モモ(白鳳・倉方早生)の種子および核に含まれる糖脂質区分とリン脂質区分の脂質組成および脂肪酸組成について,ケイ酸カラムクロマトグラフィー,薄層クロマトグラフィー,シンクログラフィー,ガスクロマトグラフィーを用いて研究を行い,次のような結果を得た。
(1) 総脂質中の糖脂質区分含有率は,種子1.8~3.3%,核49.4~50.3%であり,リン脂質区分含有率は,種子3.2~3.9%,核2.3~2.5%であったが,両品種間では大差はなかった。
(2) 両品種とも,糖脂質区分を構成する脂質は,種子で7種,核で9種認められた。糖脂質区分を構成する主要脂質は両品種とも,種子ではモノガラクトシルジグリセリド(30.9~33.3%),ステリルグルコシド(29.2~30.0%),アシルステリルグルコシド(15.6~19.8%)であり,核ではステリルグルコシド(46.2~47.5%),アシルステリルグルコシド(14.4~15.6%),モノガラクトシルジグリセリド(14.4~15.4%),セレブロシド(11.9~12.7%)であった。
(3) 両品種とも,リン脂質区分を構成する脂質は,種子で7種,核で5種認められた。リン脂質区分の主要脂質は両品種とも,種子ではボスファチジルコリン(43.7~44.7%),ボスファチジルエタノールアミン(35.5~37.4%),ボスファチジルセリン(17.1~19.9%)であり,核ではホスファチジルエタノ-ルアミン(50.0~50.3%),ボスファチジルコリン(38.5~40.5%)であった。
(4) 両品種とも,糖脂質区分およびリン脂質区分を構成する脂肪酸は,16~18種認められ,主要脂肪酸は,種子ではリノール酸(44.6~49.6%),パルミチン酸(24.2~29.3%)およびオレイン酸(13.6~19.6%)であり,核ではリノレン酸(29.5~34.6%),パルミチン酸(27.0~36.3%)およびリノール酸(13.8~20.6%)であり,総脂質,中性脂質区分と同様の傾向がみられた。
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