日本海水学会誌
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65 巻, 2 号
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巻頭言
特集:「製塩環境における腐食の機構解析と評価技術の開発」
解説
報文
  • 井上 博之, 中村 彰夫
    2011 年 65 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/27
    ジャーナル フリー
    濃厚塩化物水溶液中の微量金属イオンがステンレス鋼(SS)の応力腐食割れ(SCC)に与える影響について評価するため,10 mg/Lの第二銅ならびに第一銅,ニッケル,亜鉛のイオン(Cu2+,Cu,Ni2+,Zn2+)が溶解した模擬濃縮かん水中で溶体化304ステンレス鋼の応力腐食割れ(SCC)感受性指数,ISCCを測定した.10%O2-Arならびに純酸素ガスを曝露した模擬濃縮かん水中の指数についても測定した.ISCCは,化学種の種類に関わらず,試験液中の銅イオンならびに溶存酸素の電気化学等量の質量モル濃度に反比例した.なお,ISCCはSCC感受性の増加に応じて減少する.微量のNi2+ならびにZn2+の添加は,それらが単独で行われた場合には,ISCCを増加させた.しかし,Ni2+あるいはZn2+がCu2+と同時に添加された場合,ISCCは,同じ濃度のCu2+が単独で添加された溶液よりも低くなった.
  • 矢吹 彰広, 河島 聡洋
    2011 年 65 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/27
    ジャーナル フリー
    回転円筒電極型試験装置を用いてスラリー溶液中の塩化ナトリウム粒子が銅合金に衝突したときの浸食を調べた.2種類の銅合金10Ni-Cu (C7060),30Ni-Cu (C7150)について,温度を20℃から80℃まで変化させて20 wt%のスラリー溶液流動下で試験を行った.粒子の衝突条件は試験装置内の1個の粒子が衝突したときにできる衝突痕の形状と大きさを測定することで評価し,衝突速度は1.5 m/s,衝突角度は6°であることがわかった.試験片の質量損失,電気化学測定による分極抵抗,試験後の表面状態の確認から,塩化ナトリウム粒子の衝突によりエロージョンは発生しておらず,粒子の衝突によって腐食が加速されることがわかった.塩化ナトリウム粒子の衝突による銅合金の腐食は溶液温度の上昇とともに増加した.2種類の銅合金30Ni-Cu,10Ni-Cuの腐食は,ニッケル含有量が異なるにもかかわらず,ほぼ同程度であった.これは合金表面に形成される腐食生成物皮膜の特性が関係している.
  • 津川 貴臣, 渡辺 豊, 阿部 博志
    2011 年 65 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/27
    ジャーナル フリー
    SCC発生条件を明らかにするため,SUS316L,YUS270,NAS254N,NAS354N及びC-22の各種合金について製塩模擬環境中で定ひずみSCC試験を行った.製塩環境中ではSUS316LとYUS270がSCC感受性を示し,NAS254N,NAS354N及びC-22はSCC感受性を示すことはなかった.SUS316LとYUS270は冷間圧延によりSCC感受性が高まった.また,にがり中で酸素と窒素を吹込んだ結果の差異を比較する限りでは,雰囲気ガスを変更することによるSCC感受性への有意の影響はなかった.SCC試験結果と製塩プラント実機での経験を総合し材料選択指針を検討した.製塩環境における材料選択指針を以下に示す.
    ・SUS316L(PRE24)は,濃縮缶以前の部位への適用が可能であると判断した.
    ・低濃度結晶缶では,PRE40以上の耐海水スーパーステンレス鋼の適用が妥当であると判断した.
    ・高濃度結晶缶以降の工程で材料に局部腐食を生じさせずに使用するためには,PRE50以上の耐海水スーパーステンレス鋼かNi基合金の適用が適切であると判断した.
