目的:特定高齢者の特徴である移動能力低下は血清ビタミンDや腎機能が関連していると報告されている.運動教室に参加後の体力改善に,ビタミンD濃度,ビタミンD補充,腎機能がどのように影響しているか検討し,介護予防の資料とすることを目的とした.
方法:2006年6月から2009年12月までの介護予防運動教室に3カ月間参加した茨城県Y町とS市(いずれも北緯36度)に在住の65歳以上の特定高齢者177名(平均年齢76.4±5.5歳)を対象とした縦断研究である.質問紙による面接調査,血液検査(血清intact parathyroid hormone(iPTH),25-hydroxyvitamin D
3(25(OH)D),1,25-dihydroxyvitamin D
3(1,25(OH)
2D),クレアチニン,カルシウムなど)を実施した.推算糸球体濾過量(eGFR(m
l /min/1.73 m
2))は新推算式から算出した.アルファカルシドール1 μg/日を3カ月間希望者に投与し,80%以上服用者をVD群とした.体力測定項目は移動能力,バランス能力,筋力である.
結果:開始時のeGFR<60 m
l /minは約24.3%,86.4%が25(OH)D<75 nmol/Lであった.Functional Reach変化にVD服用有無・eGFR,Timed Up & Go変化にpre-eGFR・pre-25(OH)D 45 nmol/L以上・未満,タンデムバランス変化にpre-25(OH)D 50 nmol/L以上・未満,ステップテスト・5回椅子立ち上り変化にpre-25(OH)D 67.5 nmol/L以上・未満,タンデム歩行変化にpost-1,25(OH)
2D 44 pg/m
l が関連していた.
結論:特定高齢者が,自立した生活を継続するためにも腎機能を管理し,体力レベルに応じた25(OH)D濃度を適正に維持し,可能であれば67.5 nmol/L以上維持することが介護予防に重要である事が示唆された.
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