海流利用型ウラン吸着装置を提案し, 装置工学的検討を加えた.本装置は海中設置方式を採用し, 吸着剤充填層は装置1基当りの海水流入面積を増加させるため屏風型としている. 吸着装置への吸着剤の入れ替えは, 支援ブイを吸着剤運搬船に接続し, すべてスラリー輸送により行うものである.
海流利用型ウラン採取システム設計に必要な知見を整備し, システムの装置因子, 操業条件と採取コストの関係について計算を行った.
ウラン採取量は固定床内と吸着剤粒内のウラン収支から導かれる基礎式を数値計算により解くことで求めた. アミドオキシム樹脂を吸着剤として, カラムテスト法により, 天然海水の破過曲線と吸着量変化を実測し, ウラン採取量の評価法の妥当性を検討した.
ウラン採取コスト評価の基準を定め, 1例として, ウラン換算年産1,000トンのプラントのコスト評価の概算を行った. 粒径1mmのアミドオキシム樹脂を厚さ20cmに充填した固定床を吸脱着サイクル90日で運転した場合のコストは19万円/kg-Uであった. この場合のコストの内訳は, 吸着剤コスト35%, 吸着剤の運搬コスト17%, 装置コスト38%, その他10%であった.
本コスト計算は現状では不確定要素を数多く含んだものであることを指摘しておく. しかし, 少なくとも海流利用・固定床型吸着システムに関する限り, ここ
でのシミュレーションスキームは基本的に合理的なものであって, 今後吸着剤性能, 吸着剤および装置コストについてのより詳細で正確なデータが与えられれば, 本コスト試算の精度も改善されることになろう.
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