製塩用イオン交換膜付着物について, 付着量の測定およびその組成の分属分析について検討し, その方法を4製塩工場の膜付着物の調査に応用した. 付着物はスポンジと少量の濾過海水で洗浄して回収し, その回収した懸濁液の大部分を沈降分離し, 濾過, 純水による洗浄, 乾燥, 秤量して, 付着物全量を求めた.懸濁液の一部は遠心沈降後容積を測定し, その沈殿は乾燥, 秤量して比容積を測定した. 膜上の付着物の厚さは, 全重量, 比容積および膜面積から推定された.
分属分析はまず乾物中の灼熱減量を定量し, その灼熱残渣を熱希硫酸に溶解し, その溶解液をメンブランフィルターで濾過して濾液と沈殿に分離した. 濾液中の無機元素はICP分析装置で定性分析し主成分は同一機器で定量した. 灼熱減量はほぼ有機物で, 酸溶解後の沈殿物重量, ICP分析による珪酸, アルミナの合量はほぼ土砂である. 鉄分はFe含量から計算した水酸化第二鉄により推定した. これらの結果から, 付着物組成は有機物, 鉄分, 土砂, その他に分属された.
4製塩工場での調査は膜洗浄工程で行った. 結果は次のとおりである.
付着物重量: 0.1~1.5g-乾物/m
2 (平均12g/m
2)
推定付着厚さ: 2~23μm (平均8μm)
付着速度: 2~20mg-乾物 (平均12mg/m
2・day)
: 0.03~0.23μm/day (平均0.08μm/day)
有機物: 38~79%乾物中 (平均61%)
鉄分: 2~12%乾物中 (平均6%)
土砂: 15~53%乾物中 (平均31%)
その他: 0~4%乾物中 (平均3%)
無機元素として (+++) Mg, Al, Fe,(++) Si, Ti,(+) Mn,(±) Ba, Bが検出され, 酸処理後濾液中には, 乾物中の量に換算した平均値として, Fe3.3%, Mn0.09%, Al2.8%, Si1.2%, Ti0.05%, Mg0.6%が含まれていた.
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