日本化学療法学会雑誌
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46 巻, 7 号
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  • 澤木 政好, 三笠 桂一, 古西 満, 前田 光一, 成田 亘啓
    1998 年 46 巻 7 号 p. 239-247
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    難治性慢性下気道感染症に対する有用な治療法を確立するためにerythromycin (EM) 長期治療の臨床的検討を行った。対象はびまん性汎細気管支炎13例。全例多量の膿性痰と労作時呼吸困難, PaO2の低下を伴い, TTA検出菌はHaemophilus influenzaePseudomonas aeruginosaであった。EMの投与量は600~1,200mg/日, 投与期間は12~41か月であった。臨床効果は著効1例, 有効10例, やや有効2例で緑膿菌感染例2例も有効であった。QOLは全例に改善した。しかし治療前PaCO2の上昇していた症例では臨床効果は低く, EM長期治療の早期の開始が望まれた。長期投与による副作用はなかった。EM長期治療中の急性増悪はウイルス性上気道炎を契機におこり, 主な急性増悪菌はH. influenzaeStreptococcus pneumoniaeであった。EM長期治療が無効症例にはclarithromycin長期投与が有効であった。EM長期治療の終了時期については。臨床症状 (特に膿性痰) が消失し, 胸部X線上びまん性粒状影が消失した時期にEM長期治療の終了を考慮してもよいと考えられる。以上から慢性下気道感染症に対するEM長期治療は有用な治療法である。
  • 井上 美晴, 岩田 守弘, 樫谷 総子, 山口 惠三
    1998 年 46 巻 7 号 p. 248-253
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    薬剤感受性試験マイクロプレートのウェルへの分注操作を簡略化したキットの開発を試みた。考案したキットは, 上面より被験培養液 (菌液) を注人すると余剰液がキット下部にセットした吸水体により吸水され, ウェルにのみ被験培養液 (菌液) が定量的に保持される構造となっている。キット試作品を川いて余剰液の吸水時間, ウェルの定量性などの物理的基本性能を検討した結果, 良好な成績が得られた。本法は, 各薬剤を含むウェルへの被験培養液 (菌液) の分注操作を簡略化させることで分注器 (ディスペンサー) あるいは菌液トレーなどが不要となることを特徴としており, このことにより導入時のイニシャルコストの低減, および滅菌を必要とする廃棄物などの減少が可能となる。本キットを用いて121菌株, 15薬剤の菌発育阻1上濃度 (MIC) について用子法と比較したところ, 相関係数0.9938~0.9950と非常に高い相関を示し, 薬剤感受性試験への応用が十分可能であると判断された。
  • 木下 智, 尾上 孝利, 佐野 寿哉, 杉原 圭子, 大宮 真紀, 松本 和浩, 西崎 健生, 栗林 信仁, 山本 憲二, 田伏 信, 村田 ...
    1998 年 46 巻 7 号 p. 254-260
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    歯性感染症の化学療法に用いる抗菌薬を検討するため, ヒト唾液常在菌叢より嫌気性グラム陰性桿菌を分離し, ampicillin (ABPC), cefaclor (CCL), cefteram (CFTM) およびofloxacin (OFLX) のMICとβ-lactamase産生性を調べた。嫌気性グラム陰性桿菌は50名中41名より合計77株得られ, 同定の結果, Prevotella melaninogenicaPrevotella intermediaなどの黒色色素産生性グラム陰性桿菌が多数を占めた。Prevotella, Porphyromonas gingivalisおよびBacteroides ureolyticusに対する各抗菌薬のMIC分布域は広く, CCL, CFTMおよびOFLXのMIC分布は2峰性を示すことより耐性限界値を定め, この他を超えて発育する株を耐性菌とした。耐性限界値はCCL, CFTMおよびOFLXでそれぞれ32, 16および16μg/mlであった。また, ABPCでは3峰性を示し, 耐性限界値は1μg/mlで, 16μg/ml以下を中等度耐性菌, 16μg/mlを超えるものを高度耐性菌とした。Fusobacterium sp. や未同定株も同様にMIC分布から耐性限界を定めて耐性菌を分離した。耐性限界値はFusobacterium sp.ではCCLで16μg/mlを示し, 未同定株ではABPC, CCL, CFTMおよびOFLXでそれぞれ64, 16, 32および16μg/mlであった。耐性菌は合計41株分離され, 1薬剤耐性が16株, 2薬剤耐性が8株, 3薬剤耐性が16株および4薬剤耐性が1株であった。β-Lactamase産生菌は32株検出された。そのうち3株は3種β-lactam薬に感受性であった。OFLXに耐性を示す菌株のうち1株からβ-lactamaseが検出されたが, β-lactam薬耐性は示さなかった。5株のOFLX耐性菌はβ-lactam薬にも耐性を示した。以上の事実は11腔常在菌叢である唾液中にβ-lactam薬耐性, β-lactamase産生性あるいはOFLX耐性の嫌気性グラム陰性桿菌が生息しており, 内因感染症である歯性感染症に対して化学療法を実施するときは, 注意深く抗菌薬を決定し用いなければならないことを示唆している。
  • 高橋 洋, 菊地 暢, 徳江 豊, 小林 隆夫, 庄司 聡, 本田 芳宏, 千葉 潤一, 藤村 茂, 貫和 敏博, 渡辺 彰
    1998 年 46 巻 7 号 p. 261-265
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Eikenella corrodensは口腔, 上気道, 腸管への常在性を有する微好気性のグラム陰性桿菌であり, 近年その病原性は確立されてきているが, 呼吸器感染症における報告例はまだ乏しい。今回われわれは経皮肺穿刺あるいは胸腔穿刺にてE.corrodensが検出された肺膿瘍, 肺嚢胞く次感染および膿胸の3症例を経験した。本菌はCO2要求性が強く, 増殖が穏やかで小さく平坦なコロニーを形成し, しばしば同時分離菌のovergrowthによってそのコロニーが隠されてしまうため, ルーチンの喀痰検査ではなかなか検出されにくく, 診断上注意が必要である。また本菌はclindamycinに耐性, 一部のセフェム系抗菌薬にも低感受性と, 化膿性疾患の起炎菌としては独特の抗菌薬感受性を示すため治療トも注意が必要である。
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