日本海水学会誌
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50 巻, 6 号
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  • 大矢 晴彦, 鈴木 喬, 中尾 真一, 加藤 茂, 杉 二郎, 辻 正道
    1996 年 50 巻 6 号 p. 389-395
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海水の濃縮で問題となるスケール成分をある程度まで除去することに成功すれば, 海水中に残存するスケール成分が析出するぎりぎりの限界まで海水を濃縮し, 淡水の回収率を引き上げることが可能となる. スケール吸着プロセスや淡水回収率を80%まで上げる超高圧逆浸透プロセス等のこれからの研究開発が期待される技術と電気透析や蒸発晶析等の従来の海水濃縮技術を組み合わせ, 海水を総合的に利用することを想定した海水総合利用システムを提案した.
  • 加藤 茂
    1996 年 50 巻 6 号 p. 396-405
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究で11科約150種の種類を用いて検討したが, 塩 (海水) 濃度により同じ科のなかで同じ種類でも品種によりその塩に対する感受性が異なっていた.
    選抜野菜7品種を用いて塩濃度0ppmから10,000ppm濃度範囲で栽培試験を行い, 塩応答について検討をした. 塩を含まないS-0区での生育が良好である種が4種であった. スパークラー, タカフジの2種は, 塩濃度1000ppmまでは生鮮重が増加した. また, この2種は塩濃度3000ppmでも対照区に比較し0.98, 0.83と極端な生鮮重の減少が見られないことから10倍希釈の海水を用いた栽培も可能であることが推察される. 栽培液の塩濃度上昇と共に植物体内へのNa+とCl-の蓄積は増大したが,K+, Ca2+, Mg2+は逆にその分布濃度が徐々に減少した. 有機酸のなかでリンゴ酸の濃度が最も高く, 次いでクエン酸であった. シュウ酸の蓄積は, 殆ど見られなかった. 糖類の組成は, グルコース, フラクトースを中心にシュクロース, マルトースも蓄積していた. これら有機酸類, 糖類の存在により野菜類の食味に関与していることが推察されるが今後の検討課題である.
  • 中尾 真一
    1996 年 50 巻 6 号 p. 406-412
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Two types of reverse osmosis (RO) process were proposed to obtain high recovery of fresh water in sea water desalination. The membrane parameters, the reflection coefficient o, the solute permeability P, the pure water permeability Lp, which are necessary in the process simulation were determined by experiments for three kinds of membranes commercially available, NTR-70SWC sea water desalination RO membrane, NTR729HF high flux and low rejection nanofittration (NF) membrane, NTR759HR high rejection NF membrane. Maximum pressure applied for the RO membrane in the experiments was20 MPa, and 10 MPa for the NF membranes. The NaCl concentration in feed ranged from 0.15 to 12 wt%. The process simulated were single-stage one-pass process with NTR-70SWC or NTR759HR and multistage (two or three stages) recycle process with NTR729HF and NTR759HR, and energy consumption and membrane area required were calculated. On the multi stage processes with NF membranes, both the energy and membrane area were almost the same, but the single-stage processes with NF or RO membrane required less energy and more membrane area, especially the membrane area for the process with 70SWC was much more than that for other processes because of the small Lp value.
  • 辻 正道
    1996 年 50 巻 6 号 p. 413-425
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Ion-exchange adsorption could be expressed in terms of the corrected selectivity coefficient for prediction of ion-exchange property at concentration and temperature conditions different from those used for their determhlations. The plot of corrected selectivity coefficient vs. the concentration of exchanging ions in exchanger is conjugative with the expression of thermodynamic constant. It also generates the ion-exchange isotherm and distribution coefficients.
    Amorphous titanic acid has ben established for selective recovery of multivalent oxoanions in concentrated sea water. The ion-exchange selectivity was studied for halide ions and various oxoanions such as BrO3-, IO3-, Te (IV), Se (IV), V (V), P (V), Sb (V), As (V), W (IV). The latter oxoanions have been found to be very selectively adsorbed from sea water and could be removed efficiently. Chromatographic separations of BrO3- from IO3- and I- from Te (IV) were successfully performed using a small titanic acid column with 5mm internal diameter and 4cm length at room temperature. These oxoanions could be eluted using 0.1-1 M NaOH solution.
  • 鈴木 喬, 阪根 英人, 佐藤 利夫
    1996 年 50 巻 6 号 p. 426-433
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    元来層間にK+を含んでいるTaenioliteを元にしていることから, アルカリ金属イオンに対してイオン記憶能があることが期待されるNa+形TaenioHteのイオン交換特性について検討を行った. NaTはK+に対して非常に高いイオン交換反応選択性を示し, イオン記憶効果を持つことが明らかになった. Ca2+やMg2+に対しては単独のときには高い選択性を示したが, K+が共存するときにはこれらのイオンに対して選択性はなく, 実海水による試験でも共存イオンによるK+の選択性への影響はほとんどなかった. 以上のことからNaTはカリウムイオン分離剤として有用であると期待される.
    K+と化学的な性質がよく似ているNH4+に対するNaTのイオン交換特性についても検討を行った. その結果, NH4+とK+との間には選択性の差はなく, 同様に取り込むことがわかった.
