日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
40 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 大家 千恵子, 川端 晶子
    1993 年 40 巻 4 号 p. 225-235
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    品種の異なるコシヒカリ,ササニシキ,あきたこまち,品種A(高アミロース米),品種B(高タンパク米)及び日本晴の6種類の澱粉のアミロペクチンの鎖長分布と糊化特性を検討した.
    1. アミロペクチンの鎖長分布より次のことが明らかとなった.
    (1) Fr. III/Fr. IIの値はコシヒカリが3.52,ササニシキ3.78,あきたこまち3.72,高アミロース米4.98,高タンパク米4.13,日本晴3.38であった.
    (2) コシヒカリは他の5品種の米と比較して特に平均鎖長50~60の長鎖が12.5mol%と割合が多く,また短鎖では他の品種では10~20の鎖長が多いのに対し,コシヒカリは10以下の鎖長が37.5mol%と多い傾向を示した.
    (3) Fr. IIとFr. IIIの和の数平均鎖長は21~23で品種間の差は認められなかった.しかしFr. IIIの数平均鎖長は,高アミロース米では10.6と他の5種類の品種より短い傾向を示した.
    (4) アミロペクチンの鎖長分布をみてみると,B3鎖,B2鎖,A+B1鎖は粳米澱粉では4.2~12.5, 12.5~20.8, 68~79.2 mol%となり,糯米澱粉の1.1, 8.0, 90.9 mo1%と比較して,粳米澱粉はアミロペクチンの長鎖のmol%が多く,その反対に短鎖のmol%が少ない傾向を示した.
    2. 澱粉懸濁液の糊化過程における動的粘弾性は95℃における複素弾性率(G*)はコシヒカリ>日本晴>あきたこまち>ササニシキ>高タンパク米>高アミロース米の順であった.
    3. アミロペクチンのFr. III/Fr. IIの値と物理的特性値との相関をみたところFr. III/Fr. II値と澱粉の糊化過程の動的粘弾性の複素弾性率(G*)との間でr=-0.871と負の相関が認められた.またDSCの転移熱量との間でr=-0.963と負の相関が認められた.
  • 吉井 洋一, 乙部 和紀, 杉山 純一, 有坂 将美, 菊池 佑二
    1993 年 40 巻 4 号 p. 236-243
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    米の食味評価上で重要視される米飯のレオロジー的性質を普遍的に表す指標の探索を目的に,品種,精米の調製条件,炊飯条件を異にした米飯の動的粘弾性を微小体用動的粘弾性測定装置により測定し,以下の結果を得た.
    (1) 米飯のレオロジー的性質の品種特性は,損失正接,動的弾性率を用いることで把握できると考えられた.
    (2) 動的弾性率は精米歩合,炊飯時加水量により変化するとともに,その変動係数は9~24%と大きかった.しかし,損失正接は精米歩合,炊飯時加水量に影響されず,その変動係数も5%以下であったことより,品種特性等を表す米飯のレオロジー的性質の普遍的指標としてきわめて有用と思われた.また,損失正接の値が近い品種の場合は,動的弾性率により類別できると考えられた.
    (3) 蒸し,電気炊飯,マイクロ波加熱による米飯では,動的弾性率,動的損失は大きく変化し,これらの値は加熱方法による食感の差を良く表していた.損失正接は蒸しと電気炊飯ではほとんど同じであったが,マイクロ波加熱では大きくなっていた.このことより,損失正接は加熱方法が同じであれば,普遍的な値として得られると考えられた.
    (4) 電気炊飯による米飯を24時間放置した場合,動的弾性率の上昇,損失正接の低下が認められ,それらが食感の変化と符合することから,特に,損失正接は米飯の食感を表す指標ともなり得ると考えられた.
    (5) 米飯の特性を良く表すこの損失正接は,アミロース含量およびアミログラフ特性値のブレークダウンと対応しているところから,澱粉の加熱崩壊性を表していると考えられた.
