ある種の無機塩,有機酸および糖の添加によるアントシァニン色素溶液の濃色化機構を解明するために,過塩素酸ナトリウム(NaClO
4)添加に伴うmalvidin-3,5-diglucoside chlorideの分光学的およびポーラログラフ的挙動を酸性溶液中で検討した。
(1) pH 2.3でNaClO
4濃度の増加に伴いフラビリウム塩の吸光度(λmax520nm)は増大し,また紫外部のλ
max275nmの吸光度も増加した。
(2) pH 4.0でNaClO
4添加に伴い第1波(-0.46Vvs. SCE)は陽電位移行すると共にその波高は増大した。これに対して第2波(-0.92V vs. SCE)の波高は減少し消失した。
(3) NaClO
4添加に伴う分光学的およびポーラログラフ的挙動はpHの低下によるそれらの変化と良く対応していた。
(4) NaClO
4の添加によって,フラビリウム塩(発色形)-カルビノールベース(非発色形)の平衡がフラビリウム塩側に移行した。
(5) 以上の結果から,アントシアニン色素溶液のNaClO4添加による濃色化効果(E
520nmの増大)は,カルビノールベース(非発色形)をフラビリウム塩(発色形)に変化させることに起因すると推定した。
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