日本化学療法学会雑誌
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48 巻, 7 号
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  • 後藤 直正
    2000 年 48 巻 7 号 p. 509-515
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    多くの生物の細胞質膜 (内膜) には抗菌薬や制癌剤を含めた有害物質をエネルギー依存的に排出する蛋白質が存在し, それらの細胞内侵入を阻止することにより自己防衛に関与している。これらの排出蛋白質は, そのエネルギー源からATP駆動型とプロトン駆動型に大別できる。細菌で発見されてきた排出蛋白質には, ATP駆動型よりもプロトン駆動型が多い。これらのプロトン駆動型排出蛋白質は, アミノ酸配列の相同性からさらにsmall multidrug resistance (SMR) family, major facilitator superfamily (SMR) and resistance-noduration-cell division (RND) familyの3つのファミリーまたはスーパーファミリーに分けられている。これらの排出蛋白質のほとんどは, Escherichia coliのテトラサイクリン排出蛋白質TetAのように基質域が狭いが, なかには, 構造的に類似性のない抗菌薬を排出し, 細菌の多剤耐性に貢献するものもあり, それは多剤排出蛋白質と呼ばれている。Pseudomonas aeruginosaのキノロンやβ-ラクタムに対する耐性機構の研究からこれらの排出蛋白質と他の耐性機構とが共同して働いていることが明らかとなった。
  • 松本 佳巳, 塩川 晶子, 若井 芳美, 波多野 和男, 池田 文昭
    2000 年 48 巻 7 号 p. 516-523
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    近年日本国内においても増加傾向にあるペニシリン耐性Streptococcus pneumnoniae (PRSP) とβ-lactamase非産生アンピシリン耐性Hamophilus influenzae (BLNAR) による複数菌感染に対するcefoselis (CFSL) の有用性を評価するため, 両菌種の臨床分離株に対するin vitroおよびin vivo抗菌力を検討し以下の成績を得た。
    1. CFSLはPRSPおよびBLNARにMIC90: 2μg/mlと優れた抗菌力を示し, PRSPを含むS. pneumoniaeおよびBLNARを含むH. influemaeに対する活性は, cefozopmn (CZOP) より4~8倍優れた。
    2. CFSLはMIC以上の渡度において混合培養したPRSPおよびBLNARを著明に殺菌し, CZOPより低濃度で優れた殺菌性を示した。また, 血清中濃度の10%が移行すると仮定して求めた喀痰中渡度のシミュレーション系においても混在する両菌をCZOPおよびimipenem/cilastatin (IPM/CS) より効果的に殺菌した。
    3. PRSPおよびBLNARによるマウス呼吸器複数菌感染系においてCFSLは20mg/kgの投与量で肺内菌数を有意に減少させ, CZOP, ceftazidime (CAZ) およびflomoxef (FMOX) より優れた治療効果を示した。さらに, ヒトの血漿中濃度推移をマウスに再現したin vivo pharmacokinetic modelによる検討でCFSLは0.5gヒト相当量で顕著な肺内菌数減少効果を示し, IPM/CSと比較しても優れる傾向を示した。
    ペニシリン結合蛋白の変異によるこれらの耐性菌にもCFSLは優れた活性を示し両菌の複数菌感染の頻度が高い呼吸器感染症におけるCFSLの有用性が示唆された。
  • 石井 良和, 馬 霊, 山口 惠三
    2000 年 48 巻 7 号 p. 524-530
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefepimeをはじめとするβ-ラクタム系抗菌薬間での感受性および耐性菌の出現状況を把握するために全国レベルでの疫学調査をpiperacilhn (グラム陰性菌), oxacillin (グラム陽性菌), ceftazidime, cefpirome, cefepime, cefoperazone/sulbactam (2: 1), imipenem の各Etestストリップを使用して行った。Etestを使用するにあたり, 精度管理株を用いて再現性および施設間の膜差に関して調査を行ったが, 再現性ならびに施設問の誤差とも少なく, ほぼ満足できる結果が得られた。