市中呼吸器感染症治療で汎用されている経口β-ラクタム系薬8薬剤について,
Streptococcus pneumoniae 59株 (PSSP 31株, PISP 22株, PRSP 6株) を使用し, Muller-Hinton Brothに生体内に類似した濃度である4g/dLのヒトアルブミンを添加し,
in vitroの抗菌力に対する影響を検討した。
全59株の, アルブミン添加時のMICとアルブミン非添加時のMICとの比 (MIC比) の平均値で比較したところ, 大きい順に, faropenem: FRPM (MIC比; 6.9倍), 次いでcefditoren pivoxil: CDTR-PI (4.2倍), cefteram pivoxil: CFTM-PI (2.3倍), amoxicillin (1.9倍), cefcapene pivoxil: CFPN-PI (15倍), cefpodoxime proxetil (1.4倍) cefotiam hexetil (0.9倍) の順であった。70%以上の蛋白結合率を示すFRPM, CDTR-PIおよびCFTMもPIの3薬剤はアルブミン添加により2倍以上のMIC比を示したが, 他の薬剤は2倍以下であった。
次に, アルブミン添加により約2倍以上のMIC比を示したFRPM, CDTR-PIおよびCFTM-PIの3薬剤について, それぞれの薬剤の用法・用量におけるtime above MIC%が40%以上を満たすMICブレークポイント (BP1) と, 血清蛋白結合率 (以下, 蛋白結合率) を補正するために補正係数 (FRPM; 0.5, CDTR-PI; 0.2, CFTM-PI; 0.5) を乗じたブレークポイント (BP2) の2つのブレークポイントを算出し, BPIではアルブミン添加MICの感性率を求め, BP2ではアルブミン非添加MICの感性率を求め, 両ブレークポイントによる
S. pneumoniaeの感性率を比較した。その結果, 今回検討した6薬剤すべてにおいて, BPIおよびBP2の両者より求めた感性率にはほとんど差がなく, 蛋白結合率補正係数の妥当性が確認された。
以上から, 蛋白結合率が70%以上を示すFRPM, CDTR-PIおよびCFTM-PIは, アルブミンの存在下でMICが著しく上昇する傾向が認められた。このMICの上昇は, 生体内の感染部位でも再現される可能性があり, 特に蛋白結合率が高い薬剤の感受性試験は, 蛋白結合率を考慮したPK/PDブレークポイントで評価する必要性が示唆された。
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