乾燥卵殻,灰化卵殻,灰化カキ貝殻を硬度保持剤として硬化ウメ漬けを製造し,それらの硬度保持効力を比較するとともにその硬度保持機構を考察した.
1) 硬度保持剤添加ウメ漬の果肉ではCa含量が多かった.
2) 乾燥または500℃灰化卵殻添加ウメ漬けは萎縮し硬度も小さかったが, 720℃灰化卵殻または灰化カキ貝殻添加ウメ漬けは充分に硬度が保持された.
3) 硬度保持剤無添加ウメ漬けは原料ウメよりHSPが著しく少なく, WSPが著しく多かった.
4) 乾燥または500℃灰化卵殻添加ウメ漬けは,原料ウメよりHSPが著しく少なく, WSPとHXSPが著しく多かった.
5) 720℃灰化卵殻または灰化カキ貝殻添加ウメ漬けは,原料ウメよりHSPが顕著に少なくHXSPとSSPが顕著に多かった. WSPにはほとんど変化はなかった.
6) X線回折の結果,乾燥及び500℃灰化卵殻のCaはCaCO3, 720℃灰化卵殻と灰化カキ貝殻のCaは一部がCaOとして存在することが分かった.
7) 顕微鏡観察の結果,乾燥卵殻添加ウメ漬けは細胞が萎縮し軟化するが, 720℃灰化卵殻添加ウメ漬けの細胞は原料ウメのそれとほとんど変わらず硬度の保持されることが分かった.
以上のことから, CaOの多い灰化物はCaがペクチンと結合しやすく,それに準じて組織が堅固に保持され,硬度保持作用が強いと考えられる.
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