日本化学療法学会雑誌
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51 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 満田 年宏
    2003 年 51 巻 11 号 p. 673-679
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    日常的に多くの研究者・臨床医がネット社会の一員となってからまだ10年と経たない。一方でクリントン前米国大統領の全米情報ハイウェイ構想が懐かしくさえ感じるこのごろだが, 『果たして自らが十分にこなしこの広大なネット社会を仕事の面で享受できているかどうか?』ふと懐疑的に感ずることがある。従来の学術論文に加えて, ネット社会にあふれ出している情報を, 新たに取り入れて研究・診療に還元するためには, 便利になった反面大変な労力を要する。2002~2003年にかけてアウトブレイクしたSARSは, 学術情報の入手形態を一変させるきわめてエポックメーキングな元年となった。すなわち, 学術団体においても商業誌においてもSARSの最新の知見を広く世界中に届けるため, かつてない試みを行った (その前兆は炭疽菌事件のあとのテロ対策としてJAMAなどで見られていたが)。The LancetやThe New England Journal of Medicineなどの代表的な医学雑誌がこぞってオンラインジャーナルを速報形式で, しかもその多くを無償で提供した。当時は, 『いつまでも雑誌の印刷を待っていられない』とした焦燥感が世界を突き動かしていた感がある。本稿では, 感染症医として熟知しておくべきと考えられる基本的な情報整理術についてその概略を解説したい。
  • 1998年~2003年市井感染症分離好気性菌に対する抗菌力
    嶋田 甚五郎, 竹村 弘, 船橋 一照, 梶浦 泰一
    2003 年 51 巻 11 号 p. 680-692
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1998年より2003年にかけて, 毎年2月から3月に一次医療機関を中心とした日本各地の382施設において, 呼吸器または尿路感染症を主訴として来院した外来初診患者より採取された検体からの分離菌について, faropenem (FRPM) を含む各種抗菌薬の薬剤感受性を測定した。経年的に各種耐性菌の比率の変化をみると, Staphylococcus aureusに対するmethicillin-resistant S.aureus (MRSA) の比率は約7%と一定で, Staphylococcus epidermidisに対するmethicillin-resistant S.epidermidis (MRSE) の比率は42.9~58.3%と変動があるものの増加傾向はみられなかった。それに対して, Streptococcus pneumoniaeに対するpenicillin-resistant S.pneumoniae (PRSP) の比率は2.7%から19.1%へ, penicillin-intermediate S.pneumoniae (PISP) の比率は24.5%から32.1%へ経年的に増加する傾向を示した。Methicillin-susceptible S.aureus (MSSA), methicillin-susceptible S.epidermidis (MSSE), PISP, PRSPに対して優れた抗菌力を示したのはimipenem (IPM) とFRPMであった。Streptococcus pyogenesに対してはほとんどのβ-ラクタム系薬が優れた抗菌力を示したが, clarithromycin (CAM) の感受性は2002年以降1氏下した。Enterococcus faecalisに対して優れた抗菌力を示したのはclavulanic acid/amoxicillin (CVA/AMPC) であった。グラム陰性菌ではBranhamella catarrhalis, Escherichia coliにはlevofloxacin (LVFX), IPMが, Klebsiella属, Enterobacter属にはLVFXが優れた抗菌力を示した。Haemophilus influenzaeに対するβ-lactamase negativeampicillin-resistant H.influemae (BLNAR) の比率は9.6%から32.3%と著しく増加した。BLNARに対してcefditren (CDTR) を除くβ-ラクタム系薬で感受性の低下を認めたが, LVFXは優れた抗菌力を示した, FRPMはMRSA, MRSE, BLNARを除いた分離菌に対して全体的に優れた抗菌活性を示し, 6年間で特にFRPMに対する経年的な薬剤感受性の低下は認められなかった。
  • 五十嵐 正博, 中谷 龍王, 香取 秀幸, 原 茂子, 中田 紘一郎, 林 昌洋, 高市 憲明, 粕谷 泰次