今回はグラム陽性菌としてoxacillin感性のStaphylococcus aureusおよびoxacillin 感性のcoagulase-negative staphylococci を対象としたが。cefしazidimeを除いて耐性株の出現は認められなかった。Escherichia coliにはpiperacillin に対する耐性菌が14.6%存在したが, その他の抗菌薬に対する耐性菌は0.5%であった。Klebsiellac spp. およびCitrobacter fremdiiに対しては, cefbpimeおよびimipenemには耐性株が認められなかった。Enterobacter spp. にはimipenemが0.5%, cefbpimeが1.0%の割合で, Serratia spp.に対してはimipenemが45%, oefepimeが5.0%の割合でそれぞれ耐性株が認められたが他の抗菌薬に対する耐性菌の出現率と比較して小さい値を示していた。Indole-positive Proteusの場合, cefepimeはceftazidimeと同様に耐性菌の出現率が低く0.5%であった。Pseudomoms aerugimosaに対しては今回対象とした薬剤のなかではcefbpimeの感受性がもっとも優れており, 耐性率も9.1%であった。一方, ceftazidimeは11.4%, imipenemは22.4%の値を示した。以上の結果から, cefbpimeに対する耐性菌の出現は, 今回対象とした他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較すると低いものと考えられた。
  • 山崎 隆廣, 吉位 尚, 大塚 芳基, 古森 孝英
    2000 年 48 巻 7 号 p. 531-534
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    血清アルブミン値の低下が組織移行性に与える影響を検討する目的で, 低蛋白血症ラットにカラゲニン頬部膿瘍を作製し, 炎症時期別にlevofloxacin (10mg/kg, p. o,) の炎症組織内濃度を測定した。肉芽組織内濃度は, 低蛋白血症および正常ラットのいずれにおいても, 血清内濃度と類似した推移をとったが, 低蛋白血症ラットでは正常ラットに比べてTmaxは早く, またCmaxは高値を示した。また, この傾向はカラゲニンによる炎症惹起後の時期 (1日目と5日目) に関係なく認められた。今回の結果は, 血清アルブミンの低下に伴う非結合型抗菌薬濃度の上昇が反映されたものと推測されるが, T1/2については一定の傾向は認められなかった。
  • 吉位 尚, 吉川 朋宏, 吉岡 歩, 古土井 春吾, 中尾 薫, 古森 孝英
    2000 年 48 巻 7 号 p. 535-540
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用抗菌薬の5薬剤 (piperacillin (PIPC): 50mg/kg;i. v., cefazolin (CEZ): 30mg/kg;i. v., cefmetazole: 16-22mg/kg;d.i.v., cefoperazone (CPZ): 20mg/kg;d.i.v,latamoxef (LMOX): 15-24mg/kg;d, i. v.) について単回投与後の下顎骨への移行性を検討した。その縮果, PIPC, CEZまたはcMz投与後の下顎骨組織内濃度は, 口腔感染症からの主な検出菌であるStreptococcus sp.に対する各薬剤のMIC90値を上回る良好な移行性が認められ, 下顎骨骨髄炎の治療や術後感染予防に対して有用な薬剤であると考えられた。しかし, CPZとLMOXについてはStreptococcus sp.に対するMIC90値に到達しない症例も多く認められたことから, 投与量に対する配慮が必要と思われた。
  • 吉位 尚, 吉川 朋宏, 吉岡 歩, 古土井 春吾, 古森 孝英
    2000 年 48 巻 7 号 p. 541-544
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抜歯後感染に対する予防投与の有用性を評価する目的で, talampicillin (TAPC, 500mg), cefaclor (CCL, 500 mg), cefteram pivoxil (CFTM-PI, 200 mg) 投与後の抜歯創貯留液濃度を測定した。口腔感染症から高頻度に検出されるStreptococcus sp. に対する各薬剤のMIC80値を上回った症例の割合は, TAPCが60~360分で83.3~100%, CCLが60~180分で33.3~64.3%, またCFTM-PIは60~480分で80.0~100%であり, 3薬剤のなかではTAPCまたはCFTM-PIが予防投与として信頼性が高いと考えられた。また, 予防投与をより効果的に行うためには, TAPCでは60分程度, CFTM-PIでは60~120分程度を目安に術前投与しておく必要があると思われた。
