硫酸[アルキルポリ(オキシエチレン)]イオンの硬水中での挙動の解明を目的とした。硫酸[ドデシルトリ(オキシエチレン)]=ナトリウム(R
12O(EO)
3SO
3Na),水酸化ナトリウム,塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを含む溶液中での酸化鉄(Fe
2O
3)あるいは酸化チタン(IV)(TiO
2)粒子への各種イオンの吸着量(
t)とカルシウムイオン濃度との関係を検討した。一定濃度のR
12O(EO)
3SO
3Naと水酸化ナトリウムが存在し,溶液のイオン強度が一定の場合に,溶液中の全陽イオン濃度に対するカルシウムイオン濃度の比(C
ca2+/(C
ca2++C
Na))が増加するにつれて,Fe
2O
3あるいはTiO
2へのΓ
R12O(EO)3SO3-はそれぞれ急激に大きな勾配で直線的に増加し,その後,より小さな勾配で直線的に増加した。一方,Γ
Na+とΓ
Cl-はC
ca2+/(C
ca2++C
Na+)の全領域に,わたって無視し得るほど小さかった。また,
R12O(EO)3SO3-は
ca2+の約2倍であった。このようなR
13O(EO)
3SO
3-とカルシウムイオンの協同的吸着の原因を検討するため,同様の溶液中のオレンジ-OTの可溶化量を測定した。オレンジ-OTの被可溶化量とΓ
R12O(EO)3SO3-のC
ca2+/C
ca2++C
Na依存性が平行関係にあったことから,1molのR
12O(EO)
3SO
3-と0.5molのカルシウムイオンの選択的イオン対生成を議論した。Fe
2O
3あるいはTiO
2のStern電荷密度(σ)をΓ
tから計算した。R
12O(EO)
3SO
3-とカルシウムイオンが存在しない場合の電荷密度(σ
0)にΓ
tから計算される電荷密度(σ
e)を加算してσを得た。C
ca2+/C
ca2++C
Naの増加とともに,σは急激に増加し,最大値を示した。この特徴的な曲線は,主として,粒子表面上のR
12O(EO)
3SO
3-とカルシウムイオンの電荷量の相殺によってもたらされる。
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