長野県東部町を中心とした地域に広く栽培されている“信濃グルミ”(
Juglans regia L.)の蛋白質の抽出分離条件を検討し,分離蛋白質の特性について調べた結果,次のような知見を得た。
(1) 信濃グルミの蛋白質は油脂についで多く,13.2%含んでいた。
(2) 各種pHおよびNaCl濃度によって蛋白質の抽出率を検討した結果,NaCl 10%を含むpH 11.0の緩衝液での抽出率が最も高く98.7%であった。
(3) 上記条件で抽出分離された画分の蛋白質含量は87.6%であった。
(4) 分離蛋白質の溶解性は,中性付近の水には溶けにくく,pHを酸性側では3以下,アルカリ性側では,10以上でよく溶解した。また,尿素およびSDSにはよく溶け8M尿素および0.2%SDSでほぼ完全に溶解した。
(5) SDS-PAGEによって分離蛋白質の組成を検討した結果,3本の主成分(A
1, A
2, A
3)を含む少なくとも13成分が認められ,主成分の分子量はA
1:42,000, A
2:39,000, A
3:25,000と推定された。
(6) クルミ分離蛋白質のSHおよびS-S含量を測定した結果,全SHおよびS-S含量ともに対照の大豆および酵母蛋白質にくらべて多かった。
(7) クルミ蛋白質のアミノ酸組成は,Glu, Arg, Aspが多く,Cys, Met含量が少なくピーナツ蛋白質のアミノ酸組成に類似していた。
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