理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
31 巻, 1 号
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原 著
  • 鈴木 康裕, 加藤 秀典, 田邉 裕基, 石川 公久
    2016 年 31 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕軽度神経障害合併糖尿病患者(mild DPN)を対象とし,重心動揺計による開眼・硬面上(IPS)と閉眼・軟面上(MIPS)の立位2条件にてバランス能力を評価することで,軽度のバランス能力低下の有無と評価法による違いを検討した.〔対象〕糖尿病多発神経障害なし(non-DPN)群27名およびmild DPN群16名とした.〔方法〕IPSとMIPSのバランス指標にて,両群の比較を行った.また対象者全員の振動覚とバランス指標の比較を行った.〔結果〕両群間の比較においてMIPSのみmild DPN群で有意に低下していた.振動覚はMIPSのみ有意な相関関係を示した.〔結語〕mild DPNにおいてもバランス能力の低下が存在し,深部感覚の低下が関与している可能性が示唆された.
  • 生田 啓記, 井尻 朋人, 鈴木 俊明
    2016 年 31 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝関節屈曲角度が変化した際に膝関節伸展等尺性収縮における大腿四頭筋の筋活動の変化を明らかにすることとした.〔対象〕健常者10名の利き足とした.〔方法〕膝関節伸展等尺性収縮は膝関節0°,20°,60°,90°屈曲位にて実施した.強度は各角度における最大等尺性収縮の40%とした.筋電図測定は内側広筋斜頭(VMO),長頭,大腿直筋,外側広筋(VL)を記録し,筋電図積分値を求めた.各角度の値において0°の時の値で除した相対値にて比較した.〔結果〕膝関節90°屈曲位における相対値は,VMOでは20°,60°と比較して,VLでは,20°と比較して有意に高い値を示した.〔結語〕VMOの筋活動を促すには,膝関節90°屈曲位での運動が有効である可能性がある.
  • ─即時効果判定─
    川井 謙太朗, 舟崎 裕記, 林 大輝, 加藤 晴康, 沼澤 秀雄
    2016 年 31 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕投球障害肩における肩関節2nd内旋制限に対する3種類のセルフストレッチ方法の有効性を比較検討した.〔対象〕投球障害肩を有する男性の野球選手48例とした.〔方法〕APS法,CB法,IRS法における疼痛によるストレッチ不可率を比較した.次に,全てのストレッチが可能であった症例28名を3群に分け,ストレッチ前後において,後捻角の影響を除いた2nd補正内旋角度を計測し,各群間で比較した.〔結果〕ストレッチ不可率はAPS法が最も有意に低かった.2nd補正内旋角度はストレッチ前では3群間において有意差はなかったが,ストレッチ後では,APS法,CB法がIRS法に比べて有意に増大していた.〔結語〕APS法は投球障害肩に対する最も効果的なセルフストレッチ方法である可能性が示唆された.
  • ─疾患別比較検討─
    藤谷 亮, 石井 雄大, 高橋 直宏, 出口 幸一
    2016 年 31 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕単回のWBVトレーニングが各疾患の歩行能力に与える影響を検討することを目的とした.〔対象〕デイケアに通所しているPD, CVA, MD利用者,それぞれ各10名を対象とした.〔方法〕各疾患群に対して50Hz,1分間のWBVトレーニングを行い,トレーニング前後で10m歩行の計測を行った.得られたデータから歩行速度,歩幅,歩行率を算出した.〔結果〕PD群,CVA群はMD群と比較し,WBVトレーニング前後の差で,有意に歩行速度が増加した.またPD群,CVA群では異なる歩行改善効果を示した.〔結語〕各疾患に対するWBVトレーニングの歩行改善にもたらす効果が異なることが示唆された.
