日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
40 巻, 8 号
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  • 中村 哲郎, 宿野部 幸孝, 富澤 章, 重松 明典, 神武 正信
    1993 年 40 巻 8 号 p. 545-551
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    牛乳カゼインを酵素分解し,得られたカゼイン分解物の脱塩を目的として,電気透析(Electrodialysis,以下EDと略記)処理を行ない, ED処理前後の灰分,タンパク質,遊離アミノ酸等の変化について調べた.試料は,すべて低阻止率RO膜(Low Rejection Reverse Osmosis Membrane:以下, LRO膜と略記)で処理されたものを使用した.
    (1) カゼイン分解物のED処理では,処理温度が高い方が脱塩効率が良かった.
    (2) カゼイン分解物中の灰分量と電気伝導度との関係は直線で回帰された.
    (3) ED処理によって,灰分だけでなく,遊離アミノ酸も減少し,脱塩率72.5~78.6%で回収率87.8~78.4%となった.
    (4) カゼイン分解物中の主要ミネラルのうち, Caが他のイオンより脱塩されやすい傾向を示したが, Naは逆に脱塩されづらかった.
    (5) ED処理によって,グルタミン酸とアスパラギン酸が大きく減少し,アルギニンも減少する傾向が認められた.しかし,その他のアミノ酸は変化がないか又は濃縮される傾向を示した.
    (6) ED処理は, LRO膜処理と同様に,カゼイン分解物の遊離アミノ酸由来の風味改良に効果があることが示された.
  • 乙黒 親男, 金子 憲太郎, 小竹 佐知子, 辻 匡子, 前田 安彦
    1993 年 40 巻 8 号 p. 552-557
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    水酸化カルシウムまたは乳酸カルシウム添加小ウメ漬けの硬度,カルシウム含量,ペクチン組成と組織構造の観察結果から塩蔵ウメ果実の硬化機構を考察した.
    (1) カルシウム化合物無添加の塩蔵ウメ果実は軟化し,原料果実よりHSPが顕著に少なく, WSPが著しく多,かった.
    (2) カルシウム化合物添加ウメ漬けは無添加ウメ漬けよりカルシウムが多く,硬度が高かった.また, HSPとHXSPが顕著に多く, WSPが著しく少なかった.
    (3) 水酸化カルシウム添加ウメ漬けの硬度は乳酸カルシウム添加ウメ漬けのそれとほとんど変わらなかった.
    (4) 水酸化カルシウムの添加量が多いウメ漬けはSSPが多く, WSPが少なかった.
    (5) 乳酸カルシウムの添加量が多い塩漬けウメは,HSPが多く, WSPが少なかった.
    (6) 塩蔵ウメは細胞壁が薄く,やや偏平に変形した細胞が観察されたが,カルシウム化合物添加ウメ漬けは原料果実の組織とほとんど変わらなかった.
    以上のことから,塩漬けウメの軟化はHSPのWSPへの変化に起因する組織構造の崩壊により,またカルシウム化合物による硬度の保持はHSPのWSPへの変化が阻止されることにより組織構造が保持されるためと考えられる.
  • 小瀬古 茂樹, 久松 眞, 松永 正好, 山田 哲也
    1993 年 40 巻 8 号 p. 558-567
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    実験室規模のバイオリアクターを用い高粘度仕込液である無殺菌の醤油諸味液から連続的に醤油様調味液を製造することを試みた.
    酸及びアルカリで処理したセラミックスは,醤油酵母の固定化に優れ高い菌体吸着能を示した. Z, rouxiiの吸着率はHCよりMICの方が高く,一方, C. versatilisの吸着率はMICよりHCの方が高くなったことは,両酵母菌体の細胞表層の性質に違いがあるためと考えられた.
    酵母によるバクテリアとカビの静菌作用は, Z. rouxiiとC. versatilisの増殖に従い麹由来のバクテリア数は著しく減少することが認められた.
    酸及びアルカリ処理したMICとHCを各々装填したバイオリアクターを使用し発酵原液の流速を変化させて2%アルコールの生産性を比較すると, Z. rouxii固定化り,アクターの場合, MICを装填したリアクターのアルコール生産性はHCを装填したリアクターの1.43倍となり, C. versatilis固定化リアクターの場合,MICを装填したリアクターのアルコール生産性は, HCを装填したリアクターの0.72倍を示した.この結果より,アルコール生産性が固定化された酵母菌体量と深く関係していると考えられた.
