塩酸を添加した海水を, イオン交換膜法によつて濃縮した場合のpH, 全炭酸濃度 (CO
2+HCO
3-+CO
3--) の変化, ならびに濃縮成績への影響を検討し, つぎの結果を得た.
1) 海水に塩酸を添加した場合のpHの低下は, pH4までは急激で, その後緩徐になる.
2) 酸添加海水を濃縮すると, 供給海水pHにらべて脱塩液pHは0-0.7程度上昇し, 濃縮液pHは0.3-1.4程度低下する.
3) 供給海水および脱塩液中の全炭酸濃度はpHが6程度まで, また濃縮液中のそれはpHが5程度まで低下する過程で急激に減小し, それ以降は減少が緩徐になる.
4) 供給海水に塩酸を添加することによつて濃縮液中の全炭酸濃度を減少させるには, 供給海水pHを4.5-5.5に調整するのが効果的で, その場合の塩酸の使用量は50-70g-HCl/m
3-海水程度, 濃縮液中の全炭酸濃度は0.4-0.55mmol/
l程度となる.これは酸を添加しない海水を濃縮した場合の1/5-1/7程度である.
5) 海水のpHが低下すると, 電流効率 (全塩分) は低下し, 2価陽イオンの透過性は小に, 硫酸イオンの透過性は大になる傾向がある
抄録全体を表示