10月から12月中旬まで,成熟過程を6期に分けて各種温州ミカンを調べた。
(1) 全カロチノイドは11月初旬から急激に増加しはじめるが,普通温州の杉山,晩生の佐藤などよりも早生温州の宮川,中間早生の米沢の方が増加率が高い。
(2) 一般の温州ミカンの果皮をTLCにかけるとH,M, MM, D, DM1, DD1, DM2, DD2, Pの9グループに分かれるが,果皮の着色が真紅となる紅土橋ではMMが消え,その代わりMとDの間に未知のカロチノイドU1, U2, U3が現われる。U1, U2, U3は同一カロチノイドの異性体と推定される。
(3) 成熟過程のカロチノイドパターンをみると,オレンジ色の着色が進むに従ってパターンは変化し,M,MM, DM (DM1+2), DD (DD1+2)が増加し,H, D,Pは減少する。またカロチノイドグループの量的なパターンをみると,全期間にわたりH, D, Pの含量はほとんど変化なく,オレンヂ色の着色はM, DPの急激な増加に負うところが大きい。
(4) 紅土橋のU (U1+U2+U3)は成熟にともない急激に増加し,最終採取期にはカロチノイドグループ中では最も多くなり26%を越える。このUグループの存在が真紅色の原因で,Uを除くと他の温州のカロチノイドパターンとよく一致する。また紅土橋の成熟過程でのパターンの変化で他の温州と異なるのは,Uの存在の他にDが成熟とともに減少することである。
(5) 各種の完熟した温州ミカンのカロチノイドパターンをみると,オレンヂ色の濃いものほどMとDD2の量が多くなり,またDD1/DD2は小さくなる。
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