりを持つ脳部位の側坐核において,Sirt1がうつ病に深く関与しているという報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) CONVERGE Consortium, Nature, 523, 588-591(2015).
    2) Kim H. D. et al., J. Neurosci., 36, 8441-8452(2016).
    3) Abe-Higuchi N. et al., Biol. Psychiatry, 80, 815-826(2016).
  • 安藤 基純
    2017 年 53 巻 6 号 p. 592
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    筋肉の収縮に伴い,様々なサイトカインあるいはペプチドが骨格筋で産生され,放出されることが近年明らかにされている.“マイオカイン”と称されるそれらは,様々な臓器および組織の代謝機能にも影響を及ぼすことから,生体の未知なる機能を解明するうえで重要な分子として注目を集めている.今回,ランニングによりマイオカインの1種であるカテプシンBが骨格筋から誘導されることを発見し,それが記憶機能に影響を及ぼす際のメカニズムを明らかにしたMoonらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Moon H. Y. et al., Cell Metab., 24, 332–340(2016).
    2) Vavvas D. et al., J. Biol. Chem., 272, 13255–13261(1997).
    3) Sartori C. R. et al., Neuroscience, 180, 9–18(2011).
  • 秋田 智后
    2017 年 53 巻 6 号 p. 593
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    抗悪性腫瘍薬を使用した従来のがん治療の問題点は,がん細胞と正常細胞を十分に識別できないことであった. それゆえ,効率的にがん細胞へ薬物を送達させるためには,細胞内取り込み向上のための標的化設計や,がん細胞と隣接する正常細胞への毒性を軽減させるといったアプローチが行われてきた. 近年,ナノテクノロジーは,病気の早期診断や生体イメージング,薬物送達など様々な分野において研究が進んでおり,多くの功績をもたらしている.本稿では,ナノテクノロジーを基に,大腸がんを対象として,薬物治療,遺伝子治療および光線療法の3つの治療を組み合わせたハイドロゲルパッチを開発したCondeらの研究成果を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Minelli C. et al., Small, 6, 2336–2357(2010).
    2) Liu Y. et al., Int. J. Cancer, 120, 2527–2537(2007).
    3) Conde J. et al., Nature Mater., 15, 1128–1138(2016).
紹介
追悼
  • 土井 健史
    2017 年 53 巻 6 号 p. 585
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    池原森男先生が、平成28年12月10日に93歳でお亡くなりになられました。非常に残念で言葉もありません。
    池原先生は、大学のみならず企業で活躍する多くのDNA合成研究者を養成し、日本の遺伝子工学による医薬創成に大きく寄与されました。さらに、「核酸化学シンポジウム」の創設、運営に主要な役割を果し、日本の核酸化学研究の促進と研究者間交流に大きく貢献されました。
    ありがとうございました。ご冥福をお祈り申し上げます。
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