    2003 年 51 巻 11 号 p. 693-702
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    日常診療での血液透析症例に対するvancomycin (VCM) の投与法として, 初回20mg/kg投与後, 血中濃度から1薬物動態パラメータを算出して2回目以降の投与量を決定するプロトコールを作成し, 5症例に対して実施した。 この結果, 薬物動態パラメータ平均値は, 透析クリアランス (CLHD): 48.8mL/min, 透析外クリアランス (CLnonHD): 3.4mL/min, 分布容積 (Vd): 1.0L/kgであった, 透析直後, 再分布により血中濃度は約15%1上昇することから, CLHDとCLnonHDを算出するには, 透析終了4時間後の血中濃度 (C4) を測定することが1重要となる。また, 血液透析を週3回受けている症例のVCM投与量は, 初回25mg/kg投与後, 1週間ごとに20mg/kgが適量と考えられた。血中濃度予測精度は, ピーク濃度で, mean prediction error (ME): 4.66μg/mL, mean absolute prediction error (MAE): 4.66μg/mL, root mean squared error (RMSE): 5.61μg/mL, トラフ濃度で, ME: -0.29μg/mL, MAE: 1.71μg/mL, RMSE: 2.17μg/mLと良好であり, 2回投与後に測定したピーク濃度とトラフ濃度は, すべて治療域内となった。初回投与終了4時間後と初回投与後2回目透析直前の血中濃度を測定すれば, 血車濃度を治療域にすることが可能と考えられ, VCMを大量に投与する必要のある重篤なMRSA感染症患者などを対象には, CLHDとCLnonHDを算出するための採血 (C4) を行うことが望ましいと考えられた。
  • Japan Adult Leukemia Study Groupの実態調査の解析
    吉田 稔, 秋山 暢, 高橋 正知, 田口 博國, 竹内 仁, 内藤 健助, 程原 佳子, 松島 孝文, 松田 光弘
    2003 年 51 巻 11 号 p. 703-710
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG) における急性白血病治療時の感染症対策の実態調査アンケートの結果を報告する。調査は2001年秋に行い, JALSG参加全196施設中125施設 (64%) から回答が得られた。細菌感染予防はpolymixin B (31%) とニューキノロン薬 (38%) が, 真菌感染予防はfluconazole (FLCZ, 41%) とamphotericin B (AMPH-B, 42%) が多く, 予防なしはそれぞれ6%と3%にすぎなかった。Febrile neutropeniaのEmpiric therapy (ET) はcephemやcarbapenemの単剤療法が35%で, それらとアミノ配糖体との併用療法が50%で行われていた。Vancomycinを初期から使用する施設は1%であった。ETが無効の場合は3~4日後に51%の施設が抗真菌薬を追加しており, 薬剤はFLCZ (66%) がAMPH-B (28%) より多かった。真菌症の治療はカンジダ敗血症は比較的安定した病状ではFLCZが (59%), 肺炎の合併や病状が不安定な場合にはAMPH-B (57%) が選択された。一方アスペルギルス症ではAMPH-Bが用いられるが, 投与量は0.5~0.7mg/kgが44%で, 本症の治療で推奨される1mg/kg以上を使用する施設は42%であった。顆粒球コロニー刺激因子は急性骨髄性白1血1病ではlife threatening infectionの場合に投与がもっとも多かったが (27%), 急性リンパ性白血病では発熱前の予防的投与が多かった (52%)。以上の結果は今後, わが国の好中球減少患者の感染症治療ガイドラインを作成する際に参考になると考えられた。
  • 佐藤 哲夫
    2003 年 51 巻 11 号 p. 711-713
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    比較的高齢者の肺炎球菌肺炎患者に, levofloxacin (以下LVFX) を1回200mg1日2回投与することを試み, 好結果を得た.症例は男性5名, 女性2名で平均年齢は72歳, 症状発現から平均4.4日で受診し, 全員, 発熱, 咳噺, 喀痰がみられた.LVFX服用開始後平均3.1日で解熱がみられた.初診時の白血球数は平均12,200/μLで治療1週後に6,571/μL, CRPは10.7mg/dLから1.27mg/dLへと改善した.LVFX200mgを1日2回投与することにより薬物動態的にすると肺炎球菌に対しAUC/MIC値は35となり十分な効果が期待されるが, 臨床的にもその効果が確認された.
