日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1979 巻, 8 号
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  • 檜山 行雄, 渡辺 訓行, 丸泉 琢也, 仁木 榮次
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 961-968
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    実験室系断熱消磁を応用した核四重極共鳴(NQR)スペクトロメーターは他のNQR測定法と比較して非常に高感度であるが消磁技術に問題があり多用されるにいたっていない。今回試作したスペクトロメーターは試料の移動をパルスモーターを使った機構を採用し,実験全体を自動的に行なうためのパルスジェネレーターを用いた。水晶発振による時間基準とパルスモーターによる消磁で毎周期の条件が一定となりスペクトルのベースライン(毎回測定されるNMRの信号強度そのものがベースラインとなる)は安定した。これによってプロトン緩和時間の長い試料における14N-NQRは容易に観測できた。しかし緩和時間の短いものに対しては依然消磁時間の問題が残った。
  • 堀田 紀好, 橋本 康裕, 渡辺 信淳
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 969-973
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ化黒鉛の低表面エネルギー性に着目し,これを活性炭を原料とする酸素電極のぬれ防止に利用することを目的として,アンモニアガスで活性化した木炭およびそのフッ素化生成物の水蒸気吸着等温線を測定し,試料の細孔構造,表面の性質などの観点から,活性炭のフッ素化過程にともなうはっ水性の変化について検討した。活性炭およびその低フッ素化物試料の水蒸気吸着等温線は典型的なS字型曲線で,試料中のミクロ孔が水蒸気の吸着に対して重要な役割を演じていることを知った。また,低圧側での吸着量はいずれも相対圧に比例し,たがいに類似の吸着挙動を示したが,高圧側では吸着容積,吸着熱などにいちじるしい相違を認めた。一方,高フッ素化物試料の吸着量は全測定範囲にわたって微量で,フッ化黒鉛の低表面エネルギーによる強いはっ水性を示した。以上の結果は活性炭を部分フッ素化することにより,活性炭を原料とする酸素電極のぬれ特性の改善に役立つものと判断される。
  • 東辻 健, 渡辺 昌
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 974-983
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電気乳化のように外部から電圧を加えるときには,界面の曲率の変化は拡散二重層にいちじるしく影響を与えることが理論的計算の結果わかった。すなわち,Debye-Huckel近似を用いて二重層に関するPoisson-Boltzmannの式から出発して単位界面積あたりの二重層の静電的自由エネルギーを計算し,これに基づいて界薗が平面から曲率Cの球面に変化するときの単位界面積あたりの自由エネルギー変化Δfe(C)を求めた。界面積とは独立に曲率の変化のみについて考えるならば,曲げ剛性率G°(C)=(∂Δe(C)/∂C)の正負を知れば界面に形成された二重層が界面を凹凸いずれの方向に曲げようとする傾向をもつかを知ることができる。すなわち,気/液,水銀/水および水/油型の球界面のようにG°(C)<0ならば二重層は界面を一層曲げようとするだろう。乳化現象は界面の曲率の増加をともなうので,G°(C)<0となる方向に界面が曲がるような乳化が起こりやすいはずである。そしてこの推論は,電位降下の大部分が気相中で起こるため二重層の効果の現われにくい気液系を除けば,電気乳化だけでなくかきまぜ法による乳化実験の結果とも一致している。
  • 村田 守康
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 984-989
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸[アルキルポリ(オキシエチレン)]イオンの硬水中での挙動の解明を目的とした。硫酸[ドデシルトリ(オキシエチレン)]=ナトリウム(R12O(EO)3SO3Na),水酸化ナトリウム,塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを含む溶液中での酸化鉄(Fe2O3)あるいは酸化チタン(IV)(TiO2)粒子への各種イオンの吸着量(t)とカルシウムイオン濃度との関係を検討した。一定濃度のR12O(EO)3SO3Naと水酸化ナトリウムが存在し,溶液のイオン強度が一定の場合に,溶液中の全陽イオン濃度に対するカルシウムイオン濃度の比(Cca2+/(Cca2++CNa))が増加するにつれて,Fe2O3あるいはTiO2へのΓR12O(EO)3SO3-はそれぞれ急激に大きな勾配で直線的に増加し,その後,より小さな勾配で直線的に増加した。