日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
30 巻, 6 号
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  • 高橋 敦子, 平本 福子, 松田 康子, 三輪 真幸
    1983 年 30 巻 6 号 p. 315-322
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    乳用種雄去勢牛の肥育方式の改善を図る目的で計画された,「放牧加味育成による肥育方式」による赤味牛肉の食味について,調理学的見地より,官能検査を中心に検討を加えた。その結果,以下のような知見が得られた。
    (1) テクスチュロメーターによる硬さの測定では,内もも,サーロインの生肉では,120日と180日肥育の間に1%危険率で180日肥育の方が有意に軟らかかった。しかし,加熱肉については,差がみられなかった。
    (2) テクスチュロメーターによる多汁性の測定では,内もも,サーロインの生肉ともに, 120日と180日肥育の間,および180日と240日肥育の間に1%危険率で有意差が認められ, 120日肥育が最も多かった。また,加熱肉については, 10秒および20秒間で焼いたもののいずれにおいても, 120日と180日, 180日と240日肥育の間に有意差がみられ, 180日肥育のものが少なかった。
    (3) 食味については,官能検査の結果は,肥育期間には差がみられなかった。さらに,今回実験に用いた赤身肉は,一般的に,普通とされる肉と同じか,あるいはそれよりやや低いという評価であった。
    これらの結果から,放牧加味育成方式によっても乳用種牛の食味はあまり影響を与えられないものと考える。
  • 小川 健, 安部 章蔵, 釘宮 正往
    1983 年 30 巻 6 号 p. 323-330
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    アズキ乾燥アン粒子中のデンプンの糊化の状態を明らかにするために,加水,加熱による理化学的性状(膨潤力,溶解度,酵素による被消化性,複屈折性の消失度)を測定し,いくつかの他のデンプンのそれらと比較した。
    (1) アズキ乾燥アンの膨潤力および溶解度は,他のデンプンのそれらと比べて著しく小さかった。例えば,98℃の膨潤力,溶解度はアズキデンプンのそれの1/7,1/8であった。
    (2) アズキ乾燥アン粒子中のデンプンの酵素による被消化性は,他のデンプンのそれらと比べて小さかった。
    (3) アズキ乾燥アン粒子中のデンプンの複屈折性の消失度は,加熱温度に無関係にほぼ20%と一定であり,他のデンプンのそれらとは著しく異っていた。
    (4) 以上の結果に基づいて,アズキ乾燥アン粒子中のデンプンの糊化は,他のデンプンの糊化と比べて,著しく抑制されていると考えられる
  • 斎尾 恭子, 野口 明徳
    1983 年 30 巻 6 号 p. 331-338
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    搗精米,並びにそれを粉砕,空気分級した米粉の微細構造を走査電子顕微鏡により観察した。米胚乳では,長く形の角柱型細胞が中央から表層に放射状に並んでいる。その細胞内には,多角澱粉複粒がっまっている。水,食塩水,希アルカリ溶液に浸漬すると,胴割れその他組織の損傷が促進される。搗精米と粉砕,空気分級して高蛋白分画の分級を試みたところ,全窒素7.4%の米粉から9.4%まで蛋白含量の高い分画を得た。また一方, n-ヘキサンに米糠を懸濁して超音波処理を行ない,続いて粉砕,空気分波した結果,高蛋白画分を集める点から比較的有望な実験結果を得た。
  • 藤井 聰, 岸原 士郎, 河本 正彦, 清水 淳一
    1983 年 30 巻 6 号 p. 339-344
