動脈の機能的ならびに器質的状態を推定するために, 頸動脈波と指尖脈波, 橈骨動脈波, 上腕動脈波, 趾尖脈波, 足背動脈波および, 膝窩動脈波を同時記録し, 脈波伝達速度 (以下PWVと略す) を算出し, 臨床的有用性について検討した. 対象は, 正常者群35例, 高血圧者群19例, 陳旧性心筋硬塞者群9例, 脳卒中者群7例であり, noninvasive plethysmographic technique (Pulsorette S2200) を使用して, 頸動脈波と脈波を記録した部位との2点間の距離, および, 両脈波の立ち上がり時間差からPWVを算出して, 次の結果を得た.
正常者群において, PWVは加齢と共に増加した. また, PWVの加齢との相関は, A. carotis~A. poplitea 間において最も密接であり, 末梢にいくほどくずれる傾向を示した. 高血圧者群では, 正常者群に比しPWVは増加しており, また, 両群におけるPWVの差は, A. carotis~A. poplitea 間で最も大きく, 末梢にいくほど減少するようであった. この高血圧者群におけるPWVの増加は, 末梢血管抵抗増大, すなわち, 血管の硬化あるいは, 攣縮を反映しているものと思われた. 陳旧性心筋硬塞者群および, 脳卒中者群では, 正常者群との間に明らかなPWVの差は認められなかった.
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