  • 五十嵐 正博, 中谷 龍王, 林 昌洋, 中田 紘一郎, 粕谷 泰次
    2000 年 48 巻 7 号 p. 545-552
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 感染症に使用されるvancomycin (VCM) を初期投与量から有効かつ安全に投与するために薬物動態学を用いた投与設計を行い, その臨床評価を行った。1995年4月~1999年2月に当薬剤部にVCMのtherapeutic drug monitoringを依頼された患者22例を対象とした。採血は, 3回目以降の投与直前と投与終了2時間後に行った。非透析患者15例はMoelleringのノモグラムによる初期投与量を投与した。この結果, 中毒域に達した症例はなく, トラフ濃度は15例中12例 (80%) が, ピーク濃度は15例中2例 (13%) が有効域 (トラフ5~15μg/mL, ピーク20~40μg/mL) になった。しかし15例中5例 (33%) においては投与量を変更する必要があり, 投与量の再調節には主に2点の血中濃度と1-compartment modelによるPrykaらの母集団パラメータを用いたBayesian法により行った。Bayesian法を用いて投与量を変更した7例中, トラフ濃度は6例で, ピーク濃度は5例で有効域になった。Bayesian法による予測性は, トラフ濃度 (n=9) がmean prediction error (ME)=-1.83μg/mL, mean absolute prediction error (MAE)=2.14μg/mL), root mean squared prediction error (RMSE)=2.79μg/mL, ピーク濃度 (n=9) がME=2.01μg/mL, MAE33.70μg/mL, RMSE=5.22μg/mLと良好な結果となった。透析患者4例は全員15mg/kg/weekで投与を開始し, 2例においてはSawchuk-Zaske法を用いて投与量を再調節した。本研究において, VCMの有効率は83%を示し, 副作用である腎障害は認められなかった。現在のところ症例数はまだ少ないが, 本研究で実施したVCMの投与方法, すなわち, Moelleringのノモグラムによる初期投与量の決定とBayesian法およびSawchuk-Zaske法による投与量の再調節の実施は, 安全かつ有効な投与法となることが示唆された。
  • 大道 光秀, 平賀 洋明
    2000 年 48 巻 7 号 p. 553-560
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたフルオロキノロン系抗菌薬gatinoxacin (GFLX) を呼吸器感染症患者に使用し, 基礎的, 臨床的検討を行った。
    1. 基礎的検討
    基礎的検討は慢性気管支炎1例に対して行い, 1回200mgを1日2回, 7日間投与し, 投与開始日, 3日後および開始5日後に血清, 喀痰を採取した。開始日の6時間以降から喀痰中濃度は血清中濃度を上回り, 血清比は152%から238%と良好な喀痰移行性を示した。最高喀痰中濃度は6.94μg/g, 最高血清中濃度は2.91μg/mLであった。
    2. 臨床的検討
    急性気管支炎1例, 慢性気管支炎11例, 細菌性肺炎5例, クラミジア肺炎1例, マイコプラズマ肺炎1例, 肺気腫の二次感染4例, 気管支拡張症の二次感染1例, 陳旧性肺結核の二次感染1例, 気管支喘息の二次感染1例および肺線維症の二次感染1例の合計27例に対し, 1回100mg, 150mgもしくは200mgを1日2回投与, 7日間から14日間経口投与した。臨床効果は, 著効2例, 有効22例, やや有効1例, 無効2例で, 有効率は88.9%であった。副作用は, 1例で軽度の胃部不快感が発現した。また, 臨床検査値異常変動はS-GPT上昇, S-GOT上昇およびγ-GTP上昇が各1例に認められたが, 臨床上問題となるものではなかった。
    以上の結果より, GFLXは呼吸器感染症に対し, 有用な薬剤であると考えられた。
  • 抗菌薬感受性測定委員会ヘリコバクター・ピロリ委員会
    2000 年 48 巻 7 号 p. 561-568
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
  • 2000 年 48 巻 7 号 p. 579
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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