  • 宮崎 修一, 小林 寅哲, 山口 惠三
    2003 年 51 巻 11 号 p. 714-716
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    BLNAR株に対するgatifloxacin (GFLX) のin vitro, in vivo抗菌活性を検討した.アンピシリン耐性株を含む臨床分離Haemophilus influenzaeにgatifloxacinの抗菌1辞上はlevofioxacin同様強かった.一方, 第茶世代経口セフェム系cefbapeneやcefditorenはアンピシリン感性株に比べ, BLPAR株さらにBLNAR株に対する抗菌活性がやや弱くなる傾向を示した.BLNAR株によるマウス気管支肺炎モデルにおいて, 1mg/kgのGFLXを2回/日, 3日間投与すると, 感染組織の残存生菌数は検出限界以下となった.一方, cefcapene pivoxil投与群では10mg/kg投与群では無投与群に比べ, 有意差をもって残存菌数の減少を認めた.これらの成績は, GFLXがH.influenzae呼吸器感染症に有用であることが示唆された.
  • 清水 喜八郎, 相川 直樹, 谷川原 祐介, 賀来 満夫, 今栄 雅文, 西澤 宣典, 中村 洋
    2003 年 51 巻 11 号 p. 717-730
    発行日: 2003/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗MRSA薬TDM研究会を組織した目的は, 抗MRSA薬がどのように使用されているかの実態の調査と, 抗MRSA薬の血中濃度と臨床例の有効性・安全性に関する情報を収集し, より適切な投与法を検討することにある.本研究会に参加した全国50の医療機関において, 1999年4月から2002年12月までの期間に, MRSA感染症の治療に抗MRSA薬 [arbekacin (ABK), vancomycin (VCM), teicoplanin (TEIC)] を使用し, TDMを実施した症例を対象とし, 有効性・安全性等を検討した.収集した症例はABK使用群479例, VCM使用群93例, TEIC使用群24例の計596例であった.これらの症例をMRSA感染症であるかなどを判定委員会で判定した結果, 有効性解析対象 (臨床効果), 有効性解析対象 (細菌学的効果), 安全性解析対象 (副作用), 安全性解析対象 (臨床検査値) は, ABK使用群ではそれぞれ221例, 203例, 470例, 461例, VCM使用群ではそれぞれ42例, 37例, 86例, 87例・TEIC使用群ではそれぞれ13例, 11例, 23例, 22例であった.ABK使用群, VCM使用群, TEIC使用群の有効性・安全性は, それぞれ, 臨床効果が74.7%, 64.3%, 30.8%, 細菌学的効果が43.8%, 35.1%, 45.5%, 副作用発現率が5.3%, 5.8%, 13.0%, 臨床検査値異常発現率が8.7%, 8.0%, 18.2%であった.使用例数, 背景因子などに差が認められたことから, 症例数が多かったABK使用群の使用実態を中心に検討した.ABK使用群における初回TDM実施日は, 3日以内が56.9%, 5日以内が84.6%であり, いちばん多かったのは3日目で約1/4の症例数を占めていた.ABK使用群のうち症例数のいちばん多かった100mgx2回/日投与法の場合, 45.6%の症例が投与変更 (用量と回数の変更) され, 200mg×1回/日投与法の場合は, 25.9%の症例が投与変更 (主に用量の変更) されていた.投与変更されなかった77例における臨床効果は, 100mg×2回/日投与法では78.4%, 200mg×1回/日投与法では87.5%であった.また, それぞれの副作用発現率は, 5.5%, 5.0%であった.これらの有効性・安全性において, 有意水準5%(両側) でχ2検定を実施したところ, ABK200mg×1回/日投与法と100mg×2回/日投与法の間に有意差は検出されなかった.
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