日本海水学会誌
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64 巻, 5 号
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巻頭言
特集:「西日本の海水科学研究(2)」
総説
  • 比嘉 充, 西村 恵美
    2010 年64 巻5 号 p. 244-249
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Ion-exchange membranes with a semi-interpenetrating network structure were prepared by blending poly (vinyl alcohol) (PVA) and polyelectrolytes. The membranes obtained were physically cross-linked by annealing them at various temperatures and chemically cross-linked by reaction with glutaraldehyde aqueous solutions to obtain heterogeneously cross-linked structure in the membrane. The charge density of the membrane increased with increasing polyelectrolyte content, annealing temperatures and the concentration of a cross-linker agent.
    The permeability coefficient of methanol through the PVA-based cation-exchange membrane was 30 times lower than that of Nafion®117 under the same conditions. The PVA based membrane had about 3 times higher proton permselectivity than Nafion®117.
    A bipolar membrane and a charge mosaic membrane were also prepared by pasting PVA-based cation-exchange layers and anion-exchange layers. The permselectivity for salt through the PVA-based charge mosaic membranes was more than 30 times higher than the charge mosaic membrane Desalton® (Tosoh Co. Ltd.)
    The PVA based ion-exchange membranes can be prepared more cheaply and have more anti-fouling properties than commercially-available ion-exchange membranes prepared from styrene- divinylbenzene based resin. Hence, the PVA based membranes will have potential application to the desalination of salt water or purification of biochemical materials or food additives.
解説
報文
  • 野田 寧, 麻田 拓矢, 小林 憲正
    2010 年64 巻5 号 p. 275-283
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    食用塩のための農薬等に関する一斉分析法を固相抽出,LC/MSにより開発した.塩試料から農薬等を抽出するため,pHを3.5とした試料溶液を10%EDTAで前処理したスチレンジビニルベンゼンメタクリレート固相抽出カートリッジに通液し,回収率70%以上,変動係数20%以下を得た.溶出液はアセトニトリルであるが,測定に際してはその80%を水に変換することで,親水性物質についてシャープなピークが得られた.ベノミル類は分析中に代謝してしまうが,ベノミル類の合計として定量することができた.すべての農薬等の定量下限は0.01 mg/kg以下であった.この方法で34の農薬等が分析でき,既報のGC/MSによる一斉分析法と合わせると塩事業センターが選定した162の農薬等のうち,128の農薬等が分析できることとなった.
  • -5段効用濃縮器の製作と性能-
    野底 武浩, 天久 和正, 押川 渡, 中野 敦
    2010 年64 巻5 号 p. 284-290
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    傾斜型下方加熱方式の5段効用濃縮器を製作し,性能試験を行った.濃縮器の片面は1 m×2 mの面積が100℃の熱源により加熱され,他方の面は蒸発を伴う自然対流により冷却される.性能試験の結果を既報の数値シミュレーション結果と比較検討するとともに部材の腐食対策を行った.
    各々の蒸留段において,海水蒸発シートと凝縮水シートの間に厚さ5 mmの網状のスペーサーを挟む構造にすることにより,濃縮海水と凝縮水は混合することなく海水蒸発シート下端から別々に回収された.尚,スペーサーの遮蔽率は40%であった.蒸発量は,温度が高い初段が最も多く,温度が徐々に低くなる後方の段ほど少なくなる.全ての段の総蒸発量は,15.4 kg/hであった.総蒸発量の増大には,スペーサーの遮蔽率を小さくすることと,濃縮器の最終段の冷却面の熱伝達率を増大することが効果的であると,数値シミュレーション結果との対比から示唆された.仕切り板である亜鉛めっき鋼板にシリコーン皮膜を形成することにより,大きな防食効果があることを確認した.
  • 古賀 明洋, 野田 寧
    2010 年64 巻5 号 p. 291-296
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    食用塩に含まれるヒ素の形態を明らかにするため,HPLC/ICP-MS法の適用について検討した.溶離液の希釈や塩化ナトリウム濃度がクロマトグラムへ与える影響を検討し,無機態であるAs,Asおよび有機態であるアルセノベタインを明確に分離し,食用塩に含まれるヒ素の形態を明らかにすることができた。測定下限は,各成分とも,0.2 g/100 mL塩化ナトリウム溶液中で0.5 μg/Lであり,塩に換算すると0.25 mg/kgであった.
    過去の調査でヒ素が検出された市販食用塩の分析に,本法を適用したところ,ヒ素は主に無機態のAsとして含まれていることが確認された.一方,ヒ素化合物は,200℃以上に加熱されると,無機態のAsに変化することが確認された。これより、塩の原料にヒ素化合物が混入した場合,加熱工程において過度な加熱が行われることにより,Asに変化する可能性が示唆された.
  • 功刀 基, 松本 道明, 近藤 和生
    2010 年64 巻5 号 p. 297-304
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年大気中CO2濃度の上昇による地球温暖化が懸念されており,その対策としてバイオマスの利用が考えられている.本研究では,その中でも特に光合成を行う微細藻類を利用した対策に注目した.微細藻類を使用することによってCO2の除去を行うだけでなく,CO2の固定化に伴う有用物質の生産を同時に行うことができる.本研究では,微細藻類Haematococcus pluvialisによるCO2除去と有用物質生産を同時に行うプロセスの構築を目的として,有用物質生産に及ぼす培養条件の影響について検討した.
    藻体は,空気にCO2を混合させることによって光合成能が上昇し,空気単独通気の場合よりも成長が促進された.これに伴い,有用物質生産も促進された.しかし,CO2濃度が高くなりすぎると藻体の成長が抑制され,CO2濃度の最適条件は5%であることがわかった.また通気流速に関しては,通気流速を大きくすると短時間で培養を行えるが,過剰な通気流速下では成長が抑制されることがわかった.最適な通気流速は150 cm3/minであることもわかった.
  • 渕脇 哲司, 麻田 拓矢, 吉川 直人, 長谷川 正巳
    2010 年64 巻5 号 p. 305-312
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    これまでに開発した高速ろ過装置の至適操作条件の設計手法を構築することを目的として,凝集剤添加濃度,ろ過速度,円筒カラム層高をパラメータとした装置における圧力損失の経時変化シミュレーションを実施した.
    高速ろ過装置における最適な凝集剤添加濃度は,濁質の種類,量によって変化するが,添加濃度を適切な値に設定することにより,装置内で生じる凝集フロックの捕捉量と圧力損失との関係は直線で相関されることが明らかとなった.
    そこで,濁質の種類,量が異なる海水を対象に,種々凝集添加濃度,ろ過速度,円筒カラム層高を変化させた実験を実施して,そこで得られたろ過特性をケークろ過における圧力損失の基礎式に適用することにより,圧力損失の経時変化をシミュレーションする手法を明らかにした.本法により,圧力損失の経時変化を良好に推定でき,凝集フロックの捕捉によって減少するろ過速度,円筒カラム層高の減少をシミュレーションすることも可能とした.
    これより,濁質量の異なる製塩2工場において,所望の性能としてろ過時間11 h以上を確保し,その間のろ過海水の水質(FI値)が3.5以下になるような凝集剤添加濃度から,ろ過速度,円筒カラム層高を設計し,その検証試験を実施したところ,上記の性能を満足でき,本シュミレーションが有効なことが示唆された.
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