(1) 照射食品に残存する遊離基を調べるため,米,小麦の全粒と,それを胚乳,ヌカ,フスマに分けたもの,およびその成分のデンプンとグルテンを試料とし,これらをγ線照射した直後から経時的にESRスペクトルを測定して検討した。
(2) 残存遊離基量は,米と小麦間,またそれらの品種間にもあまり差がなく,いずれの場合も試料の水分含量を始め,酸素,温度に影響される。とくに平衡水分以下の場合,残存量が著しく大きくなり,この分は照射後比較的すみやかに減少してゆく。
各成分を各種条件下で照射してESRスペクトルの変化を調べた結果,二種類の遊離基が存在すること,その一方は上の場合のとくに水分の少ない時にみられるESRスペクトルの主体をなすもので,線幅22~23Gで,主として胚乳部のデンプン中に存在し,これは酸素に対する感受性も大きく,照射後,比較的すみやかに減衰するものであると推定された。一方,グルテンの場合の12G,ヌカの場合の11Gのスペクトルは,かなり安定で長時間存在することがわかった。
(3) 本実験の結果,米,小麦を0.3 Mrad以下で照射し,空気中20℃程度の室温で貯蔵した場合には,残留遊離基は数日間で消滅する。したがって,照射食品の検知手段の点からも,また成分変化,安全性などの点からも,残留遊離基が問題にはならないと考えられる。
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