新鮮な豚骨をコラーゲン原料として利用することを目的に, EDTAで脱灰処理して不溶性コラーゲン(EDTA-IC)を調製し,その生化学的特徴およびゼラチン抽出性とゲル強度を調べ,腱,真皮コラーゲンおよびオセインと比較検討し,次の結果を得た.
(1) EDTA-ICの収率は脱脂骨の約12%であった.可溶性コラーゲンの収率は0.03~0.13%で,豚真皮のそれより著しく低い.
(2) EDTA-ICは鍵と同様ほぼ純粋なI型コラーゲンであったが,真皮は小量のIII型コラーゲンを含んでいた.しかし,糖含量は腱や真皮の約2倍の2%を示した.
(3) EDTA-ICはペプシンによりほぼ完全に可溶化された.
(4) EDTA-IC の熱変性開始温度は腱や真皮に比べて3~4℃高い約59℃を示した.加熱溶解性も腱や真皮の約1/2から1/3を示し,比較的高い熱安定性を示すと考えられた.
(5) EDTA-ICから温度60℃の熱水でゼラチンを抽出すると約7%,引き続く75℃抽出で約11%,最後の95℃で約49%,合計約67%のゼラチンが抽出され, 30日間アルカリ処理したオセインより抽出効率が高かった.
(6) 60℃および75℃抽出区分のゼラチンはα鎖が主体で低分子ペプチドの割合の低い分子量分布を示し,そのゲル強度も市販ゼラチンと同様であった.したがって新鮮な豚骨はゼラチンを含めてコラーゲン原料として利用価値があるものと考えられた.
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