日本化学療法学会雑誌
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44 巻, 8 号
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  • 村上 和久, 土肥 正善, 永田 弘, 小松 良英
    1996 年 44 巻 8 号 p. 583-589
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2倍系列希釈したcefcapene (CFPN) またはcefteram (CFTM) を含んだ4mlの液体培地にStaphylococcus aureus FDA 209P JC-1の菌液40μlを植菌し, 37℃ で20~24時間静置培養した。
    これを1代培養として, コントロール菌液とほぼ同じ濁度を示した菌液のうち薬剤濃度がもっとも高いものから同様に植え継ぎ, 14代まで継代培養した。親株に対し0.78μg/mlであったCFPNの寒天MICは5, 10, 14代継代株ではそれぞれ3.13, 12.5, >200μg/mlに上昇した。CFTMでも同様に, 3.13μg/mlからそれぞれ6.25, 25, >200μg/mlとなった。一方, flomoxefやcefhletazoleなどPBP 4に親和性の高いセファマイシン系薬剤のMICは, 最大2管までしか上昇しなかった。これらの継代株では耐性の上昇に伴ってPBP 4の産生量が増加しており, セフェム薬の作用を受けた菌では生存にPBP 4が重要な役割を果たしていることが示唆された。薬剤存在下で14代継代した株の耐性は不安定で, 薬剤を含まない培地で植え継ぐと簡単に低下した。耐性が低下すると共にPBP 4の産生量も低下した株がある一方, 産生量が逆に増加した株もあった。したがって, 14代継代株ではPBP 4の増量に加えて未知の要因も耐性に関与していることが示唆された。
  • 豊川 真弘, 浅利 誠志, 堀川 晶行, 塚本 寿子, 田原 和子, 砂田 淳子
    1996 年 44 巻 8 号 p. 590-594
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    MRSA 88株に対するcefotiam (CTM)/vancomycin (VCM), CTM/arbekacin (ABK) およびminocycline (MINO)/VCMのin vitro併用効果を1.25倍希釈系列を用いたcheckerboard法により測定し, MIC, MBC, fractional inhibitory concentration index (FIC index) およびfractional bactericidal concentration index (FBC index) を比較検討した。CTM/ABKおよびCTM/VCMの組み合わせではそれぞれ50および14%の株に対しFIC index≦0.50の相乗効果が認められ, 残りの株に対してはすべて相加効果が認められた。また, 併用時殺菌効果の指標として12株を対象に測定したFBCindexにおいても, 両組み合わせともに主として相加効果が認められた。さらに, CTM点滴静注時に約3時間維持可能な血中濃度であるCTM8μg/ml存在下では, ABKおよびVCMのMIC値が単剤MIC値のそれぞれ8~83%(平均39%) および30~83%(平均58%) まで低下した。一方, MINO/VCMの組み合わせでは39%の株に対し2.00<FIC indexの拮抗が認められ, また, FBC indexではすべての株 (12株) に対して拮抗を示し, MINOの併用によりVCMの殺菌力が抑制された。以上のことより抗MRSA抗菌薬であるABKあるいはVCMとCTMとの併用療法は腎機能低下患者における副作用の軽減や抗菌薬移行の不良な部位におけるMRSA感染症の治療法として有用である可能性が示唆された。また, MRSA感染症に対してVCMとMINOの併用は極力避けるべきと考えられた。
  • その11994年度分離グラム陽性球菌について
    木村 美司, 長野 馨, 東山 伊佐夫, 地主 豊, 佐々木 緊, 吉田 勇
    1996 年 44 巻 8 号 p. 595-609
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1992年度に引き続き1994年度に全国16施設において種々の臨床材料から分離された好気性グラム陽性球菌16菌種, 803株について各種抗菌薬31種類を用いて寒天平板希釈法でMICを測定し抗菌力の比較等の検討を行った。Staphylococcus aureusのなかでメチシリン耐性S. aureus (MRSA) の占める割合は50.4%であり, 1992年度の58.1%よりわずかながら減少していた。これらMRSAに対し優れた抗菌力を示したのはvancomycin (VCM), arbekacin (ABK) とsulfamethoxazole-trimethoprim (ST) でMIC90は1.56μg/ml以下であった。