日本海水学会誌
Online ISSN : 2185-9213
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19 巻, 6 号
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  • 塩水淡水化研究の概要
    岡 俊平
    1966 年 19 巻 6 号 p. 302-310
    発行日: 1966年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • イオン交換膜法
    山辺 武郎
    1966 年 19 巻 6 号 p. 311-316
    発行日: 1966年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 冷凍法の現状
    内田 隆
    1966 年 19 巻 6 号 p. 317-326
    発行日: 1966年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 角野 義孝
    1966 年 19 巻 6 号 p. 327-345
    発行日: 1966年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    食塩結晶に微量の異種陽イオンが混入した場合, その種類によって結晶形および透明度の変化することは, 一般に知られているがその理由については不明確な点が少なくない. 本研究はまず結晶形の変化についての理由を明かにせんとするもので (透明度に関しては別報の予定) これを要約すれば次のごとくである.
    I, 異種イオンの混入と結晶形態および透明度との関係の実態を詳細に知るため, 異種イオン (Mn2+, Cd2+, Pb2+, Hg2+およびCa2+の混入量を少しづつ順次変化せしめて育晶実験を行ない, 次の結果を得た.
    1) Ca2+イオン混入の場合は異種イオンを添加しない場合の結晶とほとんど変化しない.
    2) Mn2+, Cd2+, Pb2+等のいわゆる媒晶イオン混入の場合の結晶変化の実態は従来いわれているものより幾分異なる点のあることが明らかとなった.
    3) すなわち, 結晶変化は結晶形態と透明度との両面に現われることはもちろんであるが, 混入量の漸増に伴う結晶変化の推移には, すべてのイオンに類似性があり, もちろん, 変化は漸進的で卒然と起るものではないが概見的に次の三段階に分けることができる.
    I段階一混入量のわずかな区域であって, わずかに乳白色の半透明となり表面に多数の小突出面を有する拓摺状 (樹枝状) 結晶となる.
    II段階一順次混入量を増せば結晶面の小突起が順次消滅し, 全体の輪郭が本来の結晶形へと近づくがその表面がはなはだしく荒れた結晶となる. また透明度も順次増大し結晶中核部にわずかに乳白部を残す程度で大部分は透明となる.
    III段階一混入量がさらに増せば結晶面は順次平滑度を増し, ある所定濃度に達すれば遂に完全な平滑面を持つくっきりした透明結晶となる.
    4) イオンの結晶への影響力は既発表のものと幾分異なり, Cd2+イオンが最大でCd2+>Pb2+>Mn2+>Hg2+をなすことが明らかとなった. Cd2+イオンの場合には (111) 面および (110) 面が発生する
    II, 食塩結晶の結合エネルギーの算定法に関しての検討を行ない, さらに格子点の結合エネルギー分布と異種イオン混入による結晶形態変化との関係について検討した.
    1), イオン結晶の静電エネルギーの基本式はE=あるが, 従来これは収蝕不能の級数で単なる加算によつては, 真の値を求めえないとされているが, 加算の場合の対照格子点が食塩結晶の実態に合致し, 電気的中性が保たれておれば単なる加算によつて求めうることが明らかとなった.
    2) この加算法によれば, 結晶中の格子欠陥の有無, その所在あるいは欠陥数のいかんにかかわらず, 従来の方法によつて求め得なかった格子点の結合エネルギーまでもきわめて詳細に求めることができる.
    3) 格子欠陥が結合エネルギー分布に鋭敏に影響することを明瞭にすることができた. すなわち格子欠陥のない場合の結晶表面への結合エネルギー分布は大体角>稜上>面上であるが, 格子欠陥があればこの関係は卒然と変り, エネルギーの大なる点が面上あるいは稜上等にも随所に現われるのみならず, 反揺エネルギーを保有する格子点も現われる.
    4) 結晶成長における結合エネルギー分布変化の追跡により, ある格子点に新規イオンが結合すれば一般にその隣りの格子点の結合エネルギーが著しく大となり, この点が次のイオンの結合点となることが明瞭にわかる. この挙動は結晶成長におけるKosselのStep-Kinkの考え方に相通ずる.
    5) 食塩結晶において異種イオンの混入量が微量で, 適当の成長速度を有する場合は, 結合エネルギーが結晶形に対し支配的役割を果すものであり, したがって結晶成長における結合エネルギー分布変化の追跡により結晶形を察知しうべきことが明らかとなった.
    6) Cd2+イオン混入の場合の品癖 (111面) の発生も結合エネルギー分布によつて説明することができ, この現象が結晶核結合に帰国するものと判断される.
    7) 格子欠陥のない場合, 結晶内部の各格子点の結合エネルギーは. ほとんど一定であり, 各イオンは均ーな安定度をもつて平衡しているはずであるが, 格子欠陥のある場合, 結合エネルギーは不均ーとなり, 各イオンの安定度ほ不均衡となる. したがって格子欠陥のある場合イオンの変位が誘発され, パツキングが密となり織密な結晶となるべきである. 異種イオンの温入量を順次増加した場合の結晶形態の各段階への変化の現象も, このパツキング作用と結晶成長時の結合エネルギー分布とによって理解しうる.
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