市販麦味噌を用い-10℃,4℃,20℃および37℃で3ヵ月保存した間の一般成分,抗酸化力,糖および脂質の変化について調べた.
(1) 一般成分は保存温度が高いほど,変化が著しかった.特に,37℃区における直接還元糖,ホルモール窒素の減少およびpHの低下は顕著であった.
(2) リノール酸に対する抗酸化力は,着色度の高い20℃,37℃区のほうが強かった.
(3) 全糖画分および遊離糖画分の構成糖はグルコースが最も多く,その他フラクトース,ガラクトース,アラビノースおよびキシロースが少量検出された.保存中のこれらの糖は,4℃以下の場合,全期間を通じて大きな変化はなかったが,37℃区では,期間が長くなるに従ってグルコースの減少,フラクトースの増加が認められた.
(4) 主要脂質成分はトリアシルグリセロール,脂肪酸エチルエステルであった.保存中の脂質成分の消長は,高温で,長期間保存ほどトリアシルグリセロールは減少し,脂肪酸エチルエステルは増加した.遊離脂肪酸は,保存温度が高いほど減少し,逆に各区とも期間が長くなるに従って増加した.
(5) 全脂質画分,トリアシルグリセロール画分,遊離脂肪酸画分および脂肪酸エチルエステル画分の脂肪酸ではリノール酸が最も多く,次いでオレイン酸,パルミチン酸の順であった.遊離脂肪酸画分でのパルミチン酸は,他の脂質画分に比べて多く,逆にリノール酸は少なかった.脂肪酸エチルエステル画分では,トリアシルグリセロール画分に比べて,パルミチン酸およびリノール酸が多かった.保存中の脂肪酸組成の変化は全般的に少なかったが,パルミチン酸は保存温度が高いほど,遊離脂肪酸画分では少なく,逆に脂肪酸エチルエステル画分では多かった.
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