  • ─質的研究による検討─
    青木 拓也, 上出 直人, 高橋 香代子, 小澤 敏夫
    2016 年 31 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕維持血液透析(HD)患者の生活の質(QOL)について,質的研究手法で検討した.〔対象〕入院中のHD患者15名とした.〔方法〕HD患者に半構造化面接を行った.面接内容を階層的クラスター分析にて解析し,研究者間で最適なクラスター数と各クラスターの意味を議論し,決定した.〔結果〕階層的クラスター分析の結果,①趣味の継続性,②食への影響,③経済状況,④他者との交流,⑤生活機能と生活環境,⑥環境との相互作用,の6つのクラスターが得られた.〔結語〕HD患者が認識しているQOLの内容として,趣味や経済状況については既存の疾患特異的QOL尺度には含まれていない要素として重要であると考えられた.
  • 陣内 達也, 平瀬 達哉, 井口 茂
    2016 年 31 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕通所リハビリテーション利用者を対象に身体機能と認知機能が転倒に及ぼす影響について検討した.〔対象〕通所リハビリテーション利用者60名.〔方法〕Timed up and Go (TUG),5m歩行時間,5回椅子起立テスト,Mini Mental State Examination,数唱,Trail Making Test partA (TMT-A),転倒リスク数を評価した.対象者を過去1年間の転倒の有無により,転倒群,非転倒群に分け各評価項目について群間比較検討した.〔結果〕転倒群でTMT-A,TUG,転倒リスク数は有意に高値であり,TMT-Aについては転倒との関連を認めた.〔結語〕転倒にはTMT-Aの関連が強く,注意遂行機能に着目した転倒予防アプローチが必要であると示唆された.
  • 戸田 晴貴, 長野 明紀, 羅 志偉
    2016 年 31 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕筋骨格シミュレーションを用いて,健常若年男性と女性の歩行中の下肢筋張力の大きさの違いを明らかにすることとした.〔対象〕20歳代の若年者(男性10名,女性10名)とした.〔方法〕3次元動作解析装置と床反力計を用いて,歩行中の床反力とマーカー座標を計測した.得られたデータをもとに筋骨格シミュレーションを用いて下肢筋の筋張力を推定し,男性と女性の違いを比較,検討した.〔結果〕若年女性は,男性と比較し立脚期中の大殿筋,中殿筋,小殿筋,大腿広筋群の筋張力が増加していたが,ヒラメ筋の最大値が減少していた.〔結語〕若年女性は,男性と比較し股,膝関節周囲の単関節筋を過剰に用いて歩行を行っていることが示唆された.
  • 石井 貴弥, 原 毅, 井川 達也, 四宮 美穂, 西村 晃典, 出浦 健太郎, 櫻井 愛子, 草野 修輔, 三浦 弘規, 久保 晃
    2016 年 31 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕周術期頭頸部がん患者の手術前,手術2週後,手術1ヵ月後の手術側肩甲帯機能,主観的機能障害の経時的変化と両者の関係を検討することとした.〔対象〕周術期頭頸部がん患者15名(平均年齢56.7 ± 11.1歳,男性13名)とした.〔方法〕肩関節自動外転可動域,矢状面立位姿勢における耳孔,肩峰前後距離および頸部屈曲角度を計測した.主観的機能障害は,頸部郭清術後機能評価法を用いた.〔結果〕肩関節自動外転可動域と肩峰前後距離では,手術前と手術2週後および手術前と手術1ヵ月後に有意差がみられた.また手術2週後の肩峰前後距離が多くの主観的機能障害と有意に関連していた.〔結語〕頸部郭清術後の主観的機能障害をアウトカムにした場合,肩関節自動外転可動域に加えて立位姿勢を含めた多角的評価の必要性が示唆される.
  • 木下 和昭, 橋本 雅至, 北西 秀行, 米田 勇貴, 中 雄太, 大八木 博貴, 井上 直人, 植田 篤史, 田頭 悟志, 福本 貴典, ...
    2016 年 31 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕座位体幹荷重支持機能テスト(TRT)による評価尺度と体幹筋機能との関係を検討した.〔対象〕高校男子サッカー部員と大学アメリカンフットボール部員の計80名とした.〔方法〕体幹筋機能の評価はFront Bridge Test(FB),Side Bridge Test(SB)を用いた.〔結果〕TRTとFBおよびSBとの間に有意な相関は認められなかった.しかし,TRTの測定値の大きい優位側と小さい劣位側で比較すると,FB,SBともに優位側で姿勢保持の時間が有意に長かった.〔結語〕個人内のTRTの強度差がブリッジ動作の左右の姿勢保持時間の違いに影響を与える一要因である.
