日本化学療法学会雑誌
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56 巻, 1 号
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  • 吉岡 睦展, 竹中 雅彦, 新 康憲, 折田 環, 春藤 和代, 渡 雅克
    2008 年 56 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバペネム系抗菌薬は, L-システイン又はL-シスチンを含むアミノ酸製剤との配合で著しく力価が低下することが報告されている。一方, アミノ酸含有輸液製剤の側管から抗生剤を投与する方法は, 臨床上広く用いられているにもかかわらず, その影響について評価た報告はない。そこで, カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) の効果を減弱する因子として, アミノ酸含有輸液製剤への側管投与に着目し, 臨床効果に及ぼす影響を検討した。対象として2006年5月から10月までの6カ月間におけるDRPM全投与例 (97例) をレトロスペクティブに調査し, 点滴ルートにおける投与方法の違いによって, アミノ酸含有輸液製剤の側管から投与した接触群 (以下.アミノ酸群) およびアミノ酸含有輸液製剤とは別ルートで投与した非接触群 (以下, 非アミノ酸群) とに分類した. アミノ酸群および非アミノ酸群は47および50症例であった。有効性 (解熱) に影響を及ぼすリスク因子を検討した結果, アミノ酸含有輸液製剤への側管投与の有無に対するオッズ比は0.249 (95%信頼区間: 0.088~0.708) であり, アミノ酸群は明らかなリスク因子であることが判明した。
    さらに, DRPM投与前後における体温およびWBC数の低下率は, アミノ酸群では非アミノ酸群に比べいずれも有意に低く (p<0.05), DRPMはアミノ酸含有輸液製剤への側管投与によって効果が減弱することが示唆された. したがって, カルバペネム系抗菌薬をアミノ酸含有輸液製剤の側管から投与する場合は, アミノ酸含有輸液製剤の一時的中断又は別ルートからの投与を推奨する。
  • スコアリングシステムを用いた評価
    保富 宗城, 藤原 啓次, 宇野 芳史, 寒川 高男, 木下 和也, 小林 政美, 林 正樹, 林 泰弘, 神人 崇, 木村 貴昭, 與田 ...
    2008 年 56 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    急性鼻副鼻腔炎に対するgatifloxacin (GFLX) の有用性を, 臨床症状 (鼻漏・後鼻漏, 発熱, 顔面痛・前頭部痛) および鼻腔所見 (粘膿性鼻漏・後鼻漏, 漿液性鼻漏・後鼻漏, 鼻粘膜腫脹, 鼻粘膜発赤) に基づくスコアリング・システムを用い, 重症度分類別に検討した. スコアリング・システムを用いた重症度分類は, 経験的判断による重症度を反映するものであり, 急性鼻副鼻腔炎の臨床経過を客観的に評価しうるものであった. 急性鼻副鼻腔炎に対するGFLXの臨床効果の検討では, 臨床症状は軽症中等症, 重症のいずれにおいても治療前後でスコアが有意に低下した. 一方, 鼻腔所見は, 軽症例では治療前後でスコアは変化しなかったが中等症例および重症例では治療前後でスコアが有意に低下した. 細菌学的検討では, 54.0%の症例で中鼻道分泌物よりStreptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalis のいずれかが検出されたが, GFLXによる治療により, これらすべての菌は消失した. 臨床効果および細菌学的効果から, GFLXによる急性鼻副鼻腔炎治療の有効率は98.0%(49例中48例) で認められた.
    以上のことから, GFLXは急性鼻副鼻腔炎に対して有効な抗菌薬であると考えられた.
  • 網中 眞由美, 桑原 京子, 北村 昭夫, 東出 正人, 三澤 成毅, 近藤 成美, 小林 寅哲, 菊池 賢, 平松 啓一
    2008 年 56 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2005年に市中医療機関の臨床材料から分離された呼吸器感染症の原因となる各菌種および, 2003年以降に臨床材料から分離されたlevofloxacin耐性Streptococcus pneumoniaeに対して, フルオロキノロン薬であるgemifloxacin, およびその他のフルオロキノロン系抗菌薬の薬剤感受性を測定した。
    S.pneurnoniaeに対するgemifloxacinのMIC値は0.031μg/mL/で他のフルオロキノロン系抗菌薬より強い抗菌力を示した。levofloxacin耐性S.pneumoniaeに対してもgemifloxacinはMIC90値は0.5μg/mLで, moxifloxacin (MFLX), gatifloxacin (GFLX), tosufloxacin (TFLX), sparfloxacin (SPFX), levofloxaein (LVFX), ciprofloxacin (CPFX) の16~128倍以上の強い抗菌力を示すことがわかった。Haemophilus influenzaeに対するgemifloxacinのMIC90値は0.015μg/mLで強い抗菌力を示し, そのうちampicillin耐性β-lactamase非産生Haemophilus influenzae (BLNAR) に対しては, gemifloxacinのMIC90値は0.063μg/mLであった。Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対するgemifloxacinの抗菌力は他のフルオロキノロン系抗菌薬とともに低かったが, Moraxella (Branhameila) cafarrhalis, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaでは, 他のフルオロキノロン系抗菌薬と同等の強い抗菌力を示し, gemifloxacinは今後臨床において有効な呼吸器感染症治療薬の一つになること示唆された。
  • 桑原 正雄, 土井 正男, 池松 秀之, 沖本 二郎
    2008 年 56 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは, 使用実態下において, 中等症の市中肺炎を対象として, levofloxacin (LVFX) の国内承認最大用量である600mg分3/日投与例および初期治療における短期間 (3日以内) の注射薬使用例を集積することにより, 本治療法の臨床効果と安全性を検討した。