一方,ΓNa+とΓCl-はCca2+/(Cca2++CNa+)の全領域に,わたって無視し得るほど小さかった。また,R12O(EO)3SO3-ca2+の約2倍であった。このようなR13O(EO)3SO3-とカルシウムイオンの協同的吸着の原因を検討するため,同様の溶液中のオレンジ-OTの可溶化量を測定した。オレンジ-OTの被可溶化量とΓR12O(EO)3SO3-のCca2+/Cca2++CNa依存性が平行関係にあったことから,1molのR12O(EO)3SO3-と0.5molのカルシウムイオンの選択的イオン対生成を議論した。Fe2O3あるいはTiO2のStern電荷密度(σ)をΓtから計算した。R12O(EO)3SO3-とカルシウムイオンが存在しない場合の電荷密度(σ0)にΓtから計算される電荷密度(σe)を加算してσを得た。Cca2+/Cca2++CNaの増加とともに,σは急激に増加し,最大値を示した。この特徴的な曲線は,主として,粒子表面上のR12O(EO)3SO3-とカルシウムイオンの電荷量の相殺によってもたらされる。
  • 小村 照寿, 高橋 光信, 今永 広人
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 990-995
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化スズ(IV)表面から放出されるH+の量および遷移金属イオンの吸着量を測定することによって,SnO2と金属イオンとの相互作用を研究した。Cu2+,Co2+,Ni2+,Mn2+などの金属イオンは表面ヒドロキシル基のプロトン解離を促進するが,[Fe(phen)3]2+,[Co(en)3]3+などの安定な錯イオンはほとんどSnO2と相互作用を示さない。金属イオンの吸着量とH+放出量との関係およびそれらのpH依存性から,表面における相互作用は,SnO2の酸塩基反応によって生成した負の表面サイトと水和金属イオンとの間の内圏型相互作用であろうと推定される。また置換活性なZn-en錯体の特異な挙動は,この系の平衡分布図に基づくならば,上の相互作用の機構と一致するものと考えられる。表面錯生成反応の観点に立つと,H+放出量と吸着量の測定データは,負の表面サイトと金属イオンの結合比が1/1および2/1の表面化学種が生成されることを示している。それらの表面反応の平衡定数を算出し,SnO2に対する金属イオンの反応性を比較した結果,表面酸化物イオンへの親和力と金属イオンの加水分解定数との間に相関性が認められた。
  • 新山 浩雄, 常木 英昭, 越後谷 悦郎
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 996-1002
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    12モリブドリン酸,その類似縮合酸素酸および12モリブドリン酸の金属塩の水素,一酸化炭素による還元性状について検討を加えた。酸類については水繁による還元は対応する酸化物(MoO3.MoO3-P2O5)より低温で起こるが,そのさいKeggin構造は破壊される。多くの金属塩のうち,銀塩,銅塩はとくに水素による還元を受けやすく,またその構造は酸素酸化により再生される。易還元性序列は銀塩>銅塩>ニッケル塩>酸,およびその他の塩であった。低温における還元は1陰イオンあたり6還元当量まで進行し,それは水溶液中でのポリ陰イオンの挙動とよく対応する。一酸化炭素により還元した場合の易還元性序列は,水素による序列とは異なり銅塩>ニッケル塩>酸>銀塊となった。これらの還元性序列と,その固体を触媒として用いたときの触媒能の序列との間にはよい相関性があり,還元性状の検討が接触酸化反応の理解に役立つことが示された。
  • 岸本 昇三, 吉本 裕, 中島 隆, 幡山 文一
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1003-1006
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素の酸化,エチレンの水素化反応に対して,高温熱処理によって失活したパラジウムリボンの触媒活性は,表面の酸素処理(250℃以上),あるいは酸化-還元などの化学的処理によりいちじるしく増加した。この原因は,単に前処理による触媒全衷面積の増加,あるいは表面組織のいちじるしい変化によっては説明できなかった。活性サイト発生の条件さらにこれらの熱安定性などを検討することにより,このサイトは前処理によって生成したある種の表面格子欠陥と推定された。さらにこれは冷加工によってつくられる活性サイトとは耐熱性の点で異なっていた。熱処理された新鮮なパラジウムによる一酸化炭素酸化反応の場合には,反応の初期につねに反応速度が徐々に増加する加速期が認められた。また,この長さは触媒の履歴,反応条件にいちじるしく依存した。加速期は反応それ自体による新しい活性サイト生成の過程と推定された。この見解は以前Baddourらによって担持パラジウム触媒による一酸化炭素酸化反応で示されたものとほぼ同じであった。