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    S. plymuthica NCIB 8285の固定化菌体をシュクロースに作用させ生成するオリゴ糖類について検討を加えた。試料はパラチノースを除去した反応母液(Brix 66°)である。 40gの試料をカーボン・セライトカラムクロマトにかけた結果,パラチノース,シュクロース以外に3種のオリゴ糖(A, B, C)が得られた。これらにつき各種クロマトグラフィーや化学反応を行った。 Aはシラップ状に2.0g単離され, 1-α-D-glucopyranosyl-D-fructo-furanoseと同定された。 Aは強い甘味を示した。 Bは微量の夾雑物の混在するシラップとして少量得られ,イソマルトースと同定された。 Cは白色針状結晶として2.3g単離され,イソメレジトースと同定された。 HPLCによると試料は結局フルクトース(15.9%),グルコース(9.7%),シュクロース(21.8%), 1-α-D-glucopyranosyl-D-fructofuranose(16.6%),パラチノース(21.8%),イソマルトース(5.2%)及びイソメレジトース(8.2%)からなる糖組成を有していた。ここで新しく生成したオリゴ糖はいずれもα-グルコシル基を糖の第一級アルコール基に結合しており,これが本菌の糖転位作用の特徴と考えられた。
  • 竹永 章生, 伊藤 真吾, 露木 英男
    1983 年 30 巻 6 号 p. 345-349
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    モモ(白鳳・倉方早生)の種子および核に含まれる糖脂質区分とリン脂質区分の脂質組成および脂肪酸組成について,ケイ酸カラムクロマトグラフィー,薄層クロマトグラフィー,シンクログラフィー,ガスクロマトグラフィーを用いて研究を行い,次のような結果を得た。
    (1) 総脂質中の糖脂質区分含有率は,種子1.8~3.3%,核49.4~50.3%であり,リン脂質区分含有率は,種子3.2~3.9%,核2.3~2.5%であったが,両品種間では大差はなかった。
    (2) 両品種とも,糖脂質区分を構成する脂質は,種子で7種,核で9種認められた。糖脂質区分を構成する主要脂質は両品種とも,種子ではモノガラクトシルジグリセリド(30.9~33.3%),ステリルグルコシド(29.2~30.0%),アシルステリルグルコシド(15.6~19.8%)であり,核ではステリルグルコシド(46.2~47.5%),アシルステリルグルコシド(14.4~15.6%),モノガラクトシルジグリセリド(14.4~15.4%),セレブロシド(11.9~12.7%)であった。
    (3) 両品種とも,リン脂質区分を構成する脂質は,種子で7種,核で5種認められた。リン脂質区分の主要脂質は両品種とも,種子ではボスファチジルコリン(43.7~44.7%),ボスファチジルエタノールアミン(35.5~37.4%),ボスファチジルセリン(17.1~19.9%)であり,核ではホスファチジルエタノ-ルアミン(50.0~50.3%),ボスファチジルコリン(38.5~40.5%)であった。
    (4) 両品種とも,糖脂質区分およびリン脂質区分を構成する脂肪酸は,16~18種認められ,主要脂肪酸は,種子ではリノール酸(44.6~49.6%),パルミチン酸(24.2~29.3%)およびオレイン酸(13.6~19.6%)であり,核ではリノレン酸(29.5~34.6%),パルミチン酸(27.0~36.3%)およびリノール酸(13.8~20.6%)であり,総脂質,中性脂質区分と同様の傾向がみられた。
  • 奥忠 武
    1983 年 30 巻 6 号 p. 350-356
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    揚げかまぼこのガンマ線照射および貯蔵による油脂の変質を知る目的で,スケトウダラ冷凍すり身を主原料(約77%)とした揚げかまぼこを調製し,含気包装後3kGyのガンマ線照射を行ない,抽出油脂の脂肪酸組成,諸特性および総菌数を調べた。結果は以下の通りである。
    (1) 揚げかまぼこの油脂の脂肪酸組成および諸特性の照射による変化は,無視出来るほど僅かであった。揚げかまぼこの油脂の大部分は,揚げ時に吸収・付着した揚げ大豆油であった。
    (2) 30℃貯蔵区では,照射および非照射試料中の油脂の含量の高い5種の脂肪酸のうち, C18:218:3酸は21日間の貯蔵で大きな減少を示した。両試料のPOVとTBA値の増加速度は速く,油脂の酸化の進行が顕著であった。また,両試料の総菌数の増加も短期間で急激であった。
    (3) 10℃貯蔵区では,照射および非照射試料中の油脂の脂肪酸の変化は, 21日間の貯蔵でほとんど起らぬか,生じても僅かであるが,非照射試料では14日目で総菌数が試料1g当り107近くに達し,外観的異常と異臭も認められ食用に適さぬものと推定された。照射試料では,56日目においても油脂の脂肪酸組成の変化もほとんどなく,総菌数の増加も僅かで,貯蔵期間の延長に照射と低温貯蔵の併用が極めて有効であることが明らかであった。