    (孔食指数:PRE = Cr + 3.3Mo + 20N)
  • 八代 仁, 荒木 渓, 明 承澤, 鈴木 映一
    2011 年 65 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/27
    ジャーナル フリー
    製塩プラントにおける構造材料の腐食を支配する重要な要因のひとつに溶存酸素が挙げられており,これを管理するため製塩プラント環境に適用可能な溶存酸素濃度分析法を提案した.プラントから採取された溶液は定量ポンプを用いて直接回転電極に送られるか,一旦サンプリングバックに採取される.サンプリングされた試料の一部は亜硫酸ナトリウムの添加等によって脱酸素され,ゼロ点校正に用いられる.
    もうひとつの対照試料として空気飽和試料溶液を用意する.試料溶液中の溶存酸素は白金回転電極を用いるサイクリックボルタンメトリーによって,酸素還元の拡散限界電流を測定することで評価される.白金電極は周期的に酸化することで高い活性が維持される.酸素還元の拡散限界電流は溶存酸素濃度と,回転数の平方根に比例して増加する.
    1 ppm以上のCu2+は,Pt上に還元析出することにより酸素還元電流を減少させるが,引き続きアノード分極するとアノードピークが得られたことから,Cu2+の存在を知ることが可能である.1 ppm以上のFe2+はFe(OH)2の析出によって酸素還元を著しく妨害したがNi2+はあまり影響しなかった.これらの妨害イオンが存在する場合は,カチオン交換樹脂による前処理が必要となる.試料溶液の絶対酸素濃度は,空気飽和試料の酸素濃度をWinkler 法によって別に評価することで決定できる.空気飽和試料の酸素濃度を塩類効果係数を用いて推算した結果,Winkler法によって求めた酸素濃度と比較的よく一致したことから,これを計算で行いうることが示された.
  • 長 秀雄, 安井 健, 吉原 智彦, 松尾 卓摩
    2011 年 65 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/27
    ジャーナル フリー
    製塩環境下でのフランジ締結部における腐食をアコースティック・エミッション(AE)法を用いて検出およびモニタリングできるか検討し,AEの発生挙動と腐食との関係について検討した.最初に,ポテンシォスタットを用いて電位制御下におけるフランジ締結部の腐食をAEを用いてモニタリングした.その結果,AEはアノード電流が上昇する期間に多く検出され,検出されたAEの音源は概ね腐食発生位置と一致した.次に流水環境下においてフランジ締結部の腐食のAEモニタリングを圧電型AEセンサを用いて行った.その結果,腐食からのAEの発生頻度は10~30個/hであり,AEのピーク周波数は腐食の進展とともに高周波側に移行することがわかった.次にマルチチャンネル型光ファイバAE計測システムを用いて同様に流水環境下おける締結部の腐食をモニタリングした.その結果,AE発生頻度は腐食程度と相関があることがわかった.結果としてAE法はフランジ締結部の腐食のモニタリングに対して有効な手段になる得る可能性があることが分かった.
総説
  • 矢吹 彰広
    2011 年 65 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/27
    ジャーナル フリー
    This review summarizes research on the near-wall hydrodynamic conditions in a jet-in-slit corrosion testing apparatus for flow-induced corrosion testing, and includes a review of the performance of the apparatus in the flow-induced corrosion testing of copper alloys in a high-salt-concentration environment. The near-wall hydrodynamic conditions on the specimen surface in the apparatus were measured with pressure gauges. The distribution of near-wall velocities and velocity fluctuations in vertical and horizontal directions to the specimen surface were determined. As a result, the hydrodynamic parameters exhibited differing distributions, and the apparatus was useful in investigating the relationship between hydrodynamic conditions and material damage. Flow-induced corrosion tests for copper alloys were carried out in a high-salt-concentration environment using the jet-in-slit corrosion testing apparatus. As the salt concentration increased, the corrosion damage increased during intense flow. During static flow, however, corrosion was not affected by the salt concentration of the solution. A spongy film was confirmed on the surface during static flow, but no film was observed on the surface during intense flow. When the temperature of the solution increased, corrosion damage also increased regardless of flow conditions. As dissolved oxygen increased, corrosion damage also increased.
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