  • 渡辺 泰, 佐藤 太一
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1007-1012
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリオクチルアミン(R3N,TOA)およびトリカプリルメチルアンモニウム=クロリド(R3R'NCl,Aliquat-336)のベンゼン溶液により塩酸溶液からの塩化ジルコニウムの抽出が行なわれた。そして真空乾燥により有機相のベンゼンを除去して単離した錯体((R3NH)2ZrCl6および(R3R,N)2ZrCl6)が熱重量測定および示差熱分析により調べられた。さらに得られた結果を基にして,それら錯体およびそれぞれの熱分解生成物が赤外吸収スペクトル測定およびX線回折実験により検討された。その結果,各錯体の熱分解はのように進行することがわかった。ただし,t-ZrO2は準安定な正方晶形ZrO2,m-ZrO2は単斜晶形ZrO2を示す。なお有機相中に生成する錯体は八面体構造であると推定された。
  • 真鍋 和夫, 小川 誠
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1013-1019
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸ネオジム(III)-水和物および無水和物の熱分解の機構を,熱重量分析,示差熱分析,X線分析,赤外分光分析,質量分析および化学分析などの方法を用いて研究した。1分子の結晶水の離脱は約120℃で開始し一段脱水である。160℃以下で脱水した無水の酢酸塩はX線的に無定形状態であるが,170℃で結晶化が起こり低温型無水和物となる。さらに,低温型無水和物は約220℃で相転移をして高温型無水和物となる。両無水和物は,いずれも強い吸湿性を有し,生成後空気中で数時間放置すると7~8%の重量増加を生じ,同時に結晶構造も変化して一水和物となる。酢酸ネオジム(III)無水和物は,240~400℃の温度範囲でアセトンと二酸化炭素を放出して,炭酸酸化ネオジム(III)に分解するが,分解過程に二つの中間化合物を生成する。この二つの新中間化合物は,いずれも水に不溶であり,酢酸酸化ネオジム(III)の組成をもつと推定される。酢酸ネオジム(III)一水和物と無水酢酸で湿式合成した酢酸ネオジム(III)無水和物は,270℃で高温型無水和物へ相転移する。低温型無水和物から高温型無水和物への相転移の転移熱は,約2.8kcal/molであり,両無水和物はいずれも酢酸ネオジム(III)無水和物の新多形である。
  • 松野 昂士, 小石 真純
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1020-1026
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルシウム,ストロンチウムおよびバリウムの水酸化物または炭酸塩と二酸化硫黄を反応物として半回分式不均一系反応法により種々の粒子形状を有するアルカリ土類金属亜硫酸塩を合成した。粒子形状に与える反応温度の影響は顕薯であり,これらの調整によりカルシウム塩に関しては板状結品および球状,花弁状,不定形の集合体が,ストロンチウム塩に関しては果粒状結晶および不定形集合体が,バリウム塩に関しては短柱状,果粒状の結晶および不定形集合体が得られることが明らかになった。また,中心より放射状に成長した多数の板状結晶からなる亜硫酸カルシウム半水和物球状集合体の内部構造を走査電子顕微鏡観察により明らかにした。さらに,球状集合体の生成機構をその化学組成,断面構造およびCaCl2-Na2SO3系反応生成物の形状などから推察した。
  • 渡辺 信淳, 竹中 啓恭, 木村 正次郎
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1027-1032
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    黒鉛の低フッ素化率試料は粒子表面のフッ化黒鉛層と内部の未反応黒鉛とからなる。未反応黒鉛の構造ひずみの測定から,黒鉛のフッ素化は,反応界面付近できわめて大きな応力を生じつつ進行し,未反応黒鉛にひずみやクラックなどの構造破壊をもたらす反応であることが確認された。試料のESCAスペクトル測定から,フッ化黒鉛層表面には〓CFだけでなく,CF2,-CF3基が存在し,かつ,未結合炭素も存在することがわかった。試料の非常に大きな湿潤熱は,試料に存在する酸化能を有する比較的弱いCF結合のフッ素と湿潤液との反応による化学的発熱に起因する。化学的発熱の寄与を除去した湿潤熱はなおフッ化黒鉛より大きいが,これは未結合炭素の存在によるものであり,このため試料の比抵抗も絶縁体ではなく半導体領域の値となる。ESCAスペクトル強度,湿潤熱,比抵抗の反応率依存性の対応関係から,黒鉛のフッ素化は,わずかな未結合炭素を残しながら粒子端面から内部に向って進行し,残存した未結合炭素は反応中に順次フッ素化されると推察された。
