鶏卵卵黄を超遠心分離して得たLDLおよびHDL画分の組成,電気泳的性質,構成脂肪酸の性状を検索した結果を要約すると次の如くである。
(1) LDLとHDLの組成では脂質含量に差があり,LDLでは86%,HDLでは27%であった。また総窒素はLDL 2.4%, HDL 0.9%でありリン含量も脂質画分,非脂質残渣ともHDLの方が高く総リン量は1.0%,1.8%であった。
(2) LDLとHDLのセルロース・アセテート膜電気泳動でLDLは陽極側にかなり移動するが,アミドブラック染色,PAS染色,オイルレッド染色とも共染する単一なバンドがみられるにすぎず,HDLは5本のバンドに分離し,原点のバンドはオイルレッドを含めて3種の染色法で共染するが,第2から第4ののバンドはPAS及びアミドブラック染色陽性,第5バンドはPAS染色のみ陽性であった。
(3) LDLとHDLのクロロホルムーメタノール抽出脂質のうち,LDLの中性脂質は74.9%,極性脂質は25.1%であり,HDLでは中性脂質51.3%,極性脂質48.7%であった。
(4) LDLとHDLの中性脂質の脂質成分は,LDLではトリグリセライドが97.1%をしめ,次にステロール,ステロールエステル,モノー,ジグリセライド,炭化水素の順であり,一方,HDLではトリグリセライドが80%を占め,次にステロール,モノー,ジグリセライド,ステロールエステル,炭化水素の順であった。
(5) LDLとHDLの極性脂質の脂質成分は,LDLではレシチン画分が85.7%をしめ,次にセファリン画分,スフィンゴミエリン,リゾレシチン,リゾセファリン画分の順であり,ヘプタン抽出物ではこのうちセファリンの抽出度が他の画分に比べて高かった。またHDLではレシチン画分が78.6%をしめ,次にセファリン画分,スフィンゴミエリン,リゾレシチン,リゾセファリン画分の順であり,ヘプタン抽出もセファリンの抽出率が他の画分よりも高かった。
(6) LDLおよびHDLの脂肪酸組成は,トリグリセライドではLDL, HDLともC
18:1が50%近くをしめ,C16:0が20%とほぼ類似していた。レシチン,セファリンともLDLとHDLでほぼ似た傾向を示した。またLDLとHDLのヘプタン抽出脂質ではレシチン,セファリンともクロロホルムーメタノール抽出物に比べてC
16:0の含有率が高く,レシチンではC
18:2の含有率が低かった。
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