日本海水学会誌
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38 巻, 3 号
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  • 馬場 由成, 井上 勝利, 後藤 昭弘, 中森 一誠
    1984 年 38 巻 3 号 p. 137-141
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海水からのリチウムの回収の基礎的研究として, 数十種類の吸着剤について検討し, その中で最も効果的であった吸着剤KIW300 (2.5MgO・Al2O3・xH2O) を用いて人工海水からのリチウムの吸着機構について調べた.吸着速度および吸着平衡の温度依存性により熱力学的パラメータを求めた.活性化エネルギーE=10.1kcal/molおよびエンタルピー変化ΔH=8.45kgal/molが得られた.さらにリチウムの吸着量は溶液のpHに大きく依存し, 約pH8で最大吸着量を示した.このpH依存性は, 吸か着剤KW300の表面水酸基のH+と溶液中のLi+とのイオン交換反応により説明された.しかしながら, 得られたエンタルビー変化は単なるイオン交換反応の場合よりも大きく, リチウムの吸着はより複雑な反応を伴っていることが推定された.さらに人工海水中の共存イオンがリチウみの吸着に及ぼす影響を調べた.その結果, リチウムの吸着量は, マグネシウムイオンの共存により減少し, 硫酸イオンの共存により増大した.
  • 野村 貢, 黒田 修, 高橋 燦吉, 有川 喜次郎, 後藤 藤太郎, 轡田 隆
    1984 年 38 巻 3 号 p. 142-147
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海水淡水化および高温運転を目的に構造および装置材料を最適化した電気透析槽を開発し, 開発装置を用いた太陽熱利用高温電気透析法海水淡水化システムの実用化研究を推進した.
    容量10m3/日の試験プラントを香川県多度津町高見島に設置して運転研究を実施した結果, 運転温度 40℃で透析電力8.54kW・h/m3の低い値を確認, 昭和58年2月からの約7か月の長期連続運転で信頼性を確認, システムの有効性を実証した.
  • 外山 茂樹, 森 英利, 山田 修三, 増田 吉則
    1984 年 38 巻 3 号 p. 148-153
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    汚れの生成機構および機械的な汚れのはく離機構に関する知見を得ることを目的として, 流路壁面への油滴の付着実験と付着膜のガラスビーズによるはく離実験を行った.
    油滴は汚れの初期段階では, 付着量がかなり不規則な値を示したものの, 離散的に付着をした油滴が時間とともに成長をし, 合体とはく離を繰り返しつつ平衡状態に至る様子が観察された. そして油滴の付着量は流速やテストユ管の材質により大きく影響を受けることが認められた.
    また汚れの除去実験に関しては, あらかじめ汚れとして設置したパラフィン膜のはく離量が直線型摩耗の形態を呈し, そのはく離量が流入粒子負荷量のほぼ1乗に比例をし, さらには粒子速度の2.5乗に比例をすることが実験的に明らかとなった.
  • 海水希少資源回収に関する研究 (第1報)
    妹尾 三郎, 小田 康義, 少西 季雄
    1984 年 38 巻 3 号 p. 154-157
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海水中のウラン吸着剤としてチタン酸について平衡吸着量および吸着速度の測定をした結果,
    1) 1チタン酸の乾燥粉末の平衡吸着量として315μg-U/g-Tiが得られた.
    2) 成型チタン酸について吸着速度を測定し, 吸着速度の律速段階がウランの拡散にあると考えて解析した結果, 鴨吸着開始初期を除いては粒子内拡散律速によつて吸着が進むものと考えられる.
    本研究は, 昭和51年に資源エネルギー庁の海水希少資源回収システム技術開発調査の一環としての吸着, 脱着部門の調査として行ったものである.
  • 海水希少資源回収に関する研究 (第2報)
    妹尾 三郎, 小田 康義, 小西 秀雄
    1984 年 38 巻 3 号 p. 158-161
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    おもに酸化チタンメーカーの酸化チタン製造工程の中間製品であるチタン酸のウランの吸着剤としての性能を, 加圧成型し破砕整粒したものについて海水中のウランの吸着速度を測定した. その結果, 粒子内拡散が律速になっているものと液境膜拡散が律速になっているものの2種類の異なる拡散機構が観察された.