  • 角谷 賢二, 渡谷 誠治, 端山 文忠, 直野 博光, 松本 恒隆
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1033-1038
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,添加法I(エピタキシアル成長法)および添加法II(水熱変性法)により作成したコバルト含有酸化鉄のコバルトの被着状態および磁気特性(保磁力)を検討し,つぎの諸結果を得た。添加法Iではγ一Fe2O3粒子表面に均一にコバルトを含むスピネル型の結晶が結晶成長することが形態的に確認されたが,添加法Iではコバルト含有量が増加しても形態的な変化は認められなかった。添加法Iの保磁力はコバルト含有量19.2wt%で1137Oe,添加法IIの保磁力はコバルト含有量13.4wt%で1690Oeまでほぼ直線的に増加した。また,保磁力は同一コバルト含有量では添潴法IIの方が添加法Iに比較して高かった。さらに,添加法Iの粒子表面に結晶成長したコバルトは熱処理により粒子内部に固溶し,その保磁力は添加法IIとほぼ同一レベルまで増加した。
  • 今井 弘, 伊藤 雅之, 五十君 好可, 白岩 正
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1039-1044
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(1-アセトニルエチリデン)-m-ならびに-p-アミノ安息香酸の銅(II)錯体〔5〕,〔6〕とそのメチルエステルの銅(II)錯体〔7〕,〔8〕は脱水メタノールならびにTHF中で相当する配位子と酢酸銅(II)一水和物とを反応させて合成した。得られた錯体を元素分析,熱分析,さらに分子量を測定して組成を決定したのち,磁気モーメントや電子スペクトルから立体配置を検討した。〔5〕,〔7〕,〔8〕は銅(II)と配位子とのモル比が1:2であった。固体状態やベンゼンまたはクロロホルム中において,〔5〕は平面正方型,また〔7〕,〔8〕はゆがんだ平面正方型であると考えられる。ピリジンやDMSO中において,〔5〕,〔7〕,〔8〕はこれらの溶媒分子が1個または2個結合して五または六配位錯体になるものと思われる。〔6〕は異常に低い磁気モーメソトとνcoo-の吸収によって,カルボキシラト基で橋かけした銅-銅間の結合が存在し,これによって多核錯体になっていることが明らかになった。遊離のカルボキシル基をもつ〔5〕は大気中の水分によって加水分解され,m-アミノ安息香酸銅(II)になるが,カルボキシラトになっている〔6〕,〔7〕,〔8〕は水分に対して安定であった。〔5〕の分解生成物から加水分解機構を解明した。
  • 渡部 正利, 松本 睦良, 長岡 照夫, 吉川 貞雄
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1045-1049
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    レオルニチンを2個配位したコバルト(III)錯体の可能な3種の異性体を合成し,それらの吸収スペクトル,CDスペクトル,PMRスペクトルおよび異性化平衡後の異性体のモル分率について報告する。合成した各異性体を異性化させることにより得られた3種の異性体は三組異性体であることを確かめた。また合成のさい[Co(D-orn)(L-orn)]+錯体が生成するので,アミノ酸のL→D転換が起こるものと考えられる。3種の異性体のCDスペクトルは配置効果と隣接効果曲線の和でよく表わすことができ,構造とCDスペクトルはよく対応することが明らかになった。同様の方法を[Co(L-2,4-dab)2]+(dab=ジアミノブチラートイオン)の3種の異性体のCDスペクトルにあてはめたところ同様の配置効果曲線が得られた。この錯体のPMRスペクトルは前に報告したプロトン化学シフトの傾向とよく一致した。それによっても4番目の異性体は[Co(D-orn)(L-orn)]+錯体であると推定された。[Co(D-orn)(L-orn)]+の各異性体を活性炭を用いて異性化平衡にすると,濃度分布trans(O):trans(Na):cis(Na)は0.09:0.57:0.34であり,trans(Na)異性体がもっとも多かった。これはいままで報告してきた[Co(N)3(O)3]異性体の分布と大きく異なることがわかった。[Co(D-orn)(L-orn)]+の異性体を異性化すると[Co(L-orn)2]+および[Co(L-orn)2]+異性体も生成し,そのモル分率においてtrans(O)異性体の濃度が小きかった。ひずみエネルギー計算をしたところ,その大きさはモル分率の大小をよく説明しうるものであった。
  • 増永 一三, 岡田 正義, 宮川 博雄
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1050-1054