    その結果, 臨床効果解析対象症例における有効率は90.3%(84/93例) であった。各治療法の内訳は, LVFX単独治療群59.1%(55例), 併用治療群30.1%(28例), スイッチ治療群10.8%(10例) であり, それらの有効率はおのおの90.9%, 89.3%, 90.0%であった。
    原因菌は51.6%(33/64例) 検出され, 主な原因菌は, Streptococcus pneumoniae20.3%, Haemophilus influenzae17.2%, Moraxella catarrhalis4.7%であった。治療法別の細菌学的効果はLVFX単独治療群100%(13/13例), 併用治療群91.7%(11/12例), スイッチ治療群100%(1/1例) であった。非定型病原体は, Legionella pneumophilaは検出されず, Mycoplasma pneumonine, Chlamydia pneumoniaeは抗体価検査でおのおの6.8%(3/44例), 16.7%(6/36例) 検出された。また, M.pneumoniae, C.pneumoniae検出例9例における臨床効果は全例有効であった。
    副作用は120例中12例 (10.0%) に発現したが, うち9例が軽微であり, 全例LVFXの投与継続が可能であった。3例に中等度の副作用が発現したが.LVFX投与終了後速やかに回復していた。本調査の対象症例の半数以上が高齢者であったがLVFX600mg分3/日投与に関して特に注意すべき安全性上の問題点は認められなかった。
    以上より, LVFX600mg分3/日単独投与, および初期治療における短期間 (3日以内) の注射薬の使用により, 中等症の市中肺炎に対して高い有用性が期待できることが示され, 早期からの外来治療を可能にし, 医療経済的にも効果的な治療法になりうると考えられた。
  • 東山 康仁, 渡辺 彰, 青木 信樹, 二木 芳人, 河野 茂
    2008 年 56 巻 1 号 p. 33-48
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    NICE Studyの結果, 本邦におけるCOPDの患者数は約530万人であり, 欧米と同様に罹患率が高いことが明らかになったが, その多くは潜在患者であり, 実際にCOPDと診断されている患者数は20万人程度である。
    今回, われわれは, 使用実態下において, すでにCOPDと診断されている患者のうち, 外来治療が可能な急性増悪患者を対象に, 本邦のガイドラインで推奨されている経口ニューキノロン系抗菌薬 (levofloxacin: LVFX) と経口β-ラクタム系抗菌薬の有用性を比較検討した。
    臨床効果解析例249例の有効率はLVFX投与群で81.2%(155/191), β-ラクタム系抗菌薬投与群483%(28/58) であり, 両群間に有意差が認められた。各臨床症状の改善率を比較した結果, LVFX投与群の喀痰量, 喀痰色調, 咳徽の改善率はβ-ラクタム系抗菌薬投与群に比べ有意に高く, QOL改善効果においても, LVFX投与群は有意に高い改善効果を示した。また, 急性増悪の症状が改善しないため再受診した患者の割合は, LVFX投与群10.5%(20/191), β-ラクタム系抗菌薬投与群22.4%(13/58) であり, LVFX投与群の再診率は有意に低かった。
    原因菌は40.0%(32/80) で検出され, 主な原因菌はStreptococcus pneumoniae (8.8%), Haemophilus influenzle (10.0%), Moraxella catarrhalis (15.0%) であった。Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia pneumoniaeの陽性率はおのおの1.1%(1/95), 0%(0/95), インフルエンザウイルス, アデノウイルス, RSウイルスの陽性率はおのおの9.0%(8/89), 1.2%(1/83), 1.2%(1/83) であった。
    副作用発現率はLVFX投与群で2.4%(7/296), β-ラクタム系抗菌薬投与群4.5%(4/88) であり, 各投与群とも重篤な副作用は認められなかった。また, 約半数が75歳以上の後期高齢者であったが, 各投与群とも高齢者で副作用発現率が高くなる傾向は認めらなかった。
    以上より, 本調査は使用実態下で行ったため, 無作為比較試験ではないものの, 本調査で対象としたCOPDの急性増悪患者に対しては, 強い抗菌力と良好な喀痰内移行性を有するLVFXを優先して選択すべきと考えられた。
  • 永山 在明, 山口 惠三, 渡邉 邦友, 田中 正利, 小林 寅哲, 永沢 善三
    2008 年 56 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1968年にわが国独自の最小発育阻止濃度 (MIC) 測定法である寒天平板希釈法が制定された。その後諸外国でのMIC測定法との間で2, 3の差違がみられたことから, 1981年に三橋進委員長により再改正版が報告され現在まで使用されてきた (Chemotherapy, Vol.29, 1981)。
    この期間, 1979年に小酒井望委員長により嫌気性菌に関する寒天平板希釈法による測定法が制定され (Chemotherapy, Vol.27, 1979), 1990年には五島瑳智子委員長により一般細菌を対象とした微量液体希釈法が新たに追加承認された (Chemotherapy, Vol.38, 1990)。さらに斎藤厚委員長により, 一般細菌および栄養要求性の厳しい菌種を対象とした培地の検討および嫌気性菌を対象とした微量液体希釈法の検討がなされ, 1992年に第40回日本化学療法学会総会で提案し, 一部原案に修正を加えられた後, 学会標準法として設定された (Chemotherapy, Vol.41, 1993)。
    今回, 日本化学療法学会では寒天平板希釈法による測定法の改定が約20年近く行われていなかったことより再検討の依頼があり, 上記委員が委託され委員会が組織された。この委員会では1981年に再改定された測定法と国際的な標準法であるClinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の測定法を比較し改定のための検討を行った。
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