薄切りにした馬鈴薯を種々の条件でマイクロ波通風乾燥を行ない,乾燥プロセス,乾燥試料の断面組織の変化,及び水分復元性を調べ,通常の通風乾燥及び減圧乾燥との比較を行なった.
(1) 通風空気温度や雰囲気温度を30℃の低温にした場合には通常の通風乾燥では乾燥に9時間,減圧乾燥では24時間を要した.一方,90℃の場合には乾燥時間を通風乾燥の場合2時間,減圧乾燥では4時間に短縮できた.しかし,試料表面に澱粉の糊化や硬化が生じ水分復元性が著しく劣化した.
(2) マイクロ波通風乾燥の場合,マイクロ波電力が過小であったり,通風空気温度が高すぎると,乾燥は試料表面から進み,その表面に硬化や糊化が生じ復水性が悪くなった.
(3) マイクロ波電力を増大すると,試料内部温度が表面温度より高温となり乾燥時間をさらに短縮できる.しかし供給マイクロ波電力が強すぎると試料内部の澱粉が糊化,発泡し水分復元性が困難になった.
(4) 30℃通風乾燥に,150Wの微弱なマイクロ波電力を供給し,品温を31℃から42℃に保持しながら乾燥すると,2.5時間で乾燥を終了した.乾燥速度は2.95kg/kg・hで,通常の30℃通風乾燥の場合の3.5倍である.馬鈴薯の中心部から表層部まで,澱粉粒の破壊が見られず,澱粉粒間に適度な間隙が保たれ,均一に乾燥が行なわれている.得られた乾燥馬鈴薯の水分復元性はこれまでの実験で最も優れていた.
(5) 乾燥時間が短く,かつ水分復元性の良い製品を得るためには,表層部に澱粉糊化を生じさせないよう通風空気温度を低く抑え,また内層部の澱粉が糊化しない温度範囲で,内部温度を表層より高温に保持することが望ましい.これは供給マイクロ波電力を調整することにより可能である.このような状態で乾燥すると,内部水分を蒸気の状態で急速に表面に移動することができる.またこれが表面硬化を防ぎ,水分復元性を良くする要因と考えられる.
抄録全体を表示