    MICを装填したエアーリフト型バイオリアクター装置を用いれば高粘度仕込液である無殺菌の醤油諸味液を連続発酵でき,滞留時間2日で2%のアルコールが得られることから約6カ月に及ぶ発酵期間の大幅な短縮を可能にすると考えられたりそして醤油諸味を発酵原液とする醤油様調味液の呈味は,清澄液を発酵原液とする醤油様調味液の呈味より好ましく,品質的には市販醤油により近いと評価された.
  • 筬島 克裕, 榊原 進, 澤邊 質, 北村 こう一, 松田 秀喜, 筬島 豊
    1993 年 40 巻 8 号 p. 568-576
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    イワシの落し身を酵素分解して得られるACF阻害活性を有するペプチドを効率的に分離精製し,有効利用するための技術および,実用上マイナス要因となる色や魚臭の除去の検討をした.
    その結果,ラボスケールにおいてイワシ落し身を酵素分解後,活性炭処理とケイ酸アルミニウム処理によってアミン化合物に由来する臭い成分や色素を吸着し,ODS分画によって脂肪酸に由来するにおい成分を除去し, ACE阻害活性の高い画分を分離分画した.さらに,工業化のためにODS分画を中心として一貫したシステムを組み,ラボスケールの結果をもとに約30倍のパイロットプラントを設計製作した.このパイロットプラントは,ラボスケールの結果を十分に再現しており,よりスケールアップが可能なことを確認した.また, 1000l/hの処理能力をもつ実生産レベルのシステム設計を試みた.
    以上の結果から,本研究成果として設計製作したシステムにより,工業的スケールで,魚肉から色や魚臭の除去された食品として幅広い利用が可能な,機能性成分である高いACE阻害活性を有するペプチドを分離・精製できることが示された.
  • 金子 憲太郎, 乙黒 親男, 日原 政彦, 辻 匡子, 小竹 佐知子, 前田 安彦
    1993 年 40 巻 8 号 p. 577-582
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    乾燥卵殻,灰化卵殻,灰化カキ貝殻を硬度保持剤として硬化ウメ漬けを製造し,それらの硬度保持効力を比較するとともにその硬度保持機構を考察した.
    1) 硬度保持剤添加ウメ漬の果肉ではCa含量が多かった.
    2) 乾燥または500℃灰化卵殻添加ウメ漬けは萎縮し硬度も小さかったが, 720℃灰化卵殻または灰化カキ貝殻添加ウメ漬けは充分に硬度が保持された.
    3) 硬度保持剤無添加ウメ漬けは原料ウメよりHSPが著しく少なく, WSPが著しく多かった.
    4) 乾燥または500℃灰化卵殻添加ウメ漬けは,原料ウメよりHSPが著しく少なく, WSPとHXSPが著しく多かった.
    5) 720℃灰化卵殻または灰化カキ貝殻添加ウメ漬けは,原料ウメよりHSPが顕著に少なくHXSPとSSPが顕著に多かった. WSPにはほとんど変化はなかった.
    6) X線回折の結果,乾燥及び500℃灰化卵殻のCaはCaCO3, 720℃灰化卵殻と灰化カキ貝殻のCaは一部がCaOとして存在することが分かった.
    7) 顕微鏡観察の結果,乾燥卵殻添加ウメ漬けは細胞が萎縮し軟化するが, 720℃灰化卵殻添加ウメ漬けの細胞は原料ウメのそれとほとんど変わらず硬度の保持されることが分かった.
    以上のことから, CaOの多い灰化物はCaがペクチンと結合しやすく,それに準じて組織が堅固に保持され,硬度保持作用が強いと考えられる.
  • 大羽 和子, 丹羽 栄二
    1993 年 40 巻 8 号 p. 583-588
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    魚肉冷蔵中のIMPの分解に関与する2酵素に対する塩の影響をスケトウダラおよびシロギスについて調べた.
    1. 5'-ヌクレオチダーゼ:スケトウダラから抽出したそれの至適pHは8.0付近で, IMPに対する見かけのKm値は0.83mMであるのに対し,シロギス酵素の至適pHはpH 9.0以上, Km値は0.18mMであった.いずれの活性も塩によって阻害され,その程度はCaCl2>食塩No.1, NaCl, MgCl2>食塩No.2, No.3, KClの順であった. NaClによる阻害は不拮抗的で,Ki値はスケトウダラで0.38M,シロギスで0.36Mであった.
