日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
28 巻, 10 号
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  • 辻 政雄, 原川 守, 小宮山 美弘
    1981 年 28 巻 10 号 p. 517-521
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    赤色果肉系のソルダム種を使用して果肉からアントシアニン色素を抽出し,ペーパークロマトグラフィーにより分離精製し,主要な2種類の色素についてペーパークロマトグラムのRf値と色調,吸収スペクトル,部分的酸加水分解法などにより同定を行なった。
    その結果,ソルダムにおける主要色素はCyanidin-3-monoglucosideとCyanidin-3-rhamnoglucosideで,この両者がソルダムの全アントシアニン色素の91%を占めた。
  • 新原 立子, 米沢 大造
    1981 年 28 巻 10 号 p. 522-527
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    1. 脂肪酸とモノグリセリドは小麦デンプン糊化時の膨潤を抑制したが,高温(95℃)に加熱すると膨潤抑制効果は消失した。卵黄レシチンは膨潤をいくぶん促進し,綿実油は添加効果がほとんど認められなかった。
    2. 小麦粉にオレイン酸を添加すると,小麦デンプンの場合と異なり,高温糊化時の膨潤が抑制された。この現象は食塩の存在でさらに顕著に認められた。
    3. 脱脂小麦粉の稀食塩水抽出液中でオレイン酸を含む小麦デンプンを糊化させると,高温においても膨潤抑制効果が認められた。
    4. 小麦粉稀食塩水可溶物質のひとつとして,タンパク質の寄与を調べるために,牛血清アルブミン,同α-グロブリン,小麦グルテンを小麦デンプン・脂肪酸系に添加して高温糊化時の膨潤性を調べたところ,食塩水中でのグルテンの添加を除き,いずれも添加効果が認められた。とくに食塩共存下の牛血清α-グロブリンの寄与は大きく,微量の存在で効果が認められた。
    5. このような,脂肪酸存在下でおこる小麦デンプンの膨潤抑制に対するタンパク質の寄与は単なるpH調節作用とは考えられない。
    以上より,小麦粉は脂肪酸と食塩の共存により高温糊化時もデンプンの膨潤はおさえられるが,それは小麦粉中のタンパク質の寄与によるものであることを結論した。そして脂肪酸,タンパク質,食塩の存在によるデンプンの膨潤性の低下が,厄後の手延素麺におけるゆで麺の膨潤性の低下の一因であることを指摘した。
  • 神戸 千幸, 牛島 重臣, 内田 金治
    1981 年 28 巻 10 号 p. 528-533
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    4-アミノアンチピリンを発色剤に用いた酵素法と自動分析機の組合せにより,醤油中D-グルコースを迅速,正確に測定することができた。試料の前処理は必要なく,検量線は100mg/dlまで直線性が認められた。また,醤油醸造過程における各種中性糖の消長を追跡し,微生物管理および品質管理の面からグルコースを測定することの重要性を指摘した。
  • 酢酸菌の発酵促進物質に関する研究(第6報)
    南場 毅, 竹内 徳男
    1981 年 28 巻 10 号 p. 534-541
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    酢酸発酵における天然栄養源の促進効果と酵母エキス中の有効成分の分画と各分画の促進効果を解析した。
    (1) 試験した天然栄養源では酵母エキス,麹エキスの促進効果が高く,特に酵母エキスは他の栄養源ではみられない促進性を示し,その効果は有効成分の優れたバランスに基づくと考えられた。
    (2) 酵母エキスの塩基性区分,中性区分,酸性区分はいずれも促進効果を示し,特に酸性区分と塩基性区分との併用によって顕著な促進効果がみられた。
    (3) 酵母エキスは酒粕,白しょうゆと比較してアミノ酸,とくにアラニン,リジン,グルタミン酸,セリンの含量が多かった。有機酸も同様に,乳酸,ピログルタミン酸,コハク酸の含量が多かった。グリセロール含量は酒粕,白しょうゆとほぼ同じであった。また無機成分として多量のリン,カリウムが検出された。
    (4) 酵母エキス中の有効成分相当量の既知化合物を基本培地に添加すると,誘導期の短縮と生酸が増大し,酵母エキスと同様な効果が認められた。
  • 沼田 邦雄, 鈴木 普, 薄井 幸三
    1981 年 28 巻 10 号 p. 542-547
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    鶏肉の初期腐敗以前の鮮度低下を表す指標の一つとして,K値を測定することの意義について検討した。
    (1) K値は,揮発性塩基窒素,pH,生菌数,アミノ態窒素に比べ,鶏肉が食品として流通する期間内での変化が大きく,鶏肉の鮮度判定指標としても,魚類と同様に有効な指標の一つである。
    (2) K値は,鶏肉の貯蔵温度が高く,貯蔵期間が長くなるにしたがい増大するが,-30℃貯蔵では変化が認められなかった。
    (3) 鶏胸筋より腿筋の方が強いフォスファターゼ活性を示した。また,腿筋は,筋肉部位によってK値の変化に差が見られ,赤味が濃い程増加が速い傾向がある。
