高分子電解質を用いたダイナミック膜の, 逆浸透型膜と濾過型膜の最適形成条件を調べ, 以下の結果を得た.
逆浸透型膜のPEI膜, CMC膜, Zr (IV)-PAA膜に関しては,
(1) 形成物質の粘度が小さいpH域で形成した場合, 高い塩除去率を示す膜が形成された. また形成物質の粘度が塩化ナトリウムを添加することにより低下するpH域では, 形成時の塩化ナトリウム濃度の増加に伴い塩の除去率も増大したが, 塩化ナトリウム添加によって粘度の低下が起こらないpH域では, 形成時の塩化ナトリウム濃度の影響はなかった.
(2) 塩除去率と含水率の関係より, 粘度の低いpH域で形成した高い塩除去率を示す膜は, 含水率が小さく, 緻密で, 荷電密度の高い膜であることが明らかになった.
以上のことから, 高分子電解質の粘度を測定することにより, 高性能な膜の形成pHおよび塩濃度の条件が判定できることが明らかになった.濾過型膜であるゼラチン膜については,
(1) ゼラチンの除去率は, 酸性側で高く, アルカリ側で低い結果が得られた.
(2) 膜性能テスト時に, 塩化ナトリウムを加えると, ゼラチンの除去率は低下した.
以上のことから, 膜形成は支持体と膜形成物質の静電的引力が存在するか, または, 静電的反発力が小さいpH域で行なうのがよく, また, 処理運転時は, ダイナミック膜と処理物質の静電的反発力を弱める塩の添加は望ましくないことが判明した.
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