  • 深谷 哲也, 石黒 幸雄, 横山 理明, 廣井 誠治, 村岡 明高
    1993 年 40 巻 4 号 p. 244-249
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    人参に対する次亜塩素酸ナトリウム処理が,オフフレーバーを引き起こす可能性があるのかどうかを検討した結果,以下の知見を得た.
    (1) GC-MS-SIM分析を用いることで,各種クロロフェノ〒ル類の低濃度での検出を可能とした.
    (2) 人参の次亜塩素酸ナトリウム処理条件を検討した結果,2,6-DCPの生成量は,高濃度処理・長時間処理で増加する傾向であった.次亜塩素酸ナトリウム処理を行わなかった区分においては,2,6-DCPは全く検出されなかった.
    (3) 人参の加熱条件を検討した結果,加熱条件と2,6-DCPの生成量の相関は顕著に現れた.2,6-DCPの生成限界は,F0=1.0分付近と推測された.加熱を行っていない区分においては,2,6-DCPは全く検出されなかった.加熱処理が,カルキ臭様オフフレーバーの原因物質である2,6-DCPの生成を誘発することから,次亜塩素酸ナトリウム処理された人参を使用する場合は,加熱工程のない食品に限定することが望ましい.
  • 井上 茂孝, 井門 和夫, 高野 克己, 西谷 紹明, 巽 清, 鴨居 郁三
    1993 年 40 巻 4 号 p. 250-255
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    レンネットカゼイン単独で繊維状組織化物を調製すると,直後は良好な繊維性を示すが,時間の経過に伴って繊維は互いに融合し,繊維性が低下する.そこで,レンネットカゼインに対して5%のWPIおよびSPIを加えて繊維状組織化物を調製し,その繊維性の維持に対する影響を検討した.
    繊維間の結着性を測定すると,WPI添加試料では繊維軸に対して直角方向の引っ張り破断荷重が低下しており,繊維間の結着が阻止されて良好な繊維性が維持されていることが確認された.またSPI添加試料では逆に破断荷重が増加していた.
    繊維間融合防止機構の解明の一助として,組織化物の表面疎水性度をANS蛍光強度法および疎水性クロマトグラフィー法で検討したところ,WPI添加試料では両測定結果とも疎水性度が低下し,SPI添加試料は逆に疎水性度が増加していた.以上より,WPIの添加によるカゼイン繊維間の融合阻止効果は,WPIを添加することにより,組織化物中のタンパク質の表面疎水性度が低下することによって発現するものと考察した.
  • 高橋 真美, 菊池 俊彦
    1993 年 40 巻 4 号 p. 256-261
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    土壌から強い凝乳活性を示した一糸状菌を分離し,試験の結果,まだ凝乳性に関する報告例のないA. ustusと同定した.次いで,本菌株のふすま培養物から粗酵素を抽出し,硫酸アンモニウム塩析の後,順次Amberlite CG-50およびSephacryl S-200カラムクロマトグラフィーを行い,回収率は2.3%,比活性で18.7倍,電気泳動で単一タンパクまで精製した.本酵素の分子量は86000と推定された.凝乳活性(MCA)はpHの低下につれて増加しpH6.75以上では活性は認められなかった.タンパク分解活性(PA)の最適反応pHは6.0付近にみられた.また,MCA, PAともにpH3.0~6.0において安定であった.最適反応温度は,MCAが63℃付近,PAは50℃付近に認められた,MCA, PAともに40~45℃付近から失活が始まり,55℃で両者ともほとんど失活した.MCAのCa2+依存度は高いが,PAはほんんど影響されなかった.カゼインに対するKm値は0.27%であった.二価金属イオンのうちMCA, PAを若干阻害するものもあったが,NEMおよびSDSの阻害は著しく,特にSDSによってMCAは完全に失活した.本酵素はキモシンに比べ,αs1-カゼイン分解性は極めて低いが,β-キモシンには著しく高いことが認められ,κ-カゼインについては大きな差異のないものと考えられた.