    (4) 鶏品種間,性間には,筋肉貯蔵中のK値の変化に差が認められなかった。
    (5) 市販鶏肉のK値を測定した結果,30%以下の新鮮な肉は比較的少なく,50%以上の肉も散見された。
  • 古内 幸雄, 浅野 三夫, 柴崎 一雄
    1981 年 28 巻 10 号 p. 548-553
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    長野県東部町を中心とした地域に広く栽培されている“信濃グルミ”(Juglans regia L.)の蛋白質の抽出分離条件を検討し,分離蛋白質の特性について調べた結果,次のような知見を得た。
    (1) 信濃グルミの蛋白質は油脂についで多く,13.2%含んでいた。
    (2) 各種pHおよびNaCl濃度によって蛋白質の抽出率を検討した結果,NaCl 10%を含むpH 11.0の緩衝液での抽出率が最も高く98.7%であった。
    (3) 上記条件で抽出分離された画分の蛋白質含量は87.6%であった。
    (4) 分離蛋白質の溶解性は,中性付近の水には溶けにくく,pHを酸性側では3以下,アルカリ性側では,10以上でよく溶解した。また,尿素およびSDSにはよく溶け8M尿素および0.2%SDSでほぼ完全に溶解した。
    (5) SDS-PAGEによって分離蛋白質の組成を検討した結果,3本の主成分(A1, A2, A3)を含む少なくとも13成分が認められ,主成分の分子量はA1:42,000, A2:39,000, A3:25,000と推定された。
    (6) クルミ分離蛋白質のSHおよびS-S含量を測定した結果,全SHおよびS-S含量ともに対照の大豆および酵母蛋白質にくらべて多かった。
    (7) クルミ蛋白質のアミノ酸組成は,Glu, Arg, Aspが多く,Cys, Met含量が少なくピーナツ蛋白質のアミノ酸組成に類似していた。
  • マルチタイプピックルインジェクターによるハム類の製造法に関する研究(第5報)
    新村 裕, 山田 順一, 藤井 静江, 高坂 和久
    1981 年 28 巻 10 号 p. 554-561
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    本試験はマルチタイプピックルインジェクターを使用して,ハム類を製造するための技術的基本条件を確立することを目的とする。
    塩漬期間中の保水力,NO-2残存量,発色率などの変化を検討した結果,次のことが明らかとなった。
    1. 塩漬期間中に保水力とpH値は徐々に上昇する傾向を示した。
    2. 塩漬期間中にNO-2残存量は徐々に減少し,NaNO2を200ppm添加した場合は塩漬7日目で食品衛生法の規制値(NO-2として70ppm以下)以内に減少した。NaNO2 100ppm, NaNO2 100ppm+NaAs 300ppm, NaNO2 200ppm+NaAs 600ppmの各処理区の場合は塩漬初期に規制値以内に減少した。
    3. 塩漬期間を通じ,発色率はNaNO2 100ppmにNaAs 300ppmを併用した場合のみ徐々に上昇した。NaNO2 100ppm, NaNO2 200ppm, NaNO2 200ppm+NaAs 600ppmの各処理区の場合はきわめてわずかながら低下の傾向を示した。
    4. 熟成風味の発現は塩漬4~7日目に感知され,供試肉によって風味発現に要する時間は大きな変異を生じた。
    5. ピックル注入直後,肉中における食塩の分布は不均一であり,最高値および最低値はそれぞれ平均値の約2.1倍,約0.2倍であったが,塩漬3日目には最高値は平均値の約1.2倍,最低値は平均値の約0.8倍にまで縮少された。この分布格差は塩漬期間中に徐々に解消される傾向にあったが,完全な均一化は9日目に至っても観察されなかった。
    6. 硝酸塩の分解は塩漬6日目までほとんど観察されなかった。10日目で一部の試料においてNO-2測定値が上昇したことから,硝酸塩の分解が開始されたものと認められた。本実験の条件下で全試料に硝酸塩の分解が確認されたのは塩漬14日目であった。
  • 村田 敏, 瀬 恒幸
    1981 年 28 巻 10 号 p. 562-568
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    わが国には毎年,食品および飼料の蛋白原料として大量の大豆ミール(34万ton,昭和53年)が輸入されており,植物防疫法の規定によって港湾サイロで燻蒸による殺菌・殺虫が行なわれている。しかし大豆ミールは粉体と粒体の混合物であり,その大量処理に際して,燻蒸ガスの分布むらやブリッジを生じやすく,操作は面倒と考えられている。わが国で最近完成して普及のはじまった減圧燻蒸法は,減圧した穀物サイロの真空破壊注)をガス混合大気で行なうもので,穀層内へのガス侵透速度の早いこと,ガス濃度むらの小さいことおよびブリッジ破壊が容易に行なえる等の特長を備えている。現在,施設費の点にやや問題があるが,将来性のある技術と考えられる。ここでは先ず,従来の燻蒸法を簡単に説明し,その上で,この燻蒸法の特性を説明することとする。
  • 1981 年 28 巻 10 号 p. A48-A51
    発行日: 1981/10/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
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