抗MRSA薬TDM研究会を組織した目的は, 抗MRSA薬がどのように使用されているかの実態の調査と, 抗MRSA薬の血中濃度と臨床例の有効性・安全性に関する情報を収集し, より適切な投与法を検討することにある.本研究会に参加した全国50の医療機関において, 1999年4月から2002年12月までの期間に, MRSA感染症の治療に抗MRSA薬 [arbekacin (ABK), vancomycin (VCM), teicoplanin (TEIC)] を使用し, TDMを実施した症例を対象とし, 有効性・安全性等を検討した.収集した症例はABK使用群479例, VCM使用群93例, TEIC使用群24例の計596例であった.これらの症例をMRSA感染症であるかなどを判定委員会で判定した結果, 有効性解析対象 (臨床効果), 有効性解析対象 (細菌学的効果), 安全性解析対象 (副作用), 安全性解析対象 (臨床検査値) は, ABK使用群ではそれぞれ221例, 203例, 470例, 461例, VCM使用群ではそれぞれ42例, 37例, 86例, 87例・TEIC使用群ではそれぞれ13例, 11例, 23例, 22例であった.ABK使用群, VCM使用群, TEIC使用群の有効性・安全性は, それぞれ, 臨床効果が74.7%, 64.3%, 30.8%, 細菌学的効果が43.8%, 35.1%, 45.5%, 副作用発現率が5.3%, 5.8%, 13.0%, 臨床検査値異常発現率が8.7%, 8.0%, 18.2%であった.使用例数, 背景因子などに差が認められたことから, 症例数が多かったABK使用群の使用実態を中心に検討した.ABK使用群における初回TDM実施日は, 3日以内が56.9%, 5日以内が84.6%であり, いちばん多かったのは3日目で約1/4の症例数を占めていた.ABK使用群のうち症例数のいちばん多かった100mgx2回/日投与法の場合, 45.6%の症例が投与変更 (用量と回数の変更) され, 200mg×1回/日投与法の場合は, 25.9%の症例が投与変更 (主に用量の変更) されていた.投与変更されなかった77例における臨床効果は, 100mg×2回/日投与法では78.4%, 200mg×1回/日投与法では87.5%であった.また, それぞれの副作用発現率は, 5.5%, 5.0%であった.これらの有効性・安全性において, 有意水準5%(両側) でχ
2検定を実施したところ, ABK200mg×1回/日投与法と100mg×2回/日投与法の間に有意差は検出されなかった.
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