本研究では,ファインバブルの気-液界面を光合成が進行する新規な反応場として利用し,CO
2吸収および有機化合物への転換効率の低いシアノバクテリアの増殖促進技術を開発した.ファインバブルの気-液界面近傍では,気泡の負の表面電位特性によってシアノバクテリアの濃縮が引き起こされ,気泡の微細化にともなうCO
2物質移動の促進によってシアノバクテリアのCO
2吸収効率が高まる.結果として,光合成速度の増大によるシアノバクテリアの増殖促進が期待できる.反応温度が303 Kにおいて,自吸式微細気泡発生器,蛍光灯,反応槽からなる半回分式バイオリアクターを用いて,シアノバクテリアを含む培地に平均気泡径 (
dbbl) が80 μmのファインバブルを連続供給し,シアノバクテリアを増殖させた.光強度は反応槽の内部および外部に設置した蛍光灯の本数により変化させた.さらに,光強度が一定の条件下で
dbblを40 から6000 μmの範囲で変化させた場合についても検討した.その結果,
dbblが80 μmで光強度を37 - 527 μmol・m
-2・s
-1の範囲で変化させた場合,シアノバクテリアの比増殖速度 (
rsg) は光強度が365 μmol・m
-2・s
-1において極大値を示した.さらに,光強度が365 μmol・m
-2・s
-1で
dbblを変化させた場合,
dbblの減少にともない
rsgが増大する傾向が得られ,
dbblが40 μmでの
rsgは1,500 μmの約2.5倍となった.これより,CO
2の供給律速条件下では,ファインバブルの導入によりシアノバクテリアの増殖を促進できることが示唆された.
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