入院時高血圧 (収縮期160mmHg, 拡張期105mmHg以上) を呈した60歳以上の高齢者23人を対象として, 入院後の自然の血圧の推移を観察したところ, 入院2週目には過半数の13人で正常血圧域に降圧しており (NBP群), 残りの10人では尚高血圧状態であった (HBP群). それぞれの対象者につき身体的特徴, 合併症の評価, 血液生化学的検査, 内分泌学的検査を行ない両者の間の病態比較を試みた.
年齢はHBP群が低かった (p<0.05) が, 肥満度, 全身状態には差を認めなかった. 合併症については, 糖尿病, 脳血管障害の既往, 眼底病変を有する率はHBP群に高率であったが, ECG上ST-T波の変化や脚ブロックを有する率や心肥大については両群間に差はなかった. 血清電解質, 脂質, 腎機能についても両群間に全く差は認められなかった. 内分泌学的には血漿レニン活性, 血清プロラクチン濃度がHBP群でやや高値であり, 血漿アルドステロン濃度は有意 (p<0.05) に高値であった. 尿中カテコラミン値には両群間で明らかな差は認められなかった.
以上から, HBP群ではNBP群に比べややレニン-アンジオテンシン系が亢進している事が示唆され, 合併症 (脳血管, 眼底病変) の保有率が高い事が認められたが, 入院時の血圧や他の多くの諸検査上両群間に明らかな差は認められなかった. この両群は病態や対処上異なる点が少なくないと考えられるが, 現在血圧の推移観察以外の手段をもってこの両者を鑑別する事は困難であると考えられた.
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