製塩を核とした海水資源の有効利用プロセスを構築するために,製塩苦汁からのCaおよびMgの回収および高品位化法を検討した.塩の溶解度の観点から,製塩苦汁中の溶存CaおよびMgとCO
2の反応晶析によるCaおよびMg炭酸塩の合成は,効果的な分離/回収法とみなせる.本研究では,製塩苦汁へのCO
2ファインバブルの導入によって得られるCaおよびMg炭酸塩の生成領域を水溶液pHおよび温度(
TS)で整理した.CO
2ファインバブルの気–液界面では,表面電位特性およびCO
2物質移動の促進に起因する局所的な高濃度場が創成できる.さらに,製塩苦汁のpHおよび
TSを高めると,気–液界面での局所的なCa
2+,Mg
2+,およびCO
32-濃度とバルク水溶液中のCaおよびMg炭酸塩の溶解度が変化するため,気–液界面近傍での局所過飽和に変化が生じ,析出するCaおよびMg炭酸塩の制御が可能となる.本稿では,pHが5.3-8.3,
TSが278-333 Kの製塩苦汁に,平均気泡径が40 μmのCO
2ファインバブルを60 min連続供給し,CaおよびMg炭酸塩を反応晶析させた.その結果,pHが5.3-6.8では,
TSが278-298 KでCaMg(CO
3)
2が,
TSが333 K以上でアラゴナイト型CaCO
3が高選択的に結晶化した.また,pHが7.8以上では,
TSが298 KでCaMg(CO
3)
2およびアラゴナイト型CaCO
3と同時に副生成物としてMg(OH)
2が得られた.
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