薬剤過敏症疑診患者に対して白血球遊走阻止試験 (LMIT) により起因薬剤の検出同定を行い, 加齢と薬剤アレルギーについて検討した。薬剤過敏症疑診患者210例におけるLMITは, 陽性160例, 陰性50例で, 76.2%の陽性率を示した。LMIT陰性150例を再検討した結果, 偽薬剤アレルギー患者を20例認めた。すなわち, 真の薬剤アレルギー疑診患者は190例で, LMITの実質的陽性率は82.4%となった。LMITの年齢別陽性率は, 10歳未満 (100%) と60代 (97.1%) でピークを示す二峰性を示した。この様相は, 1, 143例の患者の血中リンパ球数と相関性を示した。五MIT陽性患者 (アレルギー患者) の年齢別頻度は, 50代が16.9%, 60代が20.6%, 70代が21.9%と高年齢者に高かった。この傾向は, 10, 571例の投薬患者数と高い相関性を示した。LMIT陽性患者の各アレルギー症状の頻度は, 皮疹が68.8%, 肝障害が28.1%, 発熱が11.9%, 血液障害が5.0%, 消化器症状が2.5%で, 個々のアレルギー症状の年齢別頻度は, アレルギー全体の頻度とほぼ一致した。LMIT陽性薬剤 (アレルギ一起因薬剤) 208剤の薬効別頻度は, 抗生物質製剤が41.3%, 中枢神経用薬が31.7%, 循環器官用薬が13.9%で, この3薬剤群で全体の85%以上を占めた。この3薬剤群の年齢別頻度では, 抗生物質製剤や中枢神経用薬は加齢による変化は認められなかったが, 循環器官用薬は65歳以上の老年者に高い頻度を示した。この傾向は, 7, 642例の投薬患者の循環器官用薬の使用頻度に類似した。LMIT陽性の薬疹患者80例の年齢別潜伏期間は, 20歳未満が5.67日, 20~39歳が9.13日, 40~64歳が9.42日, 65歳以上が15.03日で, 老年者が有意に長い期間を示した。したがって, 高齢者の薬剤アレルギーは, 発現頻度が高く, 起因薬剤に循環器官用薬の頻度が高く, 潜伏期間が長い特徴を有すると思われる。この原因は, 高齢者の服薬頻度, 服用薬剤の種類, ならびにリンパ球の活性に起因すると考えられる。
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