  • 篠塚 敏雄, 石嶋 宏之, 齊藤 和律
    2016 年 31 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕筋力低下,歩行障害,認知機能低下を有する利用者に対して転倒予防トレーニングを実施し,その効果を明らかにすることとした.〔対象〕通所リハビリテーション利用者55名とした.〔方法〕平行棒内にてスタッフと「しりとり」しながら20cm台を昇降する動作と椅子座位から5秒で立ち上がり,5秒で座る動作との組合わせを10回行った.介入前後の体重,5m最大歩行速度,股屈伸筋力,膝屈伸筋力,足底背屈筋力,認知を比較した.〔結果〕有意な介入効果が,タイプⅠの危険率0%で歩行速度,股屈曲・膝伸展筋力,足底屈筋力,足背屈筋力(同1%未満),膝屈曲筋力(同2%未満),認知(同5%未満)だった.〔結語〕通所リハで行った転倒予防トレーニングは下肢筋力・歩行速度・認知面の向上という効果が見られた.
  • 齋藤 由香里, 菅沼 一男, 齋藤 孝義, 金子 千香, 菅沼 真美
    2016 年 31 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕前期および後期高齢者の運動機能について検討することとした.〔対象〕地域に在住する高齢者30名とした.〔方法〕前方最大1歩幅,側方最大横幅,つまさき立ち,座位での足底背屈テスト,座位足開閉テスト,3mジグザグ歩行テスト測定を行った.〔結果〕前方最大1歩幅,側方最大横幅,つまさき立ちにおいて前期および後期高齢者において差が認められ,座位での足底背屈テスト,座位足開閉テスト,3mジグザグ歩行テストで認められなかった.〔結語〕前期および後期高齢者で差が認められなかったことから座位での足底背屈テスト,座位足開閉テスト,3mジグザグ歩行テストは年齢による影響を受けることの少ない指標であると考える.
  • 石井 貴弥, 原 毅, 井川 達也, 四宮 美穂, 西村 晃典, 出浦 健太郎, 櫻井 愛子, 草野 修輔, 三浦 弘規, 久保 晃
    2016 年 31 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕頭頸部がん患者の手術後早期の肩関節外転可動域(外転ROM)の改善率が退院後のQuality of Life(QOL)に与える影響を明らかにする.〔対象〕頭頸部がん患者28例36肢(男性24名,女性4名,平均年齢58.5 ± 12.0歳).〔方法〕手術前と手術後1ヵ月の外転ROM改善率のカットオフ値を算出し,改善群と非改善群に分類した.さらに外転ROM,QOL評価を,手術後3ヵ月,6ヵ月の時期に実施した.統計学的検討は,群間と時期を2要因とした混合モデル2元配置分散分析を使用した.〔結果〕外転ROMとQOLの身体の項目に,群間と時期に有意な主効果が認められた.〔結語〕手術後早期の外転ROMの改善はQOLの長期的経過にも影響を与えることが明らかとなった.
  • ─上肢運動機能低下を呈した一症例─
    糸谷 圭介, 糸谷 素子, 諸藤 久和, 加藤 順一
    2016 年 31 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕訪問リハビリテーション(以下:訪問リハ)における在宅利用者に対する上肢機能評価の有用性を検討することとした.〔対象〕左手関節骨折を受傷した高齢女性85歳とした.〔方法〕上肢の運動機能について,TraceCoder®を用いて打点検査,トレース検査および指標追跡検査を評価した.TraceCoder®によるトレース検査および指標追跡検査の評価項目は,ズレ量,筆圧,速度,総面積とした.評価は初日および3ヵ月後に実施した.〔結果〕訪問リハを実施3ヵ月後には,打点検査の筆圧,トレース検査および指標追跡検査の速度および総面積に改善が認められた.〔結語〕TraceCoder®を用いることで,在宅でも客観的に上肢の運動機能や能力の評価が可能となり,訪問リハの効果検証や訪問リハの動機づけに対して有用なツールであることが示された.