Staphylococcus epidermidisに対してはVCM, ABK, minocycline, cephalothinが優れた抗菌力 (MIC90≦1.56μg/ml) を示した。Streptococcus pyogenes, Streptococcus agalactiaeに対してはβ-ラクタム薬等各薬剤とも良好な抗菌力を示した。Streptococcus pnemoniaにおけるペニシリン耐性S. pneumoniae (PRSP) の割合は43.4%であり, 1992年度の37.0%よりわずかながら上昇していた。これらPRSPに対する抗菌力はVCM, imipenem (IPM), meropenem, cefhirome, cefcapeneが優れ, 特にVCM, IPMはMIC90が0.20μg/mlと強かった。Enterococcus faecalisに対してはampicillin, IPM, VCM, STが優れた抗菌力 (MIC90≦3.13μg/ml) を示した。Enterococcus faeciumに対しては各薬剤の抗菌力は弱く, 優れた抗菌力を示したのはVCMでMIC90は0.78μg/mlであった。Enterococcus raffinosusにはVCM, ST, ciprofloxacinが良好な抗菌力を示した。またMRSAや腸球菌属を含め今回薬剤感受性測定を行ったすべてのグラム陽性球菌の中ではVCM高度耐性株 (MIC:≧12.5μg/ml) は認められなかった。
  • その21994年度分離グラム陰性菌について
    長野 馨, 木村 美司, 東山 伊佐夫, 地主 豊, 佐々木 緊, 吉田 勇
    1996 年 44 巻 8 号 p. 610-625
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1992年度に引き続き, 1994年に全国16施設において種々の臨床材料から分離された好気性グラム陰性菌20菌種, 1,128株に対する各種抗菌薬のMICを寒天平板希釈法で測定し, 抗菌力の比較検討を行った。Escherichia coli, Klebsiella属, Proteus属, Morganella morganii, Branhamella catarrhalis, Haemophilus influenzae, Neisseria gonorrhoeaeに対してほとんどのセフェム薬, カルバペネム薬 (CBPs), aztreonam, アミノグリコシド薬 (AGs), ニューキノロン薬 (NQs) は強い抗菌力を有し, MIC90は3.13μg/ml以下であった。しかしProteus属, H. influenzae, N. gonorrhoeaeにはNQsに対する高度耐性株が認められた。H. influenzaeにおいてβ-lactamase産生株が7%認められたが, 1992年度の10%と比べ大きな変化はなかった。Citrobacter属, Enterobacter属に対してcefpirome, CBPs, AGs, NQsの抗菌力が優れていた。Serratia marcescensに対してCBPsとtosufloxacinの抗菌力がMIC90で1.56~3.13μg/mlを示した。Providencia属に対してはNQsの抗菌力は弱くMIC90は100μg/ml以上であった。Pseudomonas aeruginosaに対してはmeropenem (MEPM), amikacinの抗菌力が強くMIC90は12.5μg/mlであり, 次いでimipenem (IPM), ciprofloxacinが25μg/mlであった。抗P. aeruginosa薬11剤すべてに感受性のP. aeruginosa株は32.8%で, 1992年度株の24.3%に比べわずかに増加していた。IPM耐性株は1992年度の8.7%から22.1%へと約2倍強増加しているのに対して, CFS耐性株は60.2%から19.7%に大きく減少していた。Burkholderia cepaciaに対しMIC90が6.25μg/ml以下を示した抗菌薬はceftazidime, MEPM, ceftizoxime, cefcapeneであった。Stenotrophomonas maltophiliaに対してはMINOの抗菌力がもっとも強くMIC90は0.78μg/mlであった。
  • 群馬県病原微生物情報研究会
    大久保 豊司, 角田 光子, 伊豫部 志津子, 古川 廸代, 高橋 綾子, 四方田 幸恵, 小林 功
    1996 年 44 巻 8 号 p. 626-632
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    群馬県主要9病院における1994年度分離病巣由来細菌1, 794株の疫学情報を収集し, 分離菌種および14薬剤の耐性について, 特にメチシリン耐性Staphylococcus aureus (MRSA), ペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae (PRSP) に注目し, 過去5年間と比較した。
