既存の逆浸透膜/ナノろ過膜(RO/NF膜)の欠点として,ホウ酸(H
3 BO
3 )に代表される低分子量で非荷電の溶質に対する除去率が低いことが挙げられる.そこで本研究では,H
3 BO
3 の除去率を支配する孔の形成について,文献で議論されている2つの孔形成メカニズムを取り上げた.そしてこれらのメカニズムを反映したRO/NF膜の物理化学的特徴を評価することにより,H
3 BO
3 および水の膜透過性を支配するRO/NF膜の物理化学的特徴に関する理解を深めることを目的とした.8種類のポリアミド複合RO/NF膜を対象として実験を行った結果,pH 10.0におけるR-COO
-濃度はH
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3 の透過性および水の選択透過性と相関がなかった.その一方で,弱い相関ではあるが,pH 6.0におけるR-COO
-濃度はH
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3 の透過性および水の選択透過性と相関が得られた.この結果から,水およびH
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3 の膜透過性は,pH 6.0でR-COOHが解離するような比較的大きい孔の数により決定されると考えられた.また,ポリアミド活性層の重量が20 %減少する温度
T20%はH
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3 の透過性および水の選択透過性と強い相関を示した.これは先述した結果を支持すると同時に,水およびH
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3 がaggregate poreを通ってポリアミド活性層を通過すること,そしてaggregate poreの数が少ないRO/NF膜はaggregate poreの孔径が小さく,より効果的にH
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3 の膜透過を抑制していることを示唆する結果であった.
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