  • 沼野 崇平, 浦辺 幸夫, 前田 慶明, 笹代 純平, 藤井 絵里, 岩田 昌, 河原 大陸, 木下 恵美
    2016 年 31 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,サイドジャンプ着地動作時の膝関節運動を分析することである.〔対象〕健常女性11名とした.〔方法〕サイドジャンプ距離を身長の80%,高さを30cm,足幅を身長の30%とし,右方向へのサイドジャンプ着地動作を行った.接地時から膝最大屈曲時までの左右の膝関節屈曲,外反角度を三次元動作解析装置にて算出した.床反力は接地後10Nを越えてから膝関節最大屈曲時までを,床反力計で記録した.〔結果〕すべての対象で左下肢が先に接地した.右膝関節は左膝関節よりも接地時の屈曲角度は接地時,最大屈曲時ともに有意に小さく,外反角度は接地時で有意に大きかった.〔結語〕右膝関節で着地した時の膝屈曲角度は左下肢より有意に小さく,また膝外反角度は有意に大きくなることから,膝前十字靭帯損傷のリスクが高いことが示唆された.
  • 二宮 秀樹, 木村 和樹, 久保 晃
    2016 年 31 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕糖尿病多発神経障害(以下DP)が2ステップ値に及ぼす影響を明らかにすること.〔対象〕2014年10月~2015年3月の間に研究協力2施設の糖尿病内科にて,入院または外来通院中の独歩可能な糖尿病患者104例とした.〔方法〕2ステップテストを用いてDPの有無の2群で2ステップ値を比較した.〔結果〕DPの有無で2ステップ値に有意差が認められ,DP有群では有意に低値を示した.〔結語〕2ステップ値を用いてDPによる運動機能障害の評価が可能である事が示唆された.
  • 和田 隆, 小野 恵, 外西 正博, 有川 順子, 新保 直規, 木山 良二, 大渡 昭彦, 大重 匡, 吉元 洋一
    2016 年 31 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕虚弱高齢者の生活空間と身体機能が転倒に与える影響について検討することである.〔対象〕主たる移動手段が歩行である要支援者24名,要介護者25名とした.〔方法〕対象者の過去1年以内の転倒歴に対する,生活空間の広さ(life-space assessment, LSA),歩行速度,Timed Up and Go test (TUG),握力,Barthel indexの影響を,ロジスティック回帰分析を用い分析した.〔結果〕虚弱高齢者の転倒にはLSA とTUG が関連することが示され,TUG所要時間が長いほど,生活空間が広いほど転倒リスクが有意に高かった.〔結語〕虚弱高齢者の転倒リスクを把握するためには身体機能に加え,生活空間を把握することが必要である.
  • 照井 駿明, 吉田 英樹, 原 幹周, 片石 悠介, 花田 真澄, 谷脇 雄次, 前田 貴哉, 佐藤 公博
    2016 年 31 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究の目的は,NMESとストレッチングの同時施行が筋伸張性を短時間で向上させ得るか否か検討することとした.〔対象〕健常者15名とした.〔方法〕全対象者には,両側の下腿三頭筋への相反抑制に基づくNMESと同筋のストレッチングを同時に行う条件(同時施行)とストレッチングのみを行う条件(コントロール)を行った.両条件でのストレッチングは開始直前と開始5分後および15分後に実施し,その際の足関節背屈角度を測定した.〔結果〕コントロールでは,3時点間での足関節背屈角度に違いは無かった.一方,同時施行では,開始直前よりも開始5分後および15分後での足関節背屈角度が有意に増加したが,開始5分後と15分後では差が無かった.〔結語〕NMESとストレッチングの同時施行は筋伸張性を短時間で向上させる.