    1.各種検査材料から分離された菌株の分離頻度は, S. aureus (22.3%), Pseudomonas aeruginosa (11.8%), コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (CNS: 8.4%), Escherichia coli (6.4%), Haemophilus influenzae (5.4%), Enterococcs faecalis (5.4%) の順であった。昨年比で, 外来のH. influenzaeが3%, 入院のS. aureusが5%増加していたが, その他の菌種の分離頻度については著明な年次変化はみられなかった。
    2.S. aureusについて薬剤耐性菌分離頻度をみると, MRSAはペニシリン系, セフェム系, アミノ配糖体系, マクロライド系, テトラサイクリン系, 新キノロン系薬等に75%以上が多剤耐性を示し, メチシリン感受性S. aureus (MSSA) ではペニシリン系薬に対し耐性を示すものが多いが, その他の抗生物質では耐性菌の分離頻度は15%以下と少ない。ポリペプチド系のvancomycin (VCM) 耐性菌は認められなかった。
    3.1つの診療科においてMRSAの多い (10株以上) 施設は, ベッド数の多い施設の内科に集中していた。
    4.S. pneumoniaeの感受性分布はcefaclor (CCL) が6.25μg/mlを境に明らかな2峰性の分布を示すのに対し, benzylpenicillin (PCG), ampicillin (ABPC), piperacillin (PIPC) では感受性と耐性の境は不明確であった。CCLのMICが12.5μg/ml以上の株をPRSPとした場合, 他のβ-lactam剤に対しては, 一濃度ディスク法の阻止円直径がPCG:<30mm, ABPC:<32mm, PIPC:<29mmでは明らかなPRSPと判定できた。
  • 吉野 啓, 河合 佳江, 藤原 隆明
    1996 年 44 巻 8 号 p. 633-635
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい注射用カルバペネム系抗生物質, BO-2727の眼科領域における体内動態試験として本剤のヒト涙液移行について検討した。健常成人志願者9名に本剤500mgを30分で点滴静注し, 10時間後まで経時的に血液, 涙液を採取し, 血漿中濃度および涙液中濃度を測定した。涙液中のBO-2727濃度は投与終了時の30分でピーク値2.70μg/mlであり, その時点の血漿中濃度27.9μg/mlに対する移行率 (涙血比) は9.7%であった。また, 本剤投与により1例に軽度の静脈炎と考えられる随伴症状が出現した。
  • 真崎 宏則, 吉嶺 裕之, 出川 聡, 赤堀 英明, 池田 秀樹, 坂本 翔, 出口 和幸, 貝田 繁雄, 松本 慶蔵, 力富 直人, 田尾 ...
    1996 年 44 巻 8 号 p. 636-640
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    当院内科老人病棟においてMRSAが各種感染症の起炎菌として増加したため, 1991年10月より気道, 褥瘡および環境に重点を置いた本格的院内感染防止対策を開始し現在も継続している。対策の継続により菌血症および院内肺炎が明らかに減少しているが, 老人病棟におけるMRSA保菌 (定着) 者の院内発生は依然として月に数名みられ, 上記以外でMRSAが定着しやすい部位を明らかにする必要性を感じた。今回対策継続中の1994年4月から1995年10月までに原則として化学療法を行っていない時期に鼻腔, 咽頭培養に加えて, 非保菌者群の皮膚細菌叢を頭髪部, 右前腕部, 右厳径部の3か所について同一日, 同一時間帯に調査した。MRSAはMRSA非保菌者群において1回も検出されなかった (0/102回: 0%)。今回の検討から化学療法が行われていない老人病棟入院MRSA非保菌者群患者の皮廟を介したMRSAの院内汚染, 院内伝播の可能性はかなり低いものと推察された。
  • 宇野 勝次, 八木 元広, 鈴木 康稔, 関根 理
    1996 年 44 巻 8 号 p. 641-648
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    薬剤過敏症疑診患者に対して白血球遊走阻止試験 (LMIT) により起因薬剤の検出同定を行い, 加齢と薬剤アレルギーについて検討した。薬剤過敏症疑診患者210例におけるLMITは, 陽性160例, 陰性50例で, 76.2%の陽性率を示した。LMIT陰性150例を再検討した結果, 偽薬剤アレルギー患者を20例認めた。すなわち, 真の薬剤アレルギー疑診患者は190例で, LMITの実質的陽性率は82.4%となった。LMITの年齢別陽性率は, 10歳未満 (100%) と60代 (97.1%) でピークを示す二峰性を示した。この様相は, 1, 143例の患者の血中リンパ球数と相関性を示した。