  • 松本 信二, 三森 一司, 谷口 正幸, 高野 克己, 鴨居 郁三
    1993 年 40 巻 4 号 p. 262-267
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    追熟中のキウイフルーツ果肉から澱粉を精製し,その性状について検討し,以下のような結果が得られた.
    (1) 走査型電子顕微鏡により観察したところ,追熟に件う組織の崩壊および澱粉粒の表面から一様に分解されることが認められた.
    (2) 糊化開始温度は追熟開始時66℃, 6日で64℃,12日では62℃と追熟が進むに従って温度の低下が認められたが,糊化開始時における,一時的な透光度の減少は見られなかった.
    (3) X線回折はB図形を示し,追熟による変化は認められなかった.
    (4) イソアミラーゼにより枝切りし,セファデックスG-75で分画したところ,アミロースに由来するF-1,アミロペクチンに由来するF-II, F-IIIの3画分が得られた.F-Iの構成比は追熟開始時8.1%, 6日で13.0%, 12日では19.1%と上昇したが,これは追熟によりアミロペクチンが分解されて減少したため,相対的に含有率が上昇したものと推察された.アミロペクチンに由来する画分の平均重合度は,F-IIが34~36, F-IIIが14~16を示し,追熟による変化は認められなかった.
  • 中条 均紀, 森山 裕子
    1993 年 40 巻 4 号 p. 268-271
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    AwとpHがB. coagulans胞子の耐熱性に及ぼす影響を調べた.供試胞子は,任意のAw値およびpH値に調整した培地中で加熱し,そのまま後培養した.発育可能最小pH値は,Aw約1のとき,4.5,発育可能最小Aw値はpH7.0のとき,塩化ナトリウムでは0.98,塩化カリウムでは0.97~0.98,ショ糖では0.94,グリセリンでは0.92であった.溶質に塩化ナトリウムを用い,Aw (0.98~1)とpH (4.5~7.0)の組み合わせ条件とみかけのD値との関係を調べ,得られた結果を重回帰分析し,任意のAw値とpH値におけるD値を推定するための数式を示した.
  • 井門 和夫, 井上 茂孝, 高野 克己, 西谷 紹明, 巽 清, 鴨居 郁三
    1993 年 40 巻 4 号 p. 272-274
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    ホエータンパク質(WPI)添加による,レンネットカゼイン組織化物の繊維性改良効果のメカニズム解明のために,ホエータンパク質よりα-Laおよびβ-Lgを単離して各々その添加効果について検討した.
    繊維性の維持に対してはα-Laの添加は効果無く,β-Lgの添加が有効であった.また,その時の組織化物の疎水性度の変化についてANS蛍光強度法および疎水性クロマトグラフィー法で調べた結果,β-Lgの添加は組織化物の疎水性度を低下させ,α-Laはほとんど変化を与えないことが判明した.以上の結果より,ホエータンパク質添加による繊維性の維持効果の主体は,ホエータンパク質成分中のβ-Lgであって,それとレンネットカゼインとの相互作用の結果,表面疎水性度が減少することによって繊維間の融合が阻止されるものと推察した.
  • 末永 光, 古田 正範, 大田 修明, 山口 剛, 山下 純隆
    1993 年 40 巻 4 号 p. 275-277
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    横型の隔室回転ドラム式バイオリアクターを用いて,液中への多量の無菌空気の吸き込みを必要とする従来の縦型カラム式バイオリアクターでは困難であった発泡性を有するカキワインを原料として,カキ酢の連続発酵試験を消泡剤の添加無しに行い,以下の結果を得た.
    (1) 横型の隔室回転ドラム式バイオリアクターを用い,カキワインを原料としてカキ酢を40日間にわたり連続的に安定して生産した.
    (2) カキ酢連続醸造中のリンゴ酸,クエン酸,コハク酸共,原料カキワイン中の濃度とほぼ同じ値を示し,食酢連続発酵による減少はほとんど認められなかった.