  • ─脛骨深筋膜間の計測に関する信頼性の検討─
    村野 勇, 蛯原 文吾, 瀧原 純, 川上 裕貴, 秋田 哲, 橋本 貴幸, 若狭 伸尚, 倉持 龍彦
    2016 年 31 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕足関節伸筋支帯領域の前区画内において,前脛骨筋腱外側縁を指標に脛骨遠位端前縁と深筋膜間距離の計測方法の信頼性を評価した.〔対象〕整形外科的既往の無い,健常成人男性10名20肢とした.〔方法〕信頼性の評価には,級内相関係数およびBland-Altman分析を用いた.〔結果〕級内相関係数は検者内で0.93,検者間で0.92であった.Bland-Altman分析の結果,検者内,検者間とも系統誤差は認められず,最小可検変化量の95%信頼区間では,検者内で0.99 mm,検者間で1.16 mmであった.〔結語〕本測定方法は,高い信頼性を示すものの,さらなる再現性および妥当性の向上に繋がる設定方法の検討が期待される.
  • 勝又 泰貴, 竹井 仁, 堀 拓朗, 林 洋暁
    2016 年 31 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕筋再教育運動(運動)が筋膜リリース(Myofascial Release:MFR)の効果に与える影響を経時的に検討した.〔対象〕両脚のハムストリングスにMFRを行う群,MFR後に大腿四頭筋の運動を行う群,MFR後にハムストリングスの運動を行う群に準無作為に10名ずつ分けられた,自動下肢伸展挙上角度70°未満の健常成人30名とした.〔方法〕自動・他動下肢伸展挙上角度,膝関節屈曲・伸展トルク値を介入前,介入後,2日後,4日後,6日後に測定した.〔結果〕ハムストリングスの運動を行った群が最も伸張性および屈曲トルク値の改善が大きく,6日後まで持続した.〔結語〕MFRにより筋筋膜の制限を解消し滑走性を改善した上で,運動を行い正しい収縮効率を学習したことが,持続性のある改善効果を生んだと考える.
  • 瓦田 恵三, 中丸 宏二, 波戸根 行成, 相澤 純也, 小山 貴之, 松本 高志郎, 橋本 明秀, 来間 弘展, 新田 收
    2016 年 31 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕頭頸部屈曲運動を誘導するための専用機器を用いたエクササイズが頸部痛患者のアウトカムに及ぼす影響を分析することとした.〔対象〕非特異的頸部痛を有するボランティア8名(男性5名,女性3名)とした.〔方法〕全対象に機器を利用した頭頸部屈曲エクササイズを自己管理下で1日に2回,4週間にわたって実施させた.〔結果〕頸椎の自動可動域(伸展,側屈,回旋),Numerical Rating Scale,日本語版Neck Disability Indexにおいて有意な改善が認められた.〔結語〕専用機器を使用した自己管理下での頭頸部屈曲エクササイズが,非特異的頸部痛患者の主観的および客観的アウトカムに有効であることが示唆された.
  • 齋藤 孝義, 菅沼 一男, 金子 千香, 斎藤 由香里, 丸山 仁司
    2016 年 31 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高齢者を前期高齢者群,後期高齢者群に分け,さらに「つまずき」が原因で転倒した転倒群,非転倒群に分け運動機能と転倒との関係を検討すること.〔対象〕自立歩行が可能な65歳以上の高齢者30名とした.〔方法〕前期および後期高齢者群と転倒群・非転倒群に分類し,運動機能について2元配置分散分析を行った. 〔結果〕最大ステッピング幅は転倒群,非転倒群間および前期および後期高齢者間で差を認めた.足の底背屈,つま先立ちは,転倒群,非転倒群間で差を認めたが,前期および後期高齢者間では差を認めなかった.〔結語〕「つまずき」が原因で転倒する高齢者の転倒予測の評価として,底背屈テストは,年齢による影響が少ない評価指標であると考えられた.
  • 文野 住文, 鈴木 俊明, 岩月 宏泰
    2016 年 31 巻 1 号 p. 117-125
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕異なる収縮強度の運動イメージが,脊髄運動神経の興奮性と自律神経活動に与える影響を検討した.〔対象〕健常者10名であった.〔方法〕測定手順はRest1試行,50%Image1試行,Rest2試行,50%Image2試行,Rest3試行の順にF波とLF/HF比を測定した.以上を50%条件とし,100%条件も同様に行った.〔結果〕2条件共に,Image1とImage2試行時のF波出現頻度が,Rest1試行時より有意に増加した.50%Image1と50%Image2試行時の振幅F/M比が,Rest1試行時より有意に増加した.LF/HF比は,2条件共にImage1試行時において,Rest1試行時より有意に増加した.Rest1試行を1としたF波とLF/HF比相対値は,2条件間で差はなかった.〔結語〕50%と100%運動イメージは,脊髄運動神経の興奮性と心臓交感神経活動を増加させ,その変化は2条件間で差はなかった.
