1) 同符号イオン間の選択透過係数
TABを, 膜中でのイオンの移動速度uA, uB, 原液中のイオン濃度
COA,
COB, 分離係数
KAB, 電流密度
i, 拡散層の厚さδ, 原液中でのイオンの拡散定数
DA,
DB, 膜中でのAイオンとBイオンの輸率
t±, 原液中でのイオンの輸率
tA,
tBおよびファラデー定数
Fの関数として表わした (15) 式を導いた.(15) 式によれば,
iδは
TABに対する一つのパラメーターとみなすことができる.
2) 極限の電流密度
icritおよびその時の選択透過係数
TABcritを表わす (20) 式と (21) 式を導いた.
3) 希釈室のバルク溶液のBイオン濃度
COBと, 膜面の溶液のBイオン濃度
CSBが等 しくなるときの選択透過係数
TABおよび分離係数
KABを表わす (23) 式と (26) 式, および
TABが
TABcritと 同じ値 を示す時 の分離係数
KABcritを表わす (28) 式を導いた.
4)(15),(20) および (21) 式を数値計算した結果は図-8, 図-9, 図-11の とおりであつた. これらの結果から, 電流密度
iの増大とともに
TABが 一定値
TABcritに漸近し,
icritにおいて
TABcritとなる過程が明らかにされた.
既往の試験結果の中には計算結果と傾向が極めてよく一致するものがあつた. これは, 物質移動モデルの妥当性 を示すものである.
5)(15) 式から
TABと同時に膜面溶液のイオン濃度
CSA,
CSBおよび
KABを求め, これらと (23),(26) および (28) 式から得られた
TAB,
KABおよび
KABcritの関係を考察した. 概要次のとおりである.
(1)
KAB>
KABcritであるときは
TABは
TABcritより大なる値から
TABcritに近づき,
KAB<
KABcritであるときは
TABは
TABcritより小なる値から
TABcritに近づく.
(2)
KAB<
KABの ときは
CSB>
COBであり, 電流密度の増大とともに
KAB>
KABになると
CSB<
COBとなり,
icritにおいて
CSB=0,
CSA=0となる.
6) 原液の温度の影響について考察した結果,
TABおよび
icritは温度の影響をうけるが,
TABcritは温度にはほぼ無関係な特性値であることがわかつた.
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