五MIT陽性患者 (アレルギー患者) の年齢別頻度は, 50代が16.9%, 60代が20.6%, 70代が21.9%と高年齢者に高かった。この傾向は, 10, 571例の投薬患者数と高い相関性を示した。LMIT陽性患者の各アレルギー症状の頻度は, 皮疹が68.8%, 肝障害が28.1%, 発熱が11.9%, 血液障害が5.0%, 消化器症状が2.5%で, 個々のアレルギー症状の年齢別頻度は, アレルギー全体の頻度とほぼ一致した。LMIT陽性薬剤 (アレルギ一起因薬剤) 208剤の薬効別頻度は, 抗生物質製剤が41.3%, 中枢神経用薬が31.7%, 循環器官用薬が13.9%で, この3薬剤群で全体の85%以上を占めた。この3薬剤群の年齢別頻度では, 抗生物質製剤や中枢神経用薬は加齢による変化は認められなかったが, 循環器官用薬は65歳以上の老年者に高い頻度を示した。この傾向は, 7, 642例の投薬患者の循環器官用薬の使用頻度に類似した。LMIT陽性の薬疹患者80例の年齢別潜伏期間は, 20歳未満が5.67日, 20~39歳が9.13日, 40~64歳が9.42日, 65歳以上が15.03日で, 老年者が有意に長い期間を示した。したがって, 高齢者の薬剤アレルギーは, 発現頻度が高く, 起因薬剤に循環器官用薬の頻度が高く, 潜伏期間が長い特徴を有すると思われる。この原因は, 高齢者の服薬頻度, 服用薬剤の種類, ならびにリンパ球の活性に起因すると考えられる。
  • 経口投与単独群対単回点滴静注後経口投与群との比較
    松島 敏春, 山口 惠三, 菅野 治重, 柴 孝也, 那須 勝, 河野 茂, 山田 穂積, 斎藤 厚
    1996 年 44 巻 8 号 p. 649-658
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    主に外来治療可能な軽症から中等症の肺炎, 慢性気管支炎の急性増悪を含む気管支炎, 慢性呼吸器疾患の二次感染を対象に無作為割付けでcefotiam (CTM) 1g単回点滴静注し以後cefotiam-hexetil (CTM-HE) 600mg/日 (分3) を5~7日間経口投与 (A群) とCTM-HE600mg/日 (分3) を5~7日間経口投与 (B群) の2群間において臨床効果を比較検討した。臨床効果判定は判定不能例2例 (各群1例) を除くA群29例, B群35例, 計64例で行い, 以下の成績を得た。
    1) 臨床効果は, A群とB群それぞれ著効率は24.1%(7/29), 2.9%(1/35), 有効率は62.1%(18/29), 62.9%(22/35), 著効と有効を合わせた有効率はそれぞれ86.2%, 65.7%であり, A群で有意に優れていた (p<0.01)。
    2) 自他覚症状の改善は両群間に有意差は認められなかったが, A群で治療早期に改善される傾向があった。
    3) 細菌学的効果は, 細菌の消失率はA群88.2%(15/17), B群69.2%(9/13) であったが, 両群間に有意差は認められなかった。
    4) 両群とも副作用 (臨床症状, 臨床検査値の異常変動等) は全例において認められなかった。
    以上の結果, 初診時にCTM点滴静注の単回投与を行い. その後CTM-HEの経口投与を実施することは, 臨床上有用な治療方法で外来治療に応用できる方法と考えられた。
  • 抜歯後の感染予防の検討
    大塚 芳基, 美田 佳壽彦, 吉川 朋宏, 千田 由紀子, 古土井 春吾, 藍 恵子, 吉岡 歩, 桑本 聖子, 山崎 隆廣, 麻柄 真也, ...
    1996 年 44 巻 8 号 p. 659-663
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    オフロキサシン (OFLX) の抜歯後の予防投与における有用性を検討するため抜歯創貯留液中の濃度を測定した。抜歯予定患者53例 (59検体) にOFLX 100mg (2例200mg) をあらかじめ術前に服用し, 抜歯直後に抜歯創貯留液を8mm thickのpaper discに直接採取し, bioassay法によりOFLX濃度を測定した。抜歯創貯留液中濃度は薬剤投与後30分~8時間でND~15.55μg/mlに分布していた。また, 121分~210分でStreptococcus sp.に対するMIC50を上回るものは85.7%, MIC90を上回るものは50.0%であった。以上より抜歯後の感染予防としてOFLXを投与する場合, 2~3.5時間前に投与する必要があると考えられた。
  • 尿路感染症における抗菌薬のブレイクポイント (案)
    1996 年 44 巻 8 号 p. 664-679
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
  • 抗菌薬の臨床評価に関する一般指針 (案)
    1996 年 44 巻 8 号 p. 680-706
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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