秋田沖日本海の海水およびハタハタ,サケの精漿, 卵巣液に含まれている元素類をICP-MSによって分析し, 以下の結果を得た.
1) ICP-MSの分析精度は,吸光光度法および原子吸光分析法のそれと同レベルで, ICP-MSにより海水および海産魚体液試料をほとんど前処理せずに元素分析しても, その分析精度は十分に保持されることがわかった.
2) 海水の主体成分であるナトリウム, マグネシウム, カリウムおよびカルシウムの濃度は, いずれの海域でもほぼ一定であると判断された. 一方, タリウムを除く微量元素には, 調査定点および水深による差が認められ, 陸水の影響を受けやすいことを示唆していると考えられた.
3) ハタハタ, サケの精漿および卵巣液中から, 海水中で検出されたほとんどの元素が検出された. また, 両魚種間で濃度差のある元素も確認された.
4) ICP-MSによる多元素分析は, 海水の性状や海洋環境の変化を知る上で有効な手段であり, かつ魚類の生態を理解する上でも有用な情報源を提供すると考えられた.
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