日本化学療法学会雑誌
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53 巻, 6 号
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  • 平井 敬二
    2005 年 53 巻 6 号 p. 349-356
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン薬の先駆けとなったノルフロキサシンが臨床現場で使用され始めて20年以上が経つが, その後も数多くのニューキノロン薬が開発されてきている。これらの新薬の開発と並行してキノロン薬の作用機序, 耐性機構の研究も飛躍的に進歩してきた。本総説ではわれわれの研究内容も含め, キノロン薬の作用機序, 耐性機構研究の約四半世紀の歴史を紹介する。
    (1) 作用機序: 標的酵素 (DNAジャイレース, トポイソメラーゼIV) 研究: われわれがキノロン研究を開始した1975年当時ではキノロン薬の詳細な作用メカニズムはまだ不明であったが, ノルフロキサシンを発見したのと同時期にキノロン薬がDNAジャイレースに作用することが報告された。その後DNAジャイレースの研究が進み, 作用様式 (キノロン・DNA・酵素の3者複合体), 抗菌力との相関, 耐性化機構 (耐性決定領域での変異) などが明らかとなった、さらにDNAジャイレース以外に新たな標的酵素としてトポイソメラーゼWが1990年に見出され, その研究からグラム陽性菌に対する抗菌力, 高度耐性化との関連が明確となった。
    (2) 膜透過性 (排出機構) 研究: ノルフロキサシンを用いた研究から, 大腸菌をはじめとする腸内細菌では外膜のポーリンと呼ばれる透過孔を介してキノロン薬が菌体内に透過することを明らかにした。一方, 緑膿菌におけるノルフロキサシン耐性機構の解析から膜透過性に関与するnfxB, nfxC, nalB変異遺伝子を見出したが, この耐性機構についてはその後多くの研究者により精力的な研究が行われ, キノロン薬に限らず緑膿菌の薬剤耐性に排出ポンプが大きく関与していることが明らかにされた。
    最近, プラスミド性のキノロン耐性 (qnr遺伝子) が中国や米国で報告された。この発見は新たなキノロン耐性として今後の課題となりそうである。
  • ベイジアン法による解析
    寺町 ひとみ, 松下 良, 辻 彰
    2005 年 53 巻 6 号 p. 357-363
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Vancomycin (VCM) をmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 感染症患者 (腎機能は正常) に, 通常投与量を点滴静注投与したところ, 治療濃度域より実測血清中VCM濃度がかなり低い症例を経験した。本症例の原疾患に肺癌があることから, 癌または悪性腫瘍疾患のある患者群で, VCMの薬物動態パラメータの変動を, 臨床症例52例 (血1清クレアチニン値が0.6mg/dL以下) について解析した。
    非担癌患者群は27例, 担癌患者群は25例で比較検討した。解析は2-compartmentmodelを用い, Bayesian法で薬物動態パラメータを推定した。Bayesian法による投与設計後の非担癌患者群の実測トラフ値とピーク値の平均血清中VCM濃度は, 10.53±3.01μg/mL, 24.18±0.11μg/mL, 担癌患者群10.96±4.07μg/mL, 25.51±1.92μg/mLともに両群に有意差はなかった。しかし, VCM投与量は, 非担癌患者群が26.40±11.22mg/kg/day, 担癌患者群が, 34.86±13.09mg/kg/dayと, 担癌患者群のほうが多かった。推定した薬物動態パラメータは, VCMの全身クリアランス (CL) および, 分布容積 (Vdss) は, 非担癌患者群0.056±0.018 (L/hr/kg), 1.05±0.34 (L/kg), 担癌患者群0.077±0.029 (Lhrkg), 129±0.41 (L/kg) とともに担癌患者群のほうが大きい値を示していた。予測性も良好な値を示した。
    Bayesian法による解析の結果, 担癌患者群においてVCMのCL, Vdssが有意に非担癌患者群より夫きい値を示した。同じ血清中濃度を担癌患者群が実現するためには, 投与量の増量が示唆された。
  • 佐藤 弓枝, 松崎 薫, 村岡 宏江, 雑賀 威, 長谷川 美幸, 小林 寅哲
    2005 年 53 巻 6 号 p. 364-370
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    主に2003年から2004年の期間に国内の感染症患者より分離された各種病原微生物のtosufloxacin (TFLX) を含むnuoroquinolone系抗菌薬に対する薬剤感受性を測定した。
    Penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae を含む Streptococcus spp. に対しTFLXは測定抗菌薬中最も高い抗菌活性を示した。また Moraxella (Branhamella) catarrhalis に対して検討した抗菌薬は強い抗菌力を示した。 Haemophilus influenzae は1株を除きfluoroquinolone 系抗菌薬に感性であった。呼吸器感染症の主要病原菌に対して, TFLXは強い抗菌力を示した。Legionella pneumophila に対しTFLXは測定薬剤中最も抗菌力が強く, Mycoplasma pneumoniae および Chlamydia spp. に対しTFLXはgatmoxacin (GFLX) に次いで高い活性を示した。
    以上の結果から, TFLXは感染症患者より近年に分離された新鮮臨床分離株全般に対して優れた抗菌力を示し, 各種感染症の治療抗菌薬として有用と考えられた。
  • 青木 宏二, 大竹 登志郎, 吉田 由希, 南山 茎子, 今村 恭子
    2005 年 53 巻 6 号 p. 371-383
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    15員環マクロライド系抗菌薬であるazithromycin (AZM;ジスロマック ®) は, 本邦において2000年3月に承認を取得し, 同年6月に発売を開始した。ジスロマックダ特別調査 (小児に対する調査) は, 小児に対する安全性および有効性等の適正使用情報の確認を目的として2001年8月より調査を実施した。集積された778症例のうち718例を安全性解析対象例, 631例を有効性解析対象例とした.
    安全性解析対象例718例のうち38例に39件の副作用が認められ, 副作用発現症例率は5.29%(38/718) であった。主な副作用は,「下痢」19件,「嘔吐」7件であり, 重篤な副作用は認められなかった。
    また, 添付文書の「使用上の注意」で注意喚起を行っている2歳未満の「胃腸障害」の副作用は8.57%(12/140) の頻度で認められた。重篤度はいずれも軽微であり, 転帰については軽快または消失・回復が確認された。
    同様に「使用上の注意」で注意喚起を行っている「白血球数減少」および「好中球数減少」の副作用発現症例率は, それぞれ0.68%(3/442), 0.53%(2/376) であった。
    有効性解析対象例631例における呼吸器感染症 (咽喉頭炎, 急性気管支炎, 扁桃炎, 肺炎) の有効率は88.8%(523/589), 耳鼻科領域感染症 (中耳炎) の有効率は85.7%(36/42) であった。
    呼吸器感染症のうち起炎菌が同定された症例は, 複数起炎菌症例を含み226例であった。主な起炎菌別の有効率は, Mycoplasma 属が93.1%(122/131), Streptococcus pneumoniae が84.6%(11/13), Haemophilus influenzae が77.1%(27/35) であった。
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