PVAとポリカチオンであるポリアリルアミン塩酸塩をブレンドさせ,キャスト成形した後に種々の条件下で架橋を行うことで,様々な膜構造を有する親水性マトリクスアニオン交換膜を作製した.得られた膜の基礎特性評価を測定し,ポリカチオン含有量と架橋条件がイオン輸送特性に与える影響について検討した.架橋剤濃度の増加とともに膜含水率は減少した.また,ポリカチオン含有量の増加とともに膜荷電密度は増加し,ポリカチオン含有量が20wt.%,架橋剤濃度が0.1vol.%の際に最大値0.78moldm
–3を示した.膜抵抗もまたポリカチオン含有量と架橋剤濃度に依存しており,ポリカチオン含有量が20wt.%でかつ架橋剤濃度が0.01vol%の際に最小値1.23Ωcm
2を示した.膜の動的輸率はポリカチオン含有量の増加,架橋剤濃度の増加に伴い増加したが,一方で架橋剤濃度の増加とともに膜抵抗も増加した.これらの結果はポリカチオン含有量および架橋剤濃度を変えることでPVAベースアニオン交換膜のイオン輸送特性を制御できることを示している.
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