イオン交換膜製塩を行なっている7工場において, 膜面付着物の実体や付着機構を明らかにする目的で, イオン交換膜に付着する微生物や有機物の調査を行なった.
付着物重量や付着速度は常に海水入口部側のスペーサー部分に高い値がみられたが, カチオン膜, アニオン膜については, どちらかに
付着物がかたよって蓄積しているといった傾向は認められなかった.
付着物中の細菌は単位面積当たり104~105/cm
2, 単位重量当たり10
4-10
5/cm
2, 単位重量当たり10
510
6/mgと高い値であった. 一方, 植物プランクトン量の指標としてのクロロフィルaは0.02μg/cm
2と低く, 付着物に占める植物プランクトンの割合が非常に低いことを示している.
膜面付着物中の細菌相は, 工場の置かれている地域の海水中の細菌相を反映しており, 原料海水に由来するものと思われる.
顕微鏡観察の結果, 付着物の中に縦横に繊維状につらなる微生物が認められ, 調査時期を問わずまた各工場のカチオン膜, アニオン膜, スペーサーを問わずすべての試料に認められ.
イオン交換膜面にまず微生物が付着, 増殖することによりprimaryfilmが形成され, そこに無機質の粒子や植物プランクトンの破片などがトラップされ, 付着物としての複合体が形成されていくものと考えられる.
調査に常に同行され, イオン交換膜製塩に関して何かと教えていただいた日本専売公社小田原製塩試験場, 藤本好恵氏に感謝の意を表する. また, 調査に際しては, 日本専売公社, 各製塩工場の方々にたいへんお世話になったことを感謝する. 調査や試料の分析などに著者らの研究室の久米恒男, 有村和子, 安田公昭深見公雄, 芝恒男の諸氏にはたいへんお世話になった.
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