目的: 近年, 糖尿病性早期腎症の診断法として尿中アルブミン濃度の測定が広く用いられている. 今回, 筆者らは, 老年者糖尿病患者における微量アルブミン尿の臨床的意義を検討するために, 糖尿病患者を老年者群および若壮年者群に分け, 両群における臨床背景と微量アルブミン尿の頻度について比較検討した. 対象と方法: 対象は, 現在, 当院糖尿病外来にて加療中のインスリン非依存型糖尿病患者167例で, 65歳以上の老年者群81例 (平均年齢: 72±5歳, 男/女: 31/50) と, 65歳未満の若壮年者群86例 (平均年齢56±8歳, 男/女: 49/37) に分けた. 両群において, 肥満度, 空腹時血糖値, HbA
1C濃度, 血漿脂質濃度, 血中C-ペプチド濃度, 高血圧の頻度, 腎症の指標としての尿中アルブミン濃度およびその他の血管合併症の頻度を求めた. 結果: 老年者群は, 若壮年者群と比べて, 推定罹病期間 (10±7 vs 9±7年), Body Mass Index (24.3±4.1 vs 23.9±3.5kg/m
2), 空腹時血糖値 (142±38 vs 144±40mg/dl), HbA
1C濃度 (7.4±1.6 vs 7.8±1.6%), 血漿コレステロール濃度 (203±34 vs 212±46mg/d
l), 血漿中性脂肪濃度 (117±57 vs 121±67mg/d
l) には有意差を認めなかったが, 微量アルブミン尿 (尿中アルブミン濃度30以上300mg/g・Cr未満) を有する頻度が有意に高く (43.2 vs 20.0%, χ
2=10.39, p<0.01), 大血管障害 (脳血管障害, 虚血性心疾患, 閉塞性動脈硬化症), 高血圧の頻度も有意に高かった (29.6 vs 10.5%, χ
2=9.66, p<0.01, 42.0 vs 24.4%, χ
2=5.82, p<0.05). 考察: 老年者糖尿病患者の微量アルブミン尿の出現には, 糖尿病性腎症による変化に加え, 加齢や高血圧の影響が考えられた. 老年者糖尿病患者における微量アルブミン尿, 大血管障害, 高血圧は, 糖尿病および加齢に伴う血管壁の代謝異常という共通の基盤を有し, 互いに緊密な関係をもって進展していることが示唆された.
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