でんぷんの熱分析を行ない,でんぷんの熱学的な性質を明かにした。熱分析器の排気孔における官能検査の結果は,熱分析曲線の傾向とよく一致し,160℃付近より香気の生成を感じ,220℃になるとはげしくなり,強い煙臭およびフルフラール系化合物の香を感じた。
でんぷんの焙焼香気成分をトラップを用いて捕集し,中性部,酸性部,弱酸性部にそれぞれ分画を行なった。弱酸性部は特徴ある芳ばしい香を有し,酸性部は強い酸臭を有し,中性部は焦げ臭を含む香気をもっていた。
カルボニル化合物を2, 4-DNPHとして捕集し,2, 4DNPHの直接ガスクロマトグラフィーによって分析を行ない,methanal, ethanal, propanone, 2-methylpropanal, n-butanone, 3-pentanone, furfural, acetylfuran, 5-methylfurfuralを同定した。
オキソ酸の2, 4-DNPHはメチルエステルに導き,ガスクロマトグラフィーを行ない,glyoxylic acid, pyruvic acid, α-ketobutyric acidおよびlevalinic acidを同定した。
5-Hydroxymethylfurfuralを2, 4-DNPHとして単離同定し,bis-2, 4-DNPHとして,glyoxal, pyruvaldehydeおよびdiacetylを推定した。
以上同定あるいは推定されたカルボニル化合物は,いずれも特徴ある香気を有し,でんぷんの焙焼香気に関係の深い化合物である。
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