米の食味評価上で重要視される米飯のレオロジー的性質を普遍的に表す指標の探索を目的に,品種,精米の調製条件,炊飯条件を異にした米飯の動的粘弾性を微小体用動的粘弾性測定装置により測定し,以下の結果を得た.
(1) 米飯のレオロジー的性質の品種特性は,損失正接,動的弾性率を用いることで把握できると考えられた.
(2) 動的弾性率は精米歩合,炊飯時加水量により変化するとともに,その変動係数は9~24%と大きかった.しかし,損失正接は精米歩合,炊飯時加水量に影響されず,その変動係数も5%以下であったことより,品種特性等を表す米飯のレオロジー的性質の普遍的指標としてきわめて有用と思われた.また,損失正接の値が近い品種の場合は,動的弾性率により類別できると考えられた.
(3) 蒸し,電気炊飯,マイクロ波加熱による米飯では,動的弾性率,動的損失は大きく変化し,これらの値は加熱方法による食感の差を良く表していた.損失正接は蒸しと電気炊飯ではほとんど同じであったが,マイクロ波加熱では大きくなっていた.このことより,損失正接は加熱方法が同じであれば,普遍的な値として得られると考えられた.
(4) 電気炊飯による米飯を24時間放置した場合,動的弾性率の上昇,損失正接の低下が認められ,それらが食感の変化と符合することから,特に,損失正接は米飯の食感を表す指標ともなり得ると考えられた.
(5) 米飯の特性を良く表すこの損失正接は,アミロース含量およびアミログラフ特性値のブレークダウンと対応しているところから,澱粉の加熱崩壊性を表していると考えられた.
抄録全体を表示