マングローブ植物は, 熱帯・亜熱帯の海岸線や河口・河川流域の定期的に海水あるいは汽水の流入する地域に分布し生育している植物群である. マングローブ林の構成樹種の一種であるオヒルギは, マングローブ林が直接海水の影響を受ける林先端域にはほとんど分布が見られない種である. オヒルギ栽培試験の結果, F-20区すなわち0.6%NaCl濃度における生育は自然マングローブ林での生育のように最も良好であった.平均的な海水塩分濃度である3%NaClのF-100区での生育状況は, 発根は認められたが葉の伸長展開は劣り, 葉面積は小さくその葉も厚さを増していた. オヒルギ栽培液中のNaCI濃度上昇とともにNa
+イオンおよびCl
-イオンの植物体への吸収移行が増加し植物体内蓄積濃度も増加した. オヒルギの葉内および根内に分布したおもな有機酸は, シュウ酸とリンゴ酸であった. これら有機酸類は, 過剰カチオンと塩を形成して浸透圧調節を行っていることが推察された. オヒルギの幼苗生産を行うには, 約0.6%NaClの塩分環境下において初期栽培を行い, オヒルギ伐採後のオヒルギ生育適地に移植することによりオヒルギ分布域のマングローブ林の再生が順調に行うことが可能になるものと思われる.
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