    2. プリンヌクレオシドホスホリラーゼ:スケトウダラから抽出した酵素のHxRに対する見かけのKm値は0.20mMであった,その活性はNaClによってほとんど阻害されなかったが, KCl, MgCl2によって阻害され,食塩No.2, No.3, CaCl2ではむしろ活性化された.一方,シロギスから抽出した酵素のKm値は0.10mMであり,その活性はNaCl, KCl>食塩No.1, No.2, No.3, CaCl2>MgCl2の順に阻害された.NaClによる阻害は非拮抗的で,そのKi値は1.0Mであった.
    3. これらの2種類の酵素に及ぼす塩の影響を調べることによって,魚肉の冷蔵中に起こるIMPの減少やHxの生成に対する塩類の抑制機構が酵素レベルで説明できた.
  • 真部 孝明
    1993 年 40 巻 8 号 p. 589-595
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    カキ‘西条’の干ガキ加工適性の一要因として,果実の形状をとりあげた.
    干ガキ製造において機械剥皮を行う場合,表層部から同心円状に除去するので,まず,干ガキ加工と関係の深いとみられる数種の化学成分を果実各層に分けて測定した.中心部の果肉は表層部に比較して,全糖,アスコルビン酸,可溶性タンニンは少なかったが,全ペクチンと水溶性ペクチンは多かった.
    剥皮歩留まりは,溝の深さと深く関係していると考えられるために,円周をキルビメーターで測定し,完全な円とみなした場合との比を求ある方法,ノギスにより最大直径と最小直径を測定して両者の比を求める方法およびデプスゲージによって直接求める方法の3方法について検討した.肉眼観察による溝の深さの程度とよく一致し,かつ,機械剥皮の歩留まりとの関係から最も実際的な溝の深さの表現は,上記3方法の内ではノギスによる方法であった.測定部位は中央部(赤道面)が最も適していた.これによって求めた値を,溝指数とした.
  • 松井 年行
    1993 年 40 巻 8 号 p. 596-601
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    Since early 18th century, starch syrup "Gyousen" has been manufactured in Kagawa Prefecture, Japan by a unique traditional procedure, that is, boiled glutinous rice is mixed with malt made from wheat cv. Seto. The mixture is then allowed to stand overnight during which starch is converted into maltose. Clarified extracts are evaporated in a stainless steel cauldron. This procedure results in final products with unique flavor. No report is available about the components responsible for the characteristics of "Gyousen". Hence, in this paper free amino acid, organic acid and carbohydrate contents were analyzed by chromatographic techniques. The samples analyzed were glutinous rice extract, residues in a jute bag, extracts immediately at the start of heating, and after 6.5 hours, the final products and starch syrup (manufactured by acid-hydrolysis) from the local market. Aspartic acid and proline were the most predominant free amino acids followed by serine and glutamic acid. Pyroglutamic acid derived from glutamic acid was 21.4mg per 100g, making up 41.2% of the total organic acids. The dextrin and glucose contents of "Gyousen" were lower than those of commercial starch syrup since there were still impurities in the "Gyousen", hence the sweet taste of "Gyousen" appeared mild in comparison with that of the commercial one.
  • 林 志城, 藤本 健四郎, 孫 〓西
    1993 年 40 巻 8 号 p. 602-608
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    穀類,乳,魚,鶏および畜肉から調製した各種蛋白質は,ヘモグロビンで開始したイワシ油エマルションの酸化を抑制した.中でも,トウモロコシツェインおよび小麦グリアジンの効果がもっとも著しかった. α-ラクトアルブミン部分加水分解物の沈殿画分も有効だった.各種動物から抽出したミオシンの効果を比較すると,もっとも効果の著しかったのはイカで, α-トコフェロールとリン脂質が相乗的に作用していたが,加水分解によりその効果は大きく減退したので,ミオシン自体の構造も抗酸化性発現に重要であった.酸化開始剤をヘモグロビンからFe (II)イオンに変えると,ミオシンの有効性もかわった.
  • 1993 年 40 巻 8 号 p. 609-614
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
  • 渡瀬 峰男
    1993 年 40 巻 8 号 p. 615-616
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
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