  • 相原 雅彦, 大矢 晴彦, 根岸 洋一, 柳瀬 一生
    1996 年 50 巻 6 号 p. 434-442
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    省資源・省エネルギー海水総合利用システムのサブシステムであるスケール成分除去システムの研究を行った. スケール成分としては海水に含まれるアルカリ土類のうちCa2+, Mg2+を対象とし, その濃度をそれぞれ400ppmから150ppm, 1350ppmから500ppmまで低下させる手段としてイオン交換樹脂吸着法を採用した. また省資源・省エネルギー海水総合利用システムでは, 高効率化のために有用成分を回収した後の廃水 (高濃度の食塩水となることが予想される.) を捨てることなく, 吸着剤の再生に用いることが想定されている. そこで本システムに適用可能な有機吸着剤として, Na型スチレン系スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂, Na型アクリル系カルボン酸性弱酸性陽イオン交換樹脂を合成し, それぞれの樹脂についてバッチ法, カラム法でCa2+, Mg2+吸着・脱着特性等を検討し, 次の結果を得た.
    (a) モノマーとしてスチレン (St), メタクリル酸メチル (MMA), アクリル酸メチル (MA), アクリル酸エチル (EA), アクリロニトリル (AN) を用い, 懸濁重合法により粒径0.3mm-0.6mmのイオン交換樹脂を得た. イオン交換容量は架橋度8%のSt-DVB, EA-DVB樹脂で, それぞれ1.1, 1.4[meq/ml-Resin] であった.
    (b) 濃縮 (NaCl) 模擬海水を用いてスケール成分吸着後の樹脂の再生実験を行い, 上記イオン交換樹脂よりNa型スチレン系スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂, Na型アクリル系カルボン酸型弱酸性陽イオン交換樹脂を選別した.
    (c) 本実験で合成した樹脂がNa+-Ca2+系においてCa2+選択吸着性を持ち, 海水濃度付近ではEA-DVB樹脂が最も高い吸着性能を持つことが分かった. 一方, St-DVB樹脂はCa2+の脱着性能に優れていることが分かった.
    (d) 吸着・脱着の長期的な繰り返し使用が可能であることが確認された.
    (e) カラム法での破過流量はEA-DVB樹脂が最も多く, カラム法での吸着特性に優れていることが分かった. St-DVB樹脂は脱着速度が大きく, カラム法での脱着特性に優れていることが分かった.
    本システムで実際に用いる場合, カラム法が想定される. カラム法での結果より吸着性能はEA-DVB樹脂が優れているが, 脱着性能はSt-DVB樹脂が優れており特に架橋度2%のものが最も優れている. 最適樹脂を選定する際には, 本システムの特徴から考えると吸着性能もさることながら脱着性能が重要である. しかし, 吸着性能を重視するためにSt-DVR樹脂の架橋度を2%まで下げていったが, 2%のものでは吸着量が少なくなりすぎてしまい4%以下に架橋度を下げることの有意性はみられなかった. そこで, 総合的に判断すると架橋度4%のスチレン系スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂が本システムにおいての最適樹脂であると考察される.
  • 李 明忠, 斉藤 敬一郎, 比嘉 充, 谷岡 明彦
    1996 年 50 巻 6 号 p. 443-448
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    弱電解質両性荷電膜である絹フィブロイン膜を使用して, 外部溶液のpHを変化させ, 圧透析の実験を行った結果, 濾過係数lpはpHの変化にもかかわらず大きな変化が見られなかったが, 反射係数σと溶質透過係数ωは外部水溶液のpHに明らかに依存する. 外部溶液のpHが膜の等電点になるとσは最小値になり, ωは最大値になって, 塩の透過速度が最も大きい.
    外部溶液のpHを調節し, 両性弱電解質である絹フィブロイン膜の固定電荷状態をコントロールすることによって, 溶質である塩の透過速度を変えることが可能である.
  • Toshikatsu SATA, Yasuhiko KAKUYAMA, Koji MATSUSAKI, Yasuhiro KAGIYAMA, ...
    1996 年 50 巻 6 号 p. 449-460
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    各種ピリジニウム塩基を有する陰イオン交換膜を合成した. 即ち4-ビニルピリジン-ジビニルベンゼン, 2-ビニルピリジン-ジビニルベンゼン及び4-ビニルピリジン-2一ビニルピリジン-ジビニルベンゼン共重合体膜を合成し, これに各種アルキルハライド (沃化メチル, 臭化エチル, 臭化n-プロピル, 臭化n-ヘキシル) を反応させて陰イオン交換膜とした.
    これらの膜を用いて混合塩溶液の電気透析をした結果, 塩化物イオンに比較して疎水性陰イオン (硝酸イオン, 臭化物イオン) は陰イオン交換基及び膜そのものが疎水性になるほど膜を透過し易くなり, 特に硝酸イオンに於いて著しい. 他方これらの膜では硫酸イオンの透過性は塩化物イオンの透過性と殆ど同じであり, ピリジニウム塩基の種類を変えても殆ど変化しなかった. 強く水和しているふっ化物イオンの透過性は膜が疎水性になるに従って減少した. 最後に架橋の効果を調べるために1, 3-ジブロモプロパンを反応させた膜を合成したが, この膜は臭化-n-プロピルを反応させた膜より塩化物イオンに対する他の陰イオンの高い透過性を示した. これは膜内に反応したプロピル基の量が両方の膜で違うためと思われる (節効果).
  • 石川 時昭
    1996 年 50 巻 6 号 p. 461-476
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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