    (3) カキ酢中の遊離アミノ酸含量はカキワインのそれと比較して減少していた.
  • アミログラム特性と米菓生地膨化性の関係
    山田 博治, 笹川 信夫, 北沢 清
    1993 年 40 巻 4 号 p. 278-286
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    (1) 新形質米粳種13品種・系統を供試し,実験室で規模で,常法の粳米菓製造試験を行い,米菓適性を判定した.
    (2) 米菓製品の膨化性がアミログラム特性の最終粘度/最高粘度と負の相関が高く,膨化性の良否がこの指標で判断できると考えられた.
    (3) 低アミロース米は膨化性が良く,ソフトタイプ米菓に優れた適性があった.反対に高アミロース米は膨化性が悪く,ソフトタイプ米菓には不適であった.しかしホシユタカは糊化条件を改善することにより,堅焼タイプ米菓としての適性があらわれた.
    (4) 巨大粒,細小粒等,米粒の大きさが主要特性とする米は,粒の大小が米菓の品質上問題となることは少なかった.しかし,糠層が厚いために搗精歩留りを下げる必要のある米や,搗精時に砕粒発生の多い米があるため,搗精歩留り,整粒歩合に注意する必要があると考えられた.
    (5) 香り米は米菓においては好ましい風味と評価された.しかし通常米70%,香り米30%の米菓製品では香りが残らないことが分った.
    (6) ソフトタイプ米菓に適性がある米は,加工条件の調整で堅焼タイプ米菓にも可能であると判定できるが,堅焼タイプで適性があっても,ソフトタイプには必ずしも可能とは言えなかった.(これは米菓およびその適性が,膨化度が高いことを必要とするソフトタイプ米菓と,膨化度は低くてもよい堅焼タイプとに大別されるからである.)
  • 宋 項光, 長岡 利, 金丸 義敬, 葛谷 泰雄
    1993 年 40 巻 4 号 p. 287-295
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    Plasmin and plasminogen activities and casein degradation during ripening of Swiss-type cheese made from raw milk were studied. The average contents of plasmin of raw milk and green cheese were 18 nmol pNA/ml and 436 nmol pNA/g, respectively. The level of plasmin activity in cheese decreased gradually over a period from 1 to 20 days during ripening and then maintained the same level until the end of ripening (90 days). Thus there was a significant decrease (P<0.05) in plasmin activity between day 1 and 20, but there were no significant differences (P<0.05) in plasmin activity among 20, 40, 60 and 90 day samples of the cheese. The range in plasminogen activity for green cheese was from 708 to 880 nmol pNA/g, with an average of 819 nmol pNA/g. The course of the curve representing change of plasminogen activity during cheese ripening showed similar results with that of plasmin activity. Electrophoretograms of the proteins in the cheese indicated that as the ripening age of the cheese increased, major caseins were broken down, i. e., αs1-casein intoas1-I-casein and also β-casein into γ1-, γ2- and γ3-caseins. The αs1-casein in ripening of the cheese was degraded faster than the β-casein so that in 90 days old cheese only 22% and 46%respectively of these proteins remained intact.
  • 鎌田 慶朗, 三瓶 重徳, 山内 文男, 山田 實
    1993 年 40 巻 4 号 p. 296-298
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    豆乳からのチーズ様食品の製造のため,市販のパパインを担体被覆法で固定化した. 12種類のイオン交換体とキトサン・ビーズを検討した結果,ポーラス・タイプで強酸性のイオン交換体(ダイヤオンRCP 170H,HPK 25)がよい結果を示し, 75mlの固定化酵素を用いたリアクターでは約2000mlの豆乳をカードにすることができた,また,固定化酵素量を約8倍にした場合は処理量も約8倍となった.
  • 加圧食肉タンパク質の加熱ゲル形成能
    池内 義英
    1993 年 40 巻 4 号 p. 299-307
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 柏木 豊
    1993 年 40 巻 4 号 p. 308
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
feedback
Top