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    微量のスズを水酸化トリウム共沈法により分離濃縮し,無炎原子吸光法で定量する方法を検討した。トリウムはスズの良好な共沈剤として働き,トリウム10mgを添加した試料溶液から,pH9でスズを共沈させ,2N塩酸で溶解して定容とした溶液の10μlを無炎原子吸光装置に供試することにより,試料溶液を直接供試する場合にみられるマトリックスの影響を除去して,スズを20~200ppbの範囲で定量することができた。スズの1%吸収感度は1.4ppbで,10回のくり返し実験で求めた精度は,いずれも標準偏差パーセントで約2%であった。検討した41種の共存イオンの中で,テルルにのみ100倍量の共存で負の干渉がみられた。また本法によりアルミニウム合金および黄銅中の微量スズの定量を試みたところ,JIS法による結果とよく一致した。
  • 矢ケ部 憲児, 松田 好伸, 南 晋一
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1055-1060
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シュウ酸水溶液中に[Pd(C2O4)m]2(m-1)-なるオキサラトパラジウム(II)錯陰イオンが存在すれば,有機溶媒相中の高分子量アミンによる抽出の可能性があると考え,シュウ酸水溶液からトリオクチルアミン-ベンゼン溶液によるパラジウム(II)の液-液抽出実験を行ない,パラジウム(II)の抽出挙動および抽出化学種の検討を行なった。トリオクチルアミンによる抽出法を用いたモル比法,連続変化法および傾斜比法の結果は,いずれもパラジウム(II)化学種は有機溶媒相中で(R3NH)2Pd(C2O4)2として存在していると推定できた。パラジウム(II)の濃度変化法,分配比のpH依存性およびトリオクチルアミン濃度依存性の検討の結果からも有機溶媒相中のパラジウム(II)化学種は(R3NH)2Pd(C2O4)2であると結論した。
  • 原 秀樹, 太田 直一
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1061-1065
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マンガン(II)とコバルト(II)のべソゾィルアセトン(Hbza)-四塩化炭素抽出時における2,2'-ビピリジン(bpy)の協同効果と分離のための条件を検討した。マンガン(Ir)をベソゾイルアセトン-四塩化炭素だけで抽出するときの半抽出pHは8.3程度で,コバルト(Ir)のそれ(7.5)と大差がないため,両者を分離することはできない。しかし,2,2,-ピピリジンを共存させ,その量を増してゆくとマンガン(II)の抽出率は増大するが,コバルト(II)のそれははじめ増加するものの,極大に達したあと急速に低下し,協同効果とマスキングとが認められた。マンガン(II)とコバルト(II)を含む0.1mol/l塩化ナトリウム溶液を,Hbza(0.1mol/l)-bpy(0.5mol/l)-四塩化炭素溶液によりpH7.5で抽出すると,マンガン(II)が有機相に抽出されコバルト(II)は水相に残る。この場合のマンガン(II)の抽出化学種は配位飽和錯体Mn(bza)2・(bpy)であり,Mn(bza)2からの付加錯体生成定数は104程度である。コバルト(II)もCo(bza)2・(bpy)Co{(bca)2からの付加錯体生成定数は104程度}を形成するが,上記の条件では水相中で,有機相に抽出されにくいCo(bpy)n2+(n=2~3)の形成が優先するものと思われる。
  • 花屋 馨, 工藤 英昭, 郷家 一夫, 今泉 真
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1066-1070
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-シクロヘキセン-1-オールおよび1-アルキル-3-シクロヘキセン-1-オール誘導体の立体配座を検討する目的で,それらの赤外部におけるOH伸縮振動スペクトル(〓OH)を四塩化炭素の希薄溶液で測定した。3-シクロヘキセン-1-オール誘導体〔1〕~〔3〕では,一般に3612~3615と3623~3628cm-1に2本の吸収を示したが,ヒドロキシル基の隣接位にイソプロピル基をもつトランス体〔4〕は,そのほかに3634cm-1にも吸収を示し,シス体〔5〕では,3601,3623および3634cm-1の3本の吸収を示した。また,1-アルキル-3-シクロヘキセン-1-オール誘導体〔6〕~〔10〕では.一般に3599~3603と3616~3619cm-1に吸収を示したが,ヒドロキシル基の隣接位にイソプロピル基を有し,それがヒドロキシル基とトランス〔11〕の場合には3615と3624cm-1に吸収が見られた。以上の結果から,これらの化合物はおもに半イス形の立体配座で存在し,ホモアリル位に置換基を有する場倉はアキシアル(αx)よりエクアトリアル(eq)配座が安定であり,そのeq配座への配向性はヒドロキシル基よりアルキル基が,また,メチル基よりイソプロピル基が大きく,立体的に余儀なくαx配座をとるヒドロキシル基は二重結合のπ電子と分子内相互作用しているものと推定した。