  • グンドルック醗酵微生物とその役割(第1報)
    テイカ カルキ, 岡田 早苗, 馬場 徹, 伊藤 寛, 小崎 道雄
    1983 年 30 巻 6 号 p. 357-367
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    グンドルックはネパールで最も消費量の多い,無塩漬物である。からし菜または大根葉を原料として,特有の香りと酸味を有する。醗酵期間は約一週間であるから,その期間中の微生物相を検討した。醗酵途中のグンドルックからLactobacillus plantarum, L. casei subsp.casei, L. casei subsp. pseudoplantarum, L. cellebiosus,Pediococcus pentosaceusが得られ,特にL. cellobiosusは漬込み初期段階に多く存在した。3日後よりPed. pentosaceus, L. plantarumに微生物相は変化し,グンドルックの酸度も上がった。その後Ped. pentosaceusおよびL. plantarumの生育が優位を占め,同時にエステル様香気成分も生成される。すなわち,グンドルック製造の重要な乳酸菌はPed. pentosaceus, L. plantarumおよびL. cellobiosusであり,グンドルック熟成に寄与していると考えられる。
  • 渡瀬 峰男, 西成 勝好
    1983 年 30 巻 6 号 p. 368-374
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    アガロースのゲル化に際して,ゼラチンの寄与を調べるために,アガロース-ゼラチン混合ゲルのレオロジー的研究を行なった。ゼラチンの濃度,側鎖基および分子量の影響を調べるために,分子量の異なる酸処理およびアルカリ処理ゼラチン試料を用いた。アガロースの濃度は2%w/wに統一し,ゼラチン濃度は4~40%w/wの範囲で混合ゲルを作製した。混合ゲルのpHは6.86に統一した。これらのゲルについて,応力緩和実験,動的粘弾性測定およびSEM観察を行なった。岡野の式を非圧縮性物質に書きなおした式を用いて混合ゲルの弾性率を計算し,実測値と比較した。その結果は以下のとおりであった。
    (1) ゼラチン濃度が30%w/w以上では,ゼラチンの分子量および等イオン点に関係なく, E1の実測値が計算値より低い値を示した。
    (2) ゼラチン濃度が15%w/w以下では,酸処理ゼラチンでは, Elの実測値が計算値より大きい値を示し,アルカリ処理ゼラチンでは,それと逆の結果を示した。
    これらの傾向はE'の温度依存性においてもみられた。混合系におけるアガロースのゲル化に際して,ゼラチンの濃度が減少するにつれて,ゼラチン分子の側鎖基の影響が主として現われる。一方,濃度が増加すると,ゼラチン分子間のからみあいの影響が強く現われる。以上の推論はSEM観察によっても裏付けられた。
  • 吉田 博, 菅原 龍幸, 林 淳三
    1983 年 30 巻 6 号 p. 375-378
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    14種の野生キノコ類のエタノール抽出液中の有機酸組成をガスクロマトグラフィーにより検討し,以下の結果を得た。
    各種キノコ類の乾物重量100g当りの有機酸含量は0.2~4.9g(平均2.8g)の範囲に分布し,キノコの種により含量に顕著な差異があった。
    (2) キノコ類の有機酸としてリンゴ酸,コハク酸,フマル酸,ピログルタミン酸,クエン酸, α-ケトグルタル酸,シュウ酸,乳酸,酢酸およびギ酸が確認された。各種キノコ類を構成する有機酸は9~10種類の有機酸よりなり,総有機酸量の8割以上が2~3種類の有機酸で構成され,その分布パターンもキノコの種により特徴を有していた。
  • 1983 年 30 巻 6 号 p. A33-A39
    発行日: 1983/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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