  • 石川 康伸, 平井 達也, 吉元 勇輝, 若月 勇輝, 藁科 弘晃
    2016 年 31 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕視覚情報の位置が健常成人の立位制御に及ぼす影響を検討した.〔対象〕21名の健常成人(平均24.0±2.5歳)とした.〔方法〕重心動揺計の上でステップ位を取り,正面の固視点を注視した.測定条件は,視覚情報となる円柱の設置位置により正面(0°条件),20°横(20°条件),40°横(40°条件),60°横(60°条件),円柱なし(統制条件)の5つとした.〔結果〕単位軌跡長,外周面積ともに,0°条件と20°条件が40°条件,60°条件および統制条件よりも有意に低値であった.〔結語〕見た目上のズレが生じやすい中心視に近い位置に視覚情報が存在した場合に立位制御に貢献することを示唆する.
  • 目黒 力, 湯沢 昭
    2016 年 31 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕移動制約者の新たな交通手段として福祉有償運送の現況を把握し,地域理学療法における役割について探ることである.〔対象〕群馬県内で福祉有償運送を行う101の事業所と,利用者194名である.〔方法〕質問紙調査を事業所,利用者に対して実施した.〔結果〕事業を続けるには,「経費負担」が事業継続に影響し,利用者調査からは「信頼性」が福祉有償運送評価に影響していることが示された.〔結語〕利用者は,福祉有償運送を高く評価し,移動制約者にとって今後重要な交通手段になる可能性がある.一方事業者は事業継続の必要性を感じながらも,事業拡大に慎重な姿勢をとっていることが明らかになった.
  • ─リハビリテーション経過と効果に関する予備的研究─
    加藤 直樹, 橋田 剛一, 多田 周平, 小仲 邦
    2016 年 31 巻 1 号 p. 137-141
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕傍腫瘍性神経症候群(PNS)患者の運動機能・日常生活活動(ADL)経過の分析から,リハビリテーション(リハ)の効果を検討すること.〔対象〕リハ処方されたPNS患者8例とした.〔方法〕人口統計学的および医学的データ,運動機能・ADLのデータを診療録より後方視的に情報収集した.〔結果〕5例で評価項目値が改善し,そのうち4例は発症後3ヵ月以内に抗腫瘍療法が開始され,1例は発症後4ヵ月で免疫療法が施された.また,評価項目値が改善した5例では,治療開始時から退院時までのBI得点変化量が大きい症例でリハ実施期間が長かった.〔結語〕早期治療と十分なリハ実施期間の確保が,PNS患者の運動機能・ADL改善に重要である.
  • 塚本 敏也, 内田 全城, 三浦 和, 丸山 仁司
    2016 年 31 巻 1 号 p. 143-150
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕呼気抵抗負荷による呼吸補助筋の筋疲労特性を明らかにし,呼気抵抗時の呼吸補助筋への影響を検証することとした.〔対象〕健常成人男性11名とした.〔方法〕呼気負荷中と休息期の最大口腔内圧(PEmax,PImax)を測定し,僧帽筋,胸鎖乳突筋,大胸筋,腹直筋,内・外腹斜筋の状態を筋電図周波数解析を用いて検証した.〔結果〕呼吸補助筋の高周波数(H)と低周波数(L)の比(H/L ratio)は,全筋で8分間に20%以上低下した.また,PEmaxについては腹直筋よりも外腹斜筋で,PImaxについては外腹斜筋よりも胸鎖乳突筋で最小値までの所要時間が有意に長かった.〔結語〕呼吸補助筋は筋疲労開始までの所要時間に差が認められず,呼気で外腹斜筋が,吸気で胸鎖乳突筋が疲労し難いといえる.
