海水の蒸発法淡水化について, 揮発性汚染物質であるアンモニアおよびシアンの生成淡水への移行を防止するため, アンモニアおよびシアンが金属と錯体を生成しやすいことを利用し, 金属を溶液に添加し, 留出傾向を把握することにより, 留出防止への可能性があるか否かを検討した.
金属添加によるアンモニア留出に対する抑制効果は, pHおよび塩分濃度でかなり左右される. そのため, アンモニア濃度の高い地域, pH7~8の中性領域, 塩分濃度の非常に薄い地域に限られ, また金属種によりその効果に差があることが示され, 金属濃度を高くすることにより効果が大きくなることを推定した.
シアンは, 比較的安定度定数の大きい鉄 (III), 銅の添加また安定化合物であるフェリシアン化カリウム, フェロシアン化カリウム含有溶液からでも, シアンの留出率は高く, 錯体が生成したとしても加熱蒸留により, 錯体系は分解されると思われる, シアン留出に対する金属添加の効果も, pHまたは塩分濃度により大きく影響される.
pH変化は, アンモニアおよびシアンの留出に対する金属の錯体生成による抑制効果に対して, 大きな影響を及ぼし, また加熱蒸留によりこれらの錯体生成による抑制効果を妨げると思われる. すなわち, 加熱により容易に錯体が分解するため, アンモニアならびにシアンは留出すると思われる. また, 金属添加によるアンモニアおよびシアンの留出に対する抑制効果は, 塩分濃度あるいは金属種, 金属濃度により明確な差を生ずる.
抄録全体を表示