  • 染川 賢一, 植村 寿子, 下茂 徹朗, 隈元 実忠
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1071-1078
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-ピリドソと数種のN-置換マレイミドとの熱反応で,Michael(M)反応生成物およびDiels-Alder(DA)生成物とともにMichaelおよびDiels-Alder(MDA)反応生成物を得た。N-メチル-2-ピリドンを用いた反応では多くのendo-およびexo-DA付加物が得られた。MDA生成物はM反応後にDA反応が起こって生成していることがわかった。また速度論的解析を行ない,つぎのことを知った。マレイミドのN-位の電子求引性のより大きな置換基は,DA反応よりもM反応をより加速するし,exo体とendo体の生成比を高める。DA反応の活性化エネルギーは,通常の逆Diels-Alder反応のそれに近い24~31kcal/molであり,極性溶媒や酢酸を用いたとき大きくなった。これらの異常な現象を,本反応の独特な双極子相互作用で説明した。
  • 山縣 知之, 石井 忠浩, 高仲 善明, 半 田隆
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1079-1084
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    芳香族ポリウレタン樹脂の光劣化におよぼす酸素の影響を調べた。その結果,紫外線による光劣化速度は一重項酸素雰囲気下の方が三重項酸素雰囲気下より非常に大きかった。また,一重項酸素と三重項酸素存在下で安定剤を添加したときの光劣化の初期速度は安定剤の+一重項酸素の捕捉能と密接な関係があることがわかった。つまり,一重項酸素を効率よく捕捉する安定剤を添加すればその捕捉能に応じて光劣化を遅延させることができた。しかしながら一重項酸素の効率のよい捕捉剤も長時間の光照射でその捕捉能は消滅した。
  • 山縣 知之, 石井 忠浩, 高仲 善明, 半田 隆
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1085-1091
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ウレタン化合物の紫外線による影響の研究の一環として4-メチル-m-フェニレン=ジイソシアナート(TDI)のジメチルウレタンについて,光反応の挙動を蛍光スペクトル,UVスペクトル,励起スペクトル,NMRなどで測定した。また反応生成物を単離してこの反応機構を推定した。その結果,ジウレタンも初期過程ではモノウレタンと同様に転位反応が規則正しく進行し3,アミノ転位物を与え,長時間の光照射でラジカルが生成し,種々の化合物を与えていることがわかった。
  • 大道 裕司, 黒川 秀基
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1092-1096
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    DL-マンデル酸(DL-MA)とアミン類との塩について優先晶出法による分割の可能性を検討した。そして各アミン塩のラセミ体と活性体のIR,溶解度,融点を比較することから,それらがラセミ混合物,ラセミ化合物,ラセミ固溶体のいずれを形成しているかを検討した。結果として,ジイソプロピルアミン(DIPA)塩はラセミ混合物,ジシクロヘキシルアミン塩とジフェニルアミン塩に関しては,ラセミ固溶体であり,またブチルアミン塩,アニリン塩ジエチルアミン塩およびその他の塩に関してはラセミ化合物であることがわかった。そしてジエチルアミン塩,DIPA塩,ジシクロヘキシルアミン塩,ジフェニルアミン塩について分割実験を行ないDIPA塩についてのみ分割可能であるという結果を得た。DL-MA・DIPA塩の分割において,分割温度と過飽和度が分割に与える影響についても検討した。過飽和度116~125%において光学純度の高い光学活性体が得られた。
  • 林 隆之, 徳光 隆雄, 羽坂 則子, 宮崎 貴子
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1097-1100
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-ベンゾイル-3,6-ジメチル安息香酸[1]を濃硫酸中で加熱すると,1,4-ジメチルー9,10-アントラキノン[2]のみが得られるが,ポリリン酸中で100~130℃に加熱すると,[2]のほかに赤澄色針状晶[3]と白色微晶[4]が得られ,150。Cに1時間加熱すると[4]は得られないが,[2]と[3]'の収率はともに最高になることを見いだした。[3]および[4]は,そのMS,IR,NMR,UVスペクトルと化学的挙動からそれぞれ,6,12-ジメチルー5-オキンー10-フェニルー9H-ベンゾシクロオクタ[8,7,6-4]アントラセンー11,10-カルボノラクトン[3]および4,4',7,7-テトラメチルー3,3'-ジフェニルー3,3なオキシジフタリド[4]であると推定した。またこれらの生成機構について考察した。