  • ─入院高齢患者での検討─
    南條 恵悟, 長澤 弘, 千葉 公太, 池田 崇, 浅野 智奈美, 笠原 瑞希, 長谷川 和也, 長谷川 光一
    2016 年 31 巻 1 号 p. 151-155
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕入院高齢者の歩行速度・バランス能力と足趾圧力の関連性が歩行速度と下肢筋力の違いで変化するかを調べた.〔対象〕運動器・中枢系疾患を有さない入院高齢患者110名.〔方法〕10m最大歩行速度(10MWS), Timed up and Go test,Functional reach test ,開眼片脚立位時間,等尺性膝伸展筋力,足趾圧力を計測し,対象者を10MWS(1.0m/sec)と等尺性膝伸展筋力(0.35 kgf/kg)を基準に3群に層別化し,群内で10MWSを従属変数とした重回帰分析を行った.〔結果〕歩行速度が1.0m/sec以上の対象は歩行速度に対して足趾圧力が影響を及ぼした.〔結語〕足趾圧力は歩行速度が1.0m/sec以上の対象では歩行速度に影響を及ぼす可能性が示唆された.
  • 國枝 洋太, 三木 啓嗣, 足立 智英, 星野 晴彦
    2016 年 31 巻 1 号 p. 157-161
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕急性期脳梗塞患者における離床方法の変更が,離床時期や初回離床の中止に及ぼす影響を検討することである.〔対象〕急性期脳梗塞患者241名で,離床コース変更前128名と変更後113名を調査した.〔方法〕2群間で年齢,性別,脳梗塞病型,入院から離床までの日数,入院時NIH Stroke Scale,初期評価時および退院時Barthel Index,初回離床中止の有無,在院日数,転帰先を比較検討した.〔結果〕離床コース変更後,入院から離床までの日数は中央値2.0日から1.0日へ有意に短縮したが,離床中止率には有意差は認められなかった.〔結語〕新離床コースを利用した早期離床は,急性期脳梗塞患者の離床開始時期を早めたが,初回離床の中止率は変化せず,比較的安全に実施された.
  • 菅沼 一男, 平林 茂, 金子 千香, 高田 治実, 江口 英範
    2016 年 31 巻 1 号 p. 163-167
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕理学療法学科1学年女子学生における精神的健康度と大学生活不安との関連を調査すること.〔対象〕平成27年2月に1学年に在籍する4年制大学の理学療法学科女子学生44名であった.〔方法〕コーネル・メディカル・インデックスによる精神的健康度と大学生活不安尺度を調査した.〔結果〕CMIにて32%の学生が神経症またはその可能性ありと分類され,これらの学生は,CLASの日常生活不安,評価不安,大学不適応感,総合点のすべてにおいて正常群と比べて有意に高値であった.〔結語〕神経症傾向の学生は,対人関係,学業成績,大学への適合感,就職について不安感を持つ学生が多い.このため,早期に良好な対人関係を作られる援助,職業意識を高める指導など不安を軽減させるための対策が必要である.
  • ─脳梗塞の病型による比較─
    金居 督之, 久保 宏紀, 北村 友花, 野添 匡史, 間瀬 教史, 島田 真一, 小野 くみ子, 井澤 和大, 安藤 啓司
    2016 年 31 巻 1 号 p. 169-174
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕急性期非心原性脳梗塞患者における病型による自律神経系活動の差異について明らかにする.〔対象〕対象は,急性期非心原性脳梗塞患者33名(年齢71.5歳,男性23名,女性10名)である.〔方法〕心電図は,安静,離床,回復の3条件で測定した.自律神経系活動指標(副交感神経系活動:lnHF,交感神経系活動:LF/HF)は,心拍変動解析により算出した.ラクナ梗塞患者とアテローム血栓性脳梗塞患者での自律神経系活動の比較を行った.〔結果〕ラクナ梗塞患者はアテローム血栓性脳梗塞患者に比べ,安静時のlnHFは低下(5.1 vs. 6.1),離床時のLF/HFは亢進していた(3.0 vs. 1.4).〔結語〕急性期では,ラクナ梗塞患者は,アテローム血栓性脳梗塞患者に比し,自律神経系活動が低下する可能性がある.
症例研究
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