水酸化鉄共沈法を用いて水中の微量クロムを分離し黒鉛炉原子吸光分析法で定量する方法について検討した結果を要約すると,
1) 検水に10w/v%炭酸アンモニウム緩衝溶液10mlを加え, pHを約7.5に調整後, 共沈剤溶液として鉄 (III) 3mgを添加して30分間撹拌すると, クロム (III) のみが定量的に共沈する.
2) クロム (III) を分離した濾液に塩酸 (1+11) 20mlを加えて共沈剤溶液として鉄 (II) 3mgを添加するとクロム (VI) はクロム (III) に還元される.その後, pHを約7.5に調整すると, クロム (III) は定量的に共沈し, クロム (VI) が定量できる.
3) これらの共沈物を塩酸 (1+20) 25mlを用いて室温で15分間浸漬放置するとクロムは完全に溶解し, GFAAS用の検液として使用できる.
4) 0~5μg/
lの範囲で検量線は良好な直線性を示し, 検出限界は0.026μg, 定量下限は0.085μgであった.
5) 本法は100~1,000mlの範囲で検水量の影響を受けない.
6) 海水, 河川水中の微量のクロムの分離定量に本法が十分利用できることがわかった.
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