    液境膜拡散律速の吸着速度を示したチタン酸は, 長さが0.1μm程度の繊維状の結晶が束になった構造であることが観察された.
    酸化チタンメーカーの酸化チタン製造工程の中間製品のチタン酸は, 原料の産地およびチタン酸の製造条件によってウランの吸着性能が異なる. また, これらのチタン酸は粒子内拡散係数がD=0.21×10-6cm2/日程度で, 尿素法の結晶性チタン酸の粒子内拡散係数と比べてかなり小さい値であった.
  • 村上 正祥
    1984 年 38 巻 3 号 p. 162-168
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    現在, 製塩工場で使用されているイオン交換膜から生成されるかん水の組成について検討した結果, 陽イオン間の量比については3社の膜間に差がなく, 陰イオンについては, 細かくみれば3社の膜でSO4量に少し差が認められるが, SO4の絶対量が少ないのでその差は問題にするほどではない. この点を除けば, 現在のイオンかん水の組成 (成分比) は使用する膜や装置に関係なく, 純塩率によって一義的に決まっており, 全塩分濃度が変わっても各成分の比率は変わらない. 製塩という観点からみれば, かん水の純塩率を高あることは有利であり, 有効である. いままでの純塩率の向上は, もっぱら陽イオン側の選択性向上によって実現されてきたが, 現行の方式の膜であれば純塩率96%あたりに限界があり, それ以上の純塩率向上は1価イオン間の選択性が改良されない限り無理である.
  • 伊藤 文夫, 丸茂 隆三, 福岡 一平, 田村 正之
    1984 年 38 巻 3 号 p. 169-185
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    今回の調査結果を要約すると以下のとおりである.
    (1) 海象
    ナウル近海は, 鉛直的に三つの水塊から形成されている. T-Sダイアグラムの解析から, 100m以浅の赤道表層水 (高温低塩分, 28.7℃, 34.1~34.6‰), 200mを中心とする熱帯高塩分水 (高塩分, 21.8~11.6℃, 35.3‰), 500m以深に太平洋赤道中層水 (低温低塩分, 10℃以下, 35‰以下) が存在することが認められた.
    (2) 水質
    ナウル近海では, 赤道表層水 (0~100m) のリン, ケイ素および窒素の各栄養塩は, 植物プランクトンの増殖によって消費され非常に少ない. これに対し, 栄養塩は100mから下層に向かってしだいに増加している. この鉛直分布型は一般庭熱帯海域にみられるものである. 一方, 生物生産と関連する化学的酸素要求量, 濁度, クロロフィル-αおよび植物プランクトンの細胞数はいずれも100m層で極大を現わし, この層で植物現存量が最も大きいことを示していた.
    (3) プランクトン
    OTECプランクトン沖合では, 植物プランクトンは多様な種から構成されており, 特定な種が卓越することはなかった. 植物プランクトンの珪藻, 鞭毛藻とモナド, 円石藻では鉛直分布の極大は50~100m層にあり, これは亜表層クロロフィル極大とよく対応していた. 細胞数からみると, ナウル近海は植物プランクトン生産がかなり高いといえる.
    動物プランクトンは原生動物 (繊毛虫, 放散虫, 有孔虫), 橈脚類, 翼足類および尾虫類などから構成され, これらは200m以浅におもに分布し, 以深ではきわめて少なかった.
    (4) 付着生物
    全調査地点から採集された25種の生物のうち, ほとんどが第二次付着生物 (タマキビ類, レイシガイ類, ヒノデカラマツなどの匍匐性動物) であり, 人工構築物に対する汚損において重要な位置を占める第一次付着生物 (藻類, フジツボ, ムカデガイ類などの固着性動物) がきわめて少なかった. とくに, 配管内面についてはシライトゴカイとイソギンチャク類以外に付着生物は認められず, これら2種もプラント機能停止後に着生したものと考えられた.
    (5) 潮間帯生物
    採集生物はサンゴ類数種, 甲殻類 (カニ, ヤドカリ類) 23種, 軟体動物 (巻貝, 二枚貝類) 66種, 棘皮動物 (ウニ, ナマコ類) 10種を含む動物群が約100種, 海藻類は6種であった.
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