  • 菊池 康男, 大島 祥男
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1101-1105
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高分子電解質の水素イオン濃度による分子鎖の形態変化および分子鎖の屈曲性の相違,とくに屈曲性の大きい硫酸エステル化ポリビニルアルコールカリウム塩(PVSK)に着目して,キトサン水溶液,高分子弱電解質で,分子鎖の屈曲性の小さいカルボキシメチルセルロース水溶液(CMC)および強電解質であるPVSK水溶液の3種の高分子電解質から,水に難溶性の高分子電解質複合体(PEC)を異なった水素イオン濃度および滴下順序で合成した。これらの高分子電解質は,水素イオン濃度によりその解離度および分子鎖の形態の変わることが予想されるが,水素イオン濃度,滴下順序を変えて生成PECの生成量,分子構造および物性について比較検討した。水素イオン濃度の相違により,生成PECのIRスペクトル,3成分の組成比,水による膨潤の度合およびトルイジンブルーによる着色がいちじるしく異なっていた。このことからCMC,PVSKおよびキトサンの高分子電解質が,溶液の水素イオン濃度に応じて,解離度,分子鎖の形態の変化するためであることが明らかとなった。しかし滴下順序の相違による違いはあまり認められなかった。また生成PECの凝血形成についても検討を加え,キトサンとPVSKの二物質からなるPECとCMC,PVSKおよびキトサンの三物質からなるPECは,いずれも抗凝血性であることが明らかとなった。さらに屈曲性の小さいカルボキシメチルデキストラン,デキストラン硫酸ナトリウムおよびキトサンからの生成PECと比較して成分の高分子電解質の屈曲性,分子鎖の形態変化の違いが,生成PECの組成,分子鎖の形態に大きく影響することが推定された。
  • 佃 康夫
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1106-1108
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The Refractive and reflective indeces of Y2O3 sintered pieces were measured. The Y2O3 specimens are transparent and have a 100% relative density. A tungsten lamp, sodium discharge lamp or He. Ne laser was used as the sources of light for measuring the refractive indeces. The light from these sources in the wavelength range of 0.44-0.67 μ m was polarized with a Polaroid HN-38 polarizer to obtain Brewster's angle θ. The refractive indeces were calculated from the tan θ equation. A Hitachi infrared spectrophotometer, type 215, was used to measure the reflective indeces of Y2O3 specimens. A glass plate with a deposited Al layer on its face was used as the reference material with a 100% reflective index. The ND of the Y2O3 specimens was 1.910 ± 0.006. Furthermore, the relation between refractive index n and wavelength λ (μ m) was given by Cauchy's equation as follows: 9.33 x10-3 n=1.884+ λ 2 The reflective indeces of Y2O3 specimens were 10% between 2.5-8 μ m. The indeces of the specimens, however, decrease at wavelength of more than 8 μ m and reached 3.3% at 13 μ m.
  • 袖沢 利昭, 兼子 章, 野崎 文男
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1109-1111
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fe2O3-CuO-Al2O3 catalyst was found to be excellent in both activity and stability to heat in NO-CO reaction. A plausible reaction mechanism was tentatively proposed on the basis of informations obtained in a pulse-reaction method. The reason why the catalytic activity was enhanced by the mixing of Fe2O3 with CuO was discussed.
  • 田中 幹夫, 永 井俊, 三木 瑛一, 水町 邦彦, 石森 達二郎
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1112-1114
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Bis (2, 2'-bipyridine)- and bis (1, 10-phenanthroline)carbonatoruthenium (II) complexes were syn-thesized by refluxing the corresponding dichloro complex in water with traces of formic acid, and passing the solution through an anion exchange column of carbonate form in order to remove chloride ions and to form the desired complex. Both complexes were dark violet, and diamagnetic. Electronic spectra of the complexes in dichloromethane and absorption curves of their crystalline powders were measured. The complexes were found to be nonelectrolytes in dichloromethane. The IR data indicated that the carbonato group in the complexes is coordinated to a ruthenium as a bidentate ligand.
  • 上田 穣一
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1115-1117
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Semimethylxylenol Blue reacts with zirconium to form a water-soluble red complex. The colored solution has an absorption maximum between 578 and 581 nm and shows a definite absorbance over the pH range from 1.4 to 2. O. The reaction is very sensitive and the sensitivity of the determination is 9.8 x 10-4 μ g Zr/cm2 for log (I/I)=O.001 at 579 nm, and Beer's law is obeyed up to 0.8 μ g/ml of zirconium. Of 44 diverse ions examined, gallium, bismuth (III), hafnium, thorium, iron (III) and fluoride interfere with the determination. But the effect of iron (III) is eliminated with ascorbic acid and the interference from bismuth (III) can be also removed by filtration of its oxide compound precipitated.
  • 織戸 義郎, 今井 寿美, 丹羽 修一
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1118-1120
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The asymmetric hydrogenation of methyl pyruvate to (+)-methyl -methyl lactate using Pt-C catalyst modified with cinchonidine was studied. Preheating of the catalyst at 200-400° C in hydrogen atmosphere before modification with cinchonidine was found to be necessary for high asymmetric-inducing activity to be acquired. The catalyst thus prepared had high asymmetric selectivity (optical yield=78.7%) in ethanol containing a small amount of cinchonidine.
  • 横井 勝美, 松原 義治
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1121-1123
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6-exo-Acetoxy-exo-isocamphane [ 5 ] was stereospecifically given in 18% yield (GLC; isolated yield was 7.5%) by Bertram-Walbaum hydration of camphene [1].6-exo-Hydroxy-exo-isocamphane [ 6 ] was obtained by hydrolysis of [ 5 ], and 6-endo-hydroxy-exo-isocamphane [ 8 ] was derived by dehydrogenation of [ 6 ], followed by LiAlH4 reduction. The structures of [5 ]-[8 ] were assigned on the basis of their MS, IR, NMR spectra and their authentic data. Compound [ 6 ] has such elegant odor as nojigiku alcohol [10], but [ 8 ] has an odor like borneol.
  • 石崎 紘三, 坂田 勝彦, 神力 就子, 池畑 昭
    1979 年 1979 巻 8 号 p. 1124-1126
    発行日: 1979/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Nitrogenous substances produced by the ozonization of azo dyes [ 1 ]-[ 5 ] in aqueous solution were investigated. Nitrogen gas was found to be the main product. The yields of nitrogen gas, differing from one another due to the variety of dyes, were 65-92% based on the total nitrogen of azo group and pyrazole ring. Only minor amount of nitrate was produced. In the case of [ 2 ] in addition to nitrate, a small amount of ammonium ion was produced. The qualitative analyses of nitrogenous residue after the ozonization by means of spot tests showed the absence of nitrosamine, C